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DONOVAN ドノヴァン
"Sunshine Superman" 1966 英国フォーク・ロックを語るには欠かせないドノヴァン。有名すぎるお方ゆえ別格扱いとして初っ端に登場です。 よく英国の吟遊詩人とか英国のディランとか云われますが、本来はあまりにも英国すぎてなおかつ独特の魅力を持った、他に例えようがないアーティストです。 スコットランドはグラスゴー生まれである彼のスタイルはフォークギター一本での弾き語りというイメージでしたが、フラワー・ムーヴメントの時代を背景にした本作あたりではインド楽器のシタールなどを使い東洋の文化、思想に対する関心も強く見られます。本作ではその東洋を感じながらもヨーロッパや英国の古い文化、伝統("Season of The Witch"、"Guinevere"というアーサー王関連の作品)に基づいたメルヘン的な伝承曲なども題材としています。一方ではあのママス&パパスのキャス・エリオットをモデルとした"The Fat Angel"など、米国志向も垣間見れるようです。彼の静かなエネルギーが満喫できるまさに名作。
RALPH McTELL ラルフ・マクテル
"Not Till Tomorrow" 1972 英国のストリート・フォーキーの大御所。ラルフ・マクテルは奥の深い大変味のあるシンガー・ソングライターであり、あの"Streets of London"の作者。フェアポート・ファミリーとして今も現役で精力的な活動をしています。 本作はプロデューサーにトニー・ヴィスコンティ、そして当時は彼の奥方であったメアリー・ヴィスコンティ(メアリー・ホプキン)がバッキング・ヴォーカル、またペンタングルのダニー・トンプソンも参加しており彼のアコースティック・ギターをバックに素朴で優しい歌声が心を和ませてくれます。それ以前の作品に比べアレンジ面では彼のギターを中心にボーカルで聴かせるスタイルがより一層浮き彫りにされています。 LPでは米国への憧憬がほのかに感じられるA面、そしていかにも英国的で湿っぽいB面そんな構成になっていて、シンプルな作風ながら彼の音楽性に余裕がにじみ出た一枚で名作。
![]() MARY HOPKIN メアリー・ホプキン "Earth Song/Ocean Song" 1971 P・マッカートニーのバックアップでヒットした"Those Were The Days / 悲しき天使"。ウェールズ出身でフォークを歌って絶賛されていた彼女でしたが、本格的なデビュー後も彼女が表現したかった音楽というのは素朴なフォーク・ミュージックだったようです。 本作はプロデュースにT・ヴィスコンティを迎え、ラルフ・マクテルやダニー・トンプソン、そしてD・カズンズらのサポートでシンプルで温もりのあるアルバムに仕上がりました。ラルフ・マクテルの"Streets of London"、"Siver Birch And Weeping Willow"そしてキャット・スティーブンスの"The Wind"(オーケストレーションが素晴らしい!)など選曲も粒ぞろいで、後に夫となるT・ヴィスコンティがコーラスやリコーダーで出演し彼ならではの音作りが楽しめます。それにしても彼女の伸び伸びとした歌声を聴いているだけで癒されます。本作発表後、メアリーとトニーは結婚します。 ![]() AL STEWART アル・スチュワート"Modern Times" 1975 スコットランド出身のアル・スチュワートは60年代後期にアルバムデビューし、素朴な中にもキラリと光る才能を徐々に発揮しつつ「オレンジ」において広く認められるようになりました。その後は「過去、現在、未来」、"Modern Times "、"Year of The cat"と、英国の憂いを持った素朴なフォーク路線を少しづつイメージチェンジしながら、最終的にはアメリカのトップチャートにも顔を出すまでになったわけです。 本作"Modern Times"は米国市場をほのかに意識しながらも英国出身アーティストの誇りを忘れない、彼の自信が感じ取れる名盤であり次作の"Year of The Cat"が世界的にブレイクした背景には本作の存在が重要であるような気がします。プロデュースはあのアラン・パーソンズ。そしてギターにティム・レンウィック・・・これもまたポイントのひとつ。彼の持ち味が充分に活かされたしっとりとした味わいの英国フォークロックの傑作。
![]() CAT STEVENS キャット・スティーヴンス"Teaser And The Firecat" 1971 "Moon Shadow"、"Morning Has Broken"そして"Peace Train"のヒット曲を含む彼の代表作です。デビュー時はポップスターとして売り出されたのですが、嫌気がさしたのか彼本来の姿であるSSWとして新たに出直したようです。 シンプルで純粋なフォーク路線をベースに、その後はポップな音作りの方向にどんどん進化しアルバム「異邦人」ではカリプソやレゲエの要素なども取り入れてリズムを重視するようになりました。また宗教色も強かった彼は後にイスラム教徒に改宗したりしてますます孤高の存在となってしまったのですが、素直にこの時代の彼の音楽に触れてみればメロディラインもしっかりとした、ポップな曲が勢揃いで受け入れやすいです。 本作ではやはりリック・ウェイクマンの美しいピアノをバックに歌う"Morning Has Broken /雨に濡れた朝"は出色の出来です。全ての曲において彼の瑞々しい感性が充分に溢れ出ている素晴らしいアルバムだと思います。 ![]() RAB NOAKES ラブ・ノークス"Do You See The Lights?" 1970 スコットランド出身のSSWラブ・ノークスが70年に発表したデビューアルバム。今回(08年)待望の彼自身のレーベルであるネオンから初のCD化となったのですが、何故かオリジナルと違うジャケットであることそして初CD化におけるいきさつについて不明なのがなんとも残念です。 全編いかにも英国人SSWらしい彼のギターを中心にした弾き語りで、ダブルベースやパーカッション、キーボードそしてオーボエなどが寄り添うシンプルなフォークです。心に響くフォーク・バラードも、そして時には人懐こいアップテンポの曲も、メランコリックな彼の歌声によくマッチし素晴らしい作品に仕上がっています。しかしながら本作発表当時は売上的には失敗したとのこと。特に際立った特徴もなく、何か目新しいことをやっているわけでもなく、しかしそれでいながら心に強く訴えかけ魅了してしまうラブ・ノークスというSSWに改めて再評価を期待したいです。
![]() JOHN AND BEVERLEY MARTYNジョン・アンド・ビヴァリー・マーティン "Stormbringer!" 1970 ベテランSSWジョン・マーティンとロンドンでフォーク歌手として活躍していたビヴァリー・カトナーが結婚後デュオとして発表した最初の作品。グラスゴーのフォーククラブからロンドンに進出したジョンはアル・スチュアートやニック・ドレイクらとの親交も深め、夫妻で渡米してからはウッド・ストック関連のミュージシャン、ボブ・ディランやザ・バンドのメンバーそしてジミ・ヘンドリクスなどとも交流があったようです。これらのミュージシャンたちからの多大な影響を受けて本作はジョー・ボイドのプロデュースによって完成しました。 よく練られたメロディラインに、力強く響くマーティン・ギター特有のひんやりとしたコードストロークと共に、あまり特徴はないが味のあるジョンの歌声に比べビヴァリーの暖かくしっとりとした歌声がほどよくブレンドされバランスがいいです。米国録音ながらも湿り気も感じ取れる英国風味いっぱいの好盤。 ![]() FAIRPORT CONVENTION フェアポート・コンヴェンション"Liege & Lief" 1969 さて、そろそろこのあたりからめくるめく英国トラッドロックの森であります。 本作"Liege & Lief"は初期の傑作といわれるもので、前の"Unhalfbricking"あたりからじわじわとトラッドの占める部分が広がり、彼らの描くエレクトリック・トラッドの分野が確立されたアルバムとも言えます。 さて、アルバムの内容についてですが、全ての曲に彼らの意気込みと緊張感が浸っており、名盤と言われる所以はこんなところにあるのではないでしょうか。特に有名なトラッド曲"Matty Groves"や"Tam Lin"での凄まじい迫力と完成度、"Farwell,Farwell"でのサンディの可憐な歌声に聴き惚れてしまいます。 サウンド面では、その豊かで独特な音色を存分に発揮したR.トンプソンのギター、新加入のデイヴ・マタックスのドラミング、D.スワブリックのバイオリンが絶妙に絡みあって、サンディ在籍時代の最高峰と云われる作品でしょう。
![]() SANDY DENNY サンディ・デニー"Sandy" 1972 フォークシーンで歌い始めフェアポート・コンベンションの2代目女性ヴォーカリストであったサンディ・デニー。リージ&リーフ後はアシュレイ・ハッチングスと共にバンドを脱退しフォザリンゲイを結成、ソロとして活動したり再びフェアポートに再加入したり。バックグラウンドがどうであれその優しくぬくもりのある声の中に威厳さえも感じ取れる彼女は英国の宝と云えるでしょう。最終的にはトラッドやフォークのジャンルに囚われずにより幅広い音楽をめざし続けたわけですが、突然舞い込んだ悲報。それは1978年の4月21日のこと、友人宅にて階段から転落しそのまま息をひきとってしまったのです。大変ショックでその晩は追悼の意味を込め何度も何度も"Solo"を聴いたのを覚えています。 そういう想いも含めて、聴けば聴くほど感傷的になってしまうのは僕だけではないと思います。 若くして亡くなってしまったサンディ・デニーという女性ボーカリストについては別ページにおいても解説しています。ジャケットをクリック! ![]() RICHARD THOMPSON リチャード・トンプソン"Starring As Henry The Human Fly!" 1972 フェアポート・コンヴェンションを脱退後発表したR・トンプソンのソロデビュー作。全曲彼のオリジナルですが、メロディーラインや アレンジにおいては、それらが既存のトラッド曲であるかと思ってしまうほど深い味わいがあります。彼は作曲能力に長けていた分だけ、ただ単に伝承曲をアレンジすることに留まらず、オリジナル曲重視で活動。本作に収録された曲はどれもが秀作です。 サポートにはアシュレイ・ハッチングス、ジョン・カークパトリック(accordian)、バリー・ドランスフィールド、(結婚前の)リンダ・ピータースそしてサンディ・デニーという、フェアポート一派とトラッド愛好家(笑)の豪華メンバーで、まだまだこの時期はどちらかというとフォーク寄りの音です。 線が太くて重いけれどもきらびやかな音色が特徴のR・トンプソンのギターが聴こえると、そこはもう彼の作る独自の音楽世界。ハエ男のジャケットは気にせずに(笑)まったりと堪能したい傑作。
![]() RICHARD & LINDA THOMPSON リチャード&リンダ・トンプソン"I Want To See The Bright Light Tonight" 1974 フェアポートの一ギタリストに留まらなかったリチャード・トンプソンと奥方のリンダの力量がいかんなく発揮された代表作。 本作ではリンダがリード・ヴォーカルをとる曲がほとんどなのですが、その特徴のあるトーンは曲によってバリエーション豊かに変化して楽しませてくれます。特に「Withered And Died」ではサンディ・デニーを彷彿とさせ、情感豊かにしかしながらちょっぴりクールに歌い上げます。 このアルバムでは、ダルシマーやクルムホルンといったいわゆる古楽器もさりげなく採り入れ、アコーディオンやバンジョーの音色に加えて切れ味抜群のリチャードのE・ギターが絶妙に絡み合い、独特の雰囲気を感じ取ることができます。英国の伝統の中に独自の音楽性を盛り込む、まさに彼の描いていた世界が見えてくるアルバムではないでしょうか。アルバム最後を飾る"The Great Valerio"は秀逸です。 ![]() IAN MATHEWS イアン・マシューズ"If You Saw Throu' My Eyes" 1971 フェアポートのオリジナルメンバーのひとりで、英国フォーク・ロック界における重要人物。美声で美少年のイアン・マシューズは、バンドの音楽性についてアシュレイ・ハッチングス主導による英国民謡の電気トラッド化計画が進むにつれて居心地の悪さを覚えてフェアポートを脱退。 マシューズ・サザン・コンフォートを経て、またも独立しその第一作目として発表したのが本作です。 彼の作風には英国人サイドからの米国のカントリーやフォークミュージックに対する想いが確かに存在しますが、やっぱり英国人独特の陰影というか風味は隠し切れません。ワタシはどちらかといえば英国風味いっぱいの作風が好みなのですが、彼に関して云えばそういう範疇で語るのではなくひとりのフォークロック系ミュージシャンとして考えれば、楽曲も心に響くし歌声もきれいなハイトーンがすばらしく、大変満足の出来るアルバムであると素直に思います。
![]() ANDY ROBERTS アンディ・ロバーツ"Home Grown" 1970 イアン・マシューズつながり。レアな犬ジャケで(05年にオリジナル仕様にて紙ジャケでCD化されました)アンディ・ロバーツの登場。さすがにふたりはプレインソングという同じバンドで活動していたくらいですから一曲目の"Home Grown"などはマシューズの作風に似ていないとも云えないです。声質はマシューズよりも玄人好みで渋いかな。(どうしてもふたりを比較してしまいますけど) 本作では彼なりのトラッド曲も3曲含まれますが圧倒的にギターが上手い。これはバックに回ってサポートすることが多かった彼の強みなのでしょう。次作のコンセプトアルバム"Nina and The Dream Tree"も素晴らしいが、 このデビューアルバムにおいては素直に自分の表現したいものを打ち出したようなところが好感の持てるところです。トラッド曲における彼なりのアレンジもまた格別。 ![]() PLAINSONG プレインソング"In Search Of Ameria Earhart" 1972 イアン・マシューズとアンディ・ロバーツが中心となり、デイブ・リチャーズ、ボブ・ロンガを加えた4人組みバンドであるプレインソング名義の一枚。本作は大西洋単独横断を成功させた最初の女性、アメリア・エアハートについてのコンセプト・アルバムとなっています。 プロデュースはセプテンバー・プロダクションのサンディ・ロバートン。そして、サポートにはデイヴ・マタックス、ティム・ドナルドそしてマーティン・ジェンキンス(ダンドゥ・シャフト)らの強者が揃いました。 マシューズの甘いヴォーカルもさることながら、後々までの相棒であるアンディ・ロバーツの作風と歌唱にもまた格別の味わいがあってポイントが高いです。 マーティン・ジェンキンスの奏でるフィドルが冴える"Raider"はまさに典型的なトラッド・ロックで 米国指向のサウンドの中にもやっぱりそこかしこに英国人の素性が滲み出てくるようです。非常に丁寧に作り上げられた、完成度の高いフォーク・ロックの名盤として語られる一枚。
![]() SOUTHERN COMFORT サザン・コンフォート"Same" 1972 こちらもイアン・マシューズつながり。マシューズ・サザン・コンフォートとしてスタートしたバンドでしたが、目指す方向が違ったのか張本人のマシューズが脱退してしまい、取り残されたメンバーたちが発表した起死回生の一枚で2作目(計3枚を発表し解散)。 本作はアメリカ西海岸を意識しすぎたマシューズの音作りとは違い、スライドギターをフィーチャーしたカントリーロックであるのになぜか英国臭プンプンの彫りの深い陰影が見え隠れします。"Moganbo / Devil's Canyon"などはまさに英国人の感性でしか作りえない音が展開されます。しぶいオーケストレーションもまさに英国のくすんだ情景を表現しています。さりげなく淡々と曲は進行していきますが、聴いた後はほんわかムードで満足感いっぱい。素敵なティーカップにミルクティーがこれまた英国風。そんな気品溢れるジャケットとあわせて期待に充分に答えてくれる傑作です。 ![]() MARC ELLINGTON マーク・エリントン"Rains / Reins of Changes" 1971 アメリカ人のマーク・エリントンは英国トラッド・フォークに魅せられ渡英。フェアポート・コンヴェンションが発表した「Unhalfbricking」の"Million Dollar Bash"にゲスト・ヴォーカルとして参加。R・トンプソン、サンディ・デニー、イアン・マシューズらとの交流の末、一枚の傑作を作り上げます。本作は彼の2作目ですが、フェアポート勢はもちろん米国バンドのフライング・ブリトー・ブラザーズのクリス・ヒルマンやスニーキー・ピート、そしてサザン・コンフォートのペダルスチール奏者のゴードン・ハントレーも参加しての録音です。 顔に似合わない優しく穏やかなマークの歌声に英米混成のしたたかなバックミュージシャン。特に特徴的なR・トンプソンのギターの音色やサンディ・デニー、イアン・マシューズのバックコーラスが聴こえて来るだけでもうれしいですね。(米国人的解釈の)トラッド曲も交えた典型的ともいえる清々しいフォーク・ロックの傑作。
![]() MR.FOX ミスター・フォックス"The Gipsy" 1971 ボブ・ペグとキャロル・ペグ夫妻を中心としたアンダーグラウンド系フォークロックバンド。そのジャケットワークも秀逸で話題に上りますが音的な印象はこのジャケットのイメージとは違い、意外と土臭いサウンド。 彼らはアシュレイ・ハッチングス関連で交流があり、デビュー作においてはトラッド風味に重点を置いた作風でしたが本作においてはトラッドを基盤にしながらもよりプログレッシブでドラマティックな構成を前面に押し出した作風になっています。不思議な魅力を持ったキャロルのボーカルとともにサイケデリックなサウンドとトラッド風味の融合ともいうべき独特の音楽世界が展開されています。重苦しい湿った英国プログレ風の"Mendle"、オルガンの持続音やヴァイオリンのドローン音が効果的に使用されている代表作"The Gipsy"、フォークのサウンドに乗せたラップ(?)のような"Aunt Lucy Broadwood"などが魅力。どことなく下記のTREESにも共通したような雰囲気があります。 ![]() TREES トゥリーズ"On The Shore" 1970 サンディ・ロバートン主宰のセプテンバー・プロダクションからデビューした、 プログレッシヴ・エレクトリック・トラッドが聴き処のバンド。 2ndアルバムである本作はあのヒプノシスによるミルクばらまき少女ジャケでかなり有名なのですが、内容においても聴き応えは充分です。どこかフェアポート・コンヴェンションにも通じるところがあるけれど、単にトラッドロックという範疇に収まらない一歩進んだ解釈というのが持ち味のようです。どちらかというとフェアポートよりもヘヴィなトラッド・ロックのサウンド構成の中にあって、 曲によって表情が変化するセリア・ハンフリスの若々しく清々しい歌声、R・トンプソンをイメージさせる確かなテクニックを持ったバリー・クラークのE・ギターなどが中心となり、その緻密なアレンジで出来上がった作品たちはたいへん魅力的であります。 彼らのデビュー作"The Garden Of Jane Delawney"も一聴の価値があり。
![]() SHIRLEY COLLINS & DAVY GRAHAMシャーリー・コリンズ&デイヴィー・グレアム "Folk Roots,New Routes" 1964 * 英国トラッドの第一人者であるシャーリー・コリンズとブルースやジャズのフィーリングをその奏法にとりいれたことで有名な革新的ギタリストであるデイヴィー・グレアムとの歴史的共演アルバム。 ジプシー音楽やインド音楽も視野に入れた幅の広い音楽性を持つグレアムのギターをバックに、シャーリーは素朴で儚い歌声を情感たっぷりに披露してくれます。ボブ・ディラン、ドク・ワトソンらの米国ミュジシャンやペンタングル、スティーライ・スパン、フェアポート・コンヴェンション等の多くの英国トラッド関連のアーティストの取り上げた曲がほとんどで、民謡というものをグローバルに捉えているのが特徴です。 とにかくじっくりと本作を聴くことによって英国フォークの源流とでもいいましょうか、まさにタイトル通りそのルーツを探ることができる英国フォーク&トラッド史上重要な一枚であり名盤です。 ![]() SHIRLEY COLLINS AND THE ALBION COUNTRY BANDシャーリー・コリンズ&アルビオン・カントリー・バンド "No Roses" 1971 アシュレー・ハッチングスがシャーリー・コリンズをメインにトラッド関連のミュージシャンを引き連れて発表した歴史的名盤。 メンバーは、ウォーターソン・ファミリー、R・トンプソン、マディ・プライア、サイモン・ニコル、B・ドランスフィールド、J・カークパトリック、そして実姉のドリー・コリンズ・・・。この豪華メンバーを見ただけでもいかに凄いアルバムなのか想像がつきますね。 実際、彼女の素朴な歌声とバンドの呼吸がぴったりとマッチし、いわゆるトラッド・ロックのサウンドが完璧に形成されています。特に"Murder Of Maria Marten""Poor Murdered Woman"などは彼女の魅力が充分に発揮されています。 それほど表現力に富んだシンガーというわけではない彼女。しかし、この世界に足を踏み入れてしまったら抜け出せない理由のひとつには、その素朴な歌声そのものが大きく関与しているに違いないと考えます。
![]() SHIRLEY & DOLLY COLLINS シャーリー&ドリー・コリンズ"For As Many As Well" 1978 ** シャーリーとドリー・コリンズ姉妹が78年に発表し、シャーリーにとっては最後の録音となってしまった傑作。 ドリー・コリンズはシャーリーの実姉ですが、主にキーボード奏者として英国トラッド、古楽シーンに欠かせないアーティストです。本作ではフルート・オルガンをメインにピアノ、シンセサイザーを駆使しシャーリーの歌声をフォローします。また、古楽家のフィル・ピケット、そしてフィドラーでボーカルも味わい深いバリー・ドランスフィールドら素晴らしいメンバーで盛りたてます。"Never Again"のみリチャード・トンプソンの作曲で、それ以外はすべて伝承曲。録音はいたってシンプルであいかわらずシャーリーの素朴ながらも存在感のあるヴォーカルを充分に堪能できる一枚です。枯れた味わいのある素晴らしいジャケットに加えて裏ジャケットにある幼い頃の仲の良さそうな姉妹の写真がとっても可愛い。 ![]() MARTIN CARTHY マーティン・カーシー"Shearwater" 1972 スティーライ・スパンを脱退後、72年に発表されたマーティン・カーシーのソロ作で通算5作目。まさに英国トラッドのメインストリームに位置する彼らしく、すべて彼自身のアレンジするトラッド曲オンリー。 独創的なギタープレーヤーでもある彼ですが、"Outlandish Knight"でのヴォーカルと共にユニゾンで爪弾くギターアンサンブル、また"Lord Randall"でのダルシマー&ギターの奏でる素朴な響きに引き込まれます。 なかでも9分を超える大曲"Famous Flowers Of Serving Man"はとてもギターだけによる弾き語りとは思えないほどで彼の歌との調和においても完成度が高いです。 また、マディ・プライアとのハーモニーで歌い上げる無伴奏曲"Betsy Bell And Gray"における表現力は、さすが英国の正統派トラッド・フォーク・シンガーの第一人者である彼の魅力を改めて味わうことができます。 本作品は無伴奏での伝承曲と、素朴でありながらも秀逸なギター・ワークの魅力満載の作品集です。
![]() ALLAN TAYLOR アラン・テイラー"Sometimes" 1971 英国フォーキーSSWの重要人物のひとり、アラン・テイラーのデビュー作であり、まさに名盤。(残念ながら06年現在、本作単独でのCD化はなく2ndの"The lady"との2in1CDしか出回っていません。)正統派といえるオーソドックスな弾き語りタイプのフォーキーで、 優しく包み込む歌声と素直なメロディライン。時に控えめに薄いベールで包まれるオーケストレーションが出現し心地よい雰囲気を醸し出します。トラッド曲と自作曲の絶妙なバランスがグッド。それにしても捨て曲なしの選曲ですべてが秀逸。ヤンシス・ハーベイも取り上げた"Swallow Swallow"など、素直で朴訥な歌唱法が心に残ります。 またフェアポート一派の3人のデイヴ(すなわちマタックス、ペグ、スウォブリックの)がしっかりとバックをサポート、トニー・コックスアレンジのさりげないオーケストレーションが味わいを増しています。 2ndの"The Lady"は若干ポップ度が増しているような気もしますがこちらも凄い名作。 ![]() STEVE ASHLEY スティーヴ・アシュレイ "Stroll On " 1974 トラッド系のSSWであるスティーヴ・アシュレイ渾身の名作でデビュー作。06年1月、待望のオリジナルジャケットにて再発されました。フェアポート・コンヴェンション及び一時在籍したアルビオン・カントリー・バンドのサポートを得て彼の魅力が充分に発揮された作品です。季節の移り変わりと愛、そして人生をテーマにしたトータル・アルバムのようですが、メルヘン的なジャケットの雰囲気と彼の牧歌的で独特のトラディショナル・ヴォイスやメロディが素晴らしくマッチしていて聴くほどに彼の音楽世界にはまってしまいます。 あのロバート・カービーの繊細なストリングス・アレンジに乗せて歌う"Spring Song"、フェアポート、特にスワブリックのフィドルが聴けるシングル曲の"Old Rock'n Roll"、一方アルビオン・カントリー・バンドをバックに歌い上げるトラッド曲"Lord Bateman"等を筆頭に、すべての曲が丁寧に作り上げられていて聴き応え充分。まさに名盤です。彼の存在はもっと多くの人々に知られてもよいはずなのに。
![]() STEELEYE SPAN スティーライ・スパン"Ten Man Mop or Mr.Reservoir Butler Rides Again" 1971 彼等の3作目である"Ten Man Mop"はトラッドを極めるべくこのバンドを結成したアッシュレー・ハッチングスの集大成ともいうべき名盤です。 ハッチングスは本作発表後に当時の奥方であったシャーリー・コリンズと共にアルビオン・カントリー・バンドを結成してしまいます。その理由というのはアメリカ・ツアーに反対したハッチングスの最後の決断らしいのですが・・・。フェアポートからの旅立ちにおいても純粋にトラッドを目指したかった彼ですが、またしてもトラッドを追究する為にスティーライのメンバーと袂を分かつことになってしまうのです。 いずれにしろ本作は、たいへん重厚で丁寧な音作りに徹しており、極めつけの本格トラッドを聴くことができます。ただ、個人的にはもう少しマディ・プライアのリード・ボーカルが欲しかったようにも思えます。しかしながら、聴き込むほどにジワジワと滲み出てくる英国トラッドの良さを充分に満喫できるすばらしいアルバムです。 ![]() Various Artists アシュレイ・ハッチングス他"Morris On" 1972 アシュレイ・ハッチングス主導の歴史の古いモーリスダンスを主題にしたトラッドアルバム。参加ミュージシャンはJ・カークパトリック、R・トンプソン、バリー・ドランスフィールド、D・マタックス。加えて当時はシャーリー・ハッチングス(コリンズ)が一部の曲でボーカルをとっています。 J・カークパトリックのボタンアコーディオンやコンサーティーナはもちろんのこと、B・ドランスフィールドの存在、そしてR・トンプソンのさりげないギターと正確無比なD・マタックスのドラミング・・・等々。錚錚たるこれらのメンバーですから内容が悪いはずはなく、作品全体が非常に格調高いムードであふれています。 "Staines Morris"はフェアポートのHouse Fullでも聴くことができますが、さりげない情感がたっぷり溢れたS・コリンズの歌唱とバリー・ドランスフィールドのフィドルによって一段と輝きを増しています。そして本作に続く「Son Of Morris On」については↓です。こちらもマストアイテム。
![]() Various Artists アシュレイ・ハッチングス他"Son of Morris On" 1976 *** モーリス・ダンス第2弾。再びアシュレイ・ハッチングスの呼びかけによって制作されたエレクトリック・モーリス・ダンス集。本作では当時のアルビオン・ダンス・バンド関係者であるジョン・タムズ、サイモン・ニコル、フィル・ピケットそしてマーティン・カーシー等を中心に展開され、前作よりもちょっとだけポップなエッセンスが窺がえるようです。"Monck's March"や"The Happy Man"(後にフェアポートも演奏)などは鈴の音と共に一緒に踊りたい気分だし、ピケットのリコーダーをバックにシャーリー・コリンズとジョン・タムズが対話する"Bring Your Fiddle"などはまさに英国的雰囲気。 CDではボーナス・トラックとして収録されている"Cotsworld Tune"(リック・サンダース作)が素晴らしい出来で盛り上がります。上記の"Morris On"と比較するとこちらのほうがバラエティに富んだ構成であり、一層磨きがかかったエレクトリック・モーリスダンスを体験できます。 ![]() Various Artists アシュレイ・ハッチングス他"Grandson of Morris On" 2002 懲りずにモーリス・オン第3弾。2002年、またしてもA・ハッチングスがミュージシャンを集めて制作した凄いアルバムの登場です。 フェアポート・コンヴェンションでのヴォーカリスト兼マルチ・プレーヤー、クリス・レズリーとリック・サンダースのダブル・フィドルに、90年代アルビオン・ファミリーであるフィル・ビアー、サイモン・ケアらの芸達者な面子。そこに今やフェアポートの牽引役であるサイモン・ニコル。これら、定番のモーリス衣装に身を包んだ名うてのミュージシャン達の確かな演奏に加えて今回もアダベリー・モーリス・メンが鈴の音と共に踊ります。 "This Is The Morris My Friend"ではめずらしく御大ハッチングスがメイン・ボーカルをとったりしているのも聴き処。 前回の「Son Of Morris On」から26年、初回からは30年以上も経過しているのに初志貫徹。みごとです。そして、「Great Grandson of Morris On」へと続きます。
![]() THE ALBION COUNTRY BAND アルビオン・カントリー・バンド"Battle Of The Field" 1973 フェアポート・コンヴェンション→スティーライ・スパンと渡り歩いた末に、A・ハッチングスの英国トラッドに対する溢れる想いは、アルビオン・カントリー・バンドという形で成就されここでまた新たなスタートを迎えます。シャーリー・コリンズを全面的にバックアップしトラッド仲間大集合の"No Roses"も大作でありましたが、本作も勝るとも劣らない英国トラッド・ロックの決定版です。 メンバーにはメインボーカルをとるマーティン・カーシー、スー・ハリス、ジョン・カークパトリック、フェアポートからはサイモン・ニコルにD・マタックス、そして御大アシュレイ・ハッチングス。ライブでもおなじみの"Albion Sunrise"やR・トンプソン作の"New St.George"、そして名曲"Battle Of The Some"が収録されていて必聴のトラッド・ロックの数々。次作の↓よりは少々フォーク寄りの音でシンプルな作風ながらも重厚で迫力に満ちた格調高い名盤。 ![]() THE ALBION DANCE BAND アルビオン・ダンス・バンド"The Prospect Before Us" 1976 スティーライ・スパンを脱退したアシュレイ・ハッチングスが結集したアルビオン・カントリー・バンドはその形態を発展させて、より深くトラッドを追究するアルビオン・ダンス・バンドとして引き継がれました。 ヴォーカルとしてシャーリー・コリンズも参加しており、一聴するとメロディオンなどを使った楽しいフォークダンスミュージックのようですが、じっくり聴いてみるとやはりそこにはハッチングスが目指していた純粋古楽トラッドがジワジワと出現してきます。 クルムホルン、バグパイプ、それにリコーダー等の楽器達がうまくバランスをとりながら、軽快なダンス・ナンバーが続きますが、それらは決して底抜けに明るいわけではなく、やはり英国の陰影というか中世の古楽の特徴が滲み出ています。 そんなダンスナンバー中でもスローな"Minuet"という曲などはなかなか表情豊かで湿っぽい英国らしさが充分に味わえます。
![]() THE ALBION BAND アルビオン・バンド"Rise Up Like The Sun" 1978 "アルビオン・カントリー"、"アルビオン・ダンス"とその音楽性と共に変化してきたアシュレイ・ハッチングス率いるトラッド・ロックバンドは、78年にシンプルにアルビオン・バンドという名義で一枚の傑作を発表しました。 本作では女王シャーリー・コリンズに代わるゲストの歌姫はリンダ・トンプソンにケイト・マッギャリグル。そしてリチャード・トンプソンやアンディ・フェアウェザー・ローもバック・コーラスで出演。リック・サンダースはここでは正式メンバーとして名を連ねています。相変わらずフィル・ピケットの古楽器が冴え渡るのですがその作風はダンスバンド以上にヘヴィでモダン。そしてトラッドロックとしたら曲の構成がドラマティックでかつメロディアス。まさに軽快で明快なアルビオン・ロック・バンドという名称がぴったり似合うような、数あるエレクトリック・トラッドの中でもより聴き易いメジャー受けするサウンドが響き渡ります。 ![]() HOME SERVICE ホーム・サーヴィス"Alright Jack" 1986 かつてJ・カークパトリックも在籍し、アルビオン・バンドの発展形であったホーム・サービスの3作目。 このバンドの特徴は何と云ってもフリューゲル・ホーンやトランペット、サックスまでも駆使しトラッド・ロックに対する新しい試みを行ったことでしょう。ボーカリストのジョン・タムズ曰く、ホーム・サービスはフォークロックというよりも現代的で幅広いリスナーを満足させる“ロックフォーク”であると...。優しく落ち着いた声で朗々と歌い上げる彼の魅力と、ハワード・エヴァンス(かつてウェールズ王室音楽隊に在籍したらしい)らのホーン・セクション、そしてアルビオンでも活躍したグレアム・テイラーの心地よいギター、これらがぴったりとマッチして、独特のスタイルを完成させたといってよいでしょう。本作は大胆なアレンジで突き進むトラッド曲とタムズ作曲のフォーク・フレイバーのバランスも程よく、"Sorrw / Babylon"そして、12分にも及ぶ大作の"A Lincolnshire Posy"が聴きどころです。
![]() THE ETCHINGHAM STEAM BAND エッチンガム・スティーム・バンド"The Etchingham Steam Band" 1995 アシュレイ・ハッチングスとシャーリー・コリンズ夫妻が中心となって結成した、なんともほのぼのとした「蒸気バンド」は、電気楽器を使わずに演奏するバンドということ、マウス・オルガンのプカプカ音、そしてふたりが住んでいた片田舎のエッチンガムという土地・・・そのあたりがバンド名の由来になっているようです。(まさにバンド結成当時は操業時間短縮と電力カットという時代だったそうです。) 95年、突然にこのバンドの数少ないライブ録音が1枚のCDとなって世に出たわけですが、なんとも素朴でアコースティカルな音作りが微笑ましいです。特にシャーリー・コリンズはアルビオン・バンドでの録音とは異なりこのバンドのステージを楽しんでいるようにも思われますし、彼女のシンプルな歌唱法にはこのようなアコースティックな作りのほうが断然マッチしているように思われますがいかかでしょう。雰囲気抜群のジャケットもなかなかグッド。 ![]() PHILIP PICKETT フィル・ピケット"The Bones Of All Men" 1998 ** 古楽の演奏家であり研究家でもあるフィル・ピケットとリチャード・トンプソンが98年に発表したデュオ・アルバム。古楽の専門家であるピケットは以前にアルビオン・バンドにも在籍したミュージシャンですが、R・トンプソンとの息もぴったり。曲自体は16世紀頃のダンス曲がメインですが、ピケット氏の奏でる古楽器群とリチャードの弾くE/ギターが 見事に一体となった演奏は大変楽しいものです。 R・トンプソン曰く、へヴィメタ版中世音楽らしいですが なるほどかなりヘヴィなロックの味付けを施した本作は必聴です。 ハンニバルの社長でもあり、数々の英国フォークをプロデュースしてきたジョー・ボイドのプロデュースによって実現したこのアルバム、サイモン・ニコル、デイヴ・ペグ、デイヴ・マタックスというフェアポートのリズム隊のサポートの他に、中世フィドル奏者であるパヴロ・ベズノシウクとシャローナ・ジョシュア(中世キーボード類)が共演。
![]() DRANSFIELD ドランスフィールド"The Fiddler's Dream" 1976 ロビン&バリー・ドランスフィールド兄弟のデュオを中心にほのかなトラッド色で味付けしたドランスフィールドというバンド名義のアルバムでフォーク・ロックの名盤。 バリー・ドランスフィールドはトラッド界ではフィドラーとして数々のユニットにも顔を出しているのですが、 バンド名義としては最初にして最後のオリジナルアルバムである本作において、その豊かな才能を思う存分発揮しているといえます。フィドルはもちろんですがドランスフィールド兄弟及びベース奏者のブライアン・ハリソンのハーモニーはかなり密度が濃くしっかりと響いてきます。 「The Blacksmith 1,2」におけるエレクトリック・バイオリンの響きはダリル・ウェイをも彷彿とさせる素晴らしい演奏で全体的にはトラッド臭はあまりなく、その中でもぼくのお気に入りは最後を飾るその名も「Violin」です。この曲はフェアポートの"Matty Groves"にも匹敵する好演奏だと思います。 ![]() THE WOODS BAND ウッズ・バンド"Same" 1971 ゲイ&テリーウッズがスティーライ・スパン脱退後に結成した5人組フォーク・バンド。アシュレイ・ハッチングス主導によりイングリッシュ・トラッドを追究するべく結成したスティーライ・スパンに何故このアイルランド人夫妻が参加したのかいまだに不明なのですが、案の定スティーライの1stアルバム発表後に脱退。彼らの本当にやりたかった音楽をウッズ・バンドとして発表したわけです。 "Everytime"に代表されるようにテリーの独特のヴォーカルとスティール・ギターがかもし出す雰囲気は英国スワンプ風。初期スティーライ風のまったりとしたトラッド・アレンジとサンディ・デニー在籍時のフェアポートのようなメロディアスなサウンド。それらがブレンドされたようなエレクトリック・トラッド・ミュージックです。やっぱりアイリッシュ風味がそこかしこに現れているのはアイルランド出身ならでは。 トラディショナルとオリジナルの程よいブレンドで、英国フォーク・ロックの名盤として評価される大傑作です。
![]() GAY & TERRY WOODS ゲイ&テリー・ウッズ"Backwoods" 1975 スティーライ・スパンの1stアルバムに参加後、夫妻で結成したウッズ・バンドはトラッド曲とオリジナル曲をみごとに融合させた傑作を発表します。その後、ゲイ&テリー夫妻名義でのアルバムをあのマイケル・ジャイルズらの協力の下に発表したのが本作"Backwoods"です。 軽やかで典型的なフォークロック曲"I MIssed You"に始まり、泣きのエレキギターが哀愁を誘う"The Hymn"などなど、次々と聴いていくほどになんとも云えない素晴らしく透き通ったゲイのヴォーカル(どこか若い頃のリンダ・ロンシュタット似の声質?)とともに夫君のテリーの渋く陰影のある歌声。そしてそれぞれの楽曲の良さが特徴となっており、決して派手さはないけれども、しっとりとした作風はいかにも英国フォーク(二人はアイリッシュですが)というような流れです。ジャケからも連想されるように秋から冬に聴きたい、実に味わい深い一枚で名盤。 ![]() INCREDIBLE STRING BAND インクレディブル・ストリング・バンド"Same" 1966 インクレディブル・ストリング・バンドの一連の作品が06年に紙ジャケにて再発されました。本作は1966年に発表された彼らのデビュー作でプロデュースはあのジョー・ボイド。トラディショナルなケルティック・フォーク、ブルーグラス、カントリーなどをベースとして活動してきたクライヴ・パーマーとロビン・ウィリアムソンのコンビにマイク・へロンが加わり結成されたユニークなフォークユニットですが、彼らの特徴といわれているちょっとサイケで摩訶不思議な雰囲気は本作においてはあまり表出されません。彼らなりの解釈に基づいたトラディショナル・ミュージックをベースに、おとなしく地道にオリジナルを演奏しているような感覚です。なお、本作後クライヴ・パーマーは脱退してしまうわけで、このデビュー作のみが唯一オリジナルの3人によって録音されたアルバムであることも重要。 アルバム毎に内容が変わるISBをひとことで言い表すのは大変難しいです。
![]() HORSLIPS ホースリップス"Happy To Meet , Sorry To Part" 1972 ケルティック・ミュージックとロックが程よくブレンドされた、アイルランドの5人組ロックバンド、ホースリップスのデビュー盤です。 よくアイルランドのフェアポートとかいう、ちょっとはずした形容で語られることもあるようですが、シンプルに言い切ってしまえばそんな先入観よりも素直に彼らのやっている音楽に触れてみると、語り継がれたアイルランド民謡というものをバックボーンにしながら、その時代の流れの中で彼らのやりたいロックの方向性を示したという事実だけが存在する、ただそんな気がしてなりません。 笛や弦によるアコースティカルな曲調が続いたかと思うと、突然メタルなE・ギターのロック・サウンドによって目を覚まさせられたりと、固まったイメージで捉えることができないユニークなサウンドです。この時代のなせるサイケ風味も充分に感じられるなかなか一筋縄ではいかないバンド。変形ジャケットということも付け加えて総合的に魅力たっぷりの一枚です。 ![]() MELLOW CANDLE メロウ・キャンドル"Swaddling Songs" 1972 さて、トラッド風味からちょっと離れてここからいわゆる英国フォーク三美神といわれているグループの登場です。 まずは、アイルランド出身のクロダー・シモンズとアリソン・ウィリアムズという2名のフィメール・ボーカリストを擁するメロウキャンドル。1972年に本作"Swaddling Songs"というアルバムのみを残し、メンバーは現在それぞれの道を歩んでいるらしいです。(解散後アリソン&デイヴィッド・ウィリアムズが結成した「Flibbertigibbet」は南アフリカのみでアルバムをリリースしたとのこと。) このグループの特徴といったら何と云っても透明感溢れるツイン女性ヴォーカルがリードして独自の世界を築きあげているところでしょう。繊細なのに骨太、そんなミステリアスな雰囲気も持っています。メロトロンの導入などもあり、いわゆるブリティッシュ・プログレ・フォークの路線というのでしょうか。じっくり聴き込んでこのバンドの素晴らしさを噛み締めたいです。
![]() TUDOR LODGE チューダー・ロッジ"Tudor Lodge" 1971 1971年に6面変形見開きジャケットの「Tudor Lodge」を発表。紙ジャケCDでもリイシューされた三美神のうちの一組。リンドン・グリーン、ジョン・スタンナードに米国人女性ヴォーカリストのアン・スチュワートをフィーチャーして結成された3人編成のバンドです。(メンバーは違うが現在も活動中) 聴く者にはイギリスの風土だけに限らない誰でも心の中に持っている田園風景を思い起こさせ、素朴なカントリータッチが垣間見られる優しいメロディーの曲ばかりです。 爽やかなハーモニーと耳に優しいメロディラインはイギリス版ピーター・ポール&マリー。たいへん懐かしくそして無理のないスーッと入ってくるメロディー。このグループに出会えてよかったと素直に思える気がします。ただ単にコーラスの美しさとかメロディラインの良さとかで表現されるものではなく、聴けば聴くほどに清々しい満足感で心が洗われるまさに名盤! ![]() SPIROGYRA スパイロジャイラ"Bells,Boots And Shambles" 1973 1999年に韓国のSi-Wanレーベルの創立10周年記念として彼らのボックスセットが発売されました。 既発売の3枚に加えてシングルとして発表された曲をミニCDに収めてあります。サイケ風でもあり、他のフォーク・バンドとは同一線上では語れないその一種独特の神秘的なサウンド。その中でも3作目である「Bells,Boots And Shambles」は傑作に間違いありません。発表当時から名盤の誉れ高いこのアルバムは、やはり全面的にフィーチャーされているバーバラ・ガスキンのとてつもなく美しい声と相棒のマーティン・コッカーハムの作る魅力的な曲の構成からくるのではないかと思います。(マーティンの歌はあまり誉められたものではないけど・・・。) 最早バンドとしての形態からほど遠く、サポートするダニー・トンプソン、スティーヴ・アッシュレイそしてデイヴ・マタックスらメンバーの協力によって作り上げられたようなアルバムですが1st,2ndと聴き比べてみるとやっぱり最高傑作はこの3rdのような気がします。
![]() CONTRABAND コントラバンド"Same" 1974 スコットランドの生んだ歌姫メイ・マッケンナを擁するコントラバンド唯一のアルバム。 ヴォーカリストであるメイ・マッケンナが目立つ存在ではありますが、ジョン・マーティン(フィドル)、ピーター・カーニー、ジョージ・ジャクソン(gtr)、ビリー・ジャクソン(bs)そしてアレック・ベアードの5人のメンバーらのテクニックも相当なもので、彼らのしっかりとしたサポートあってこそのバンド・サウンドなのでしょう。 もちろんメイの清楚で深く、潤沢で伸びやかな歌声は数あるフィメール達の中でもトップクラスの美しさで、心に染み渡る忘れられない歌声です。 "Rattlin' Roarin' Willie"、"The Black Rogue-Jigs"などの完璧な出来上がりのトラッド・ロック、 また彼女の美声が充分に堪能できる"The Banks Of Cloudy"やSSW的フォーク・ロック作品の"Lady For Today"などすべて捨て曲なしでまさに名盤。彼らが本作一枚でバンドの終焉を迎えてしまったことは本当に惜しいことです。 ![]() MARIANNE SEGAL WITH SILVER JADE マリアンヌ・シーガル・ウィズ・シルバー・ジェイド "Fly On Strangewings" 1970 マリアンヌ・シーガル率いるジェイド(正式にはマリアンヌ・シーガル・ウィズ・シルヴァー・ジェイド)が残した唯一のアルバム。60年代のビート感覚をかすかに残しながらちょっぴり米国を意識した作風。またもや「イギリスのアメリカ」ですが、かすかな湿っぽさは確実に存在します。 メリハリの利いたマリアンヌのボーカルに、ギタリストのデイヴ・ウェイトとキーボード・プレイヤーのロッド・エドワーズのコーラスハーモニーも心地よい耳あたりです。 特筆すべきなのはタイトル曲の"Fly On Strangewings"。メロディの良さもさることながら、ピアノをバックに歌うマリアンヌのしっとりとしたボーカル、優しく響くオーケストレーション・・・これらが一体となって出来上がった素晴らしい楽曲に心が安らぎます。 ボーナス・トラック入りCDにはジョニ・ミッチェルとジェームス・テイラーのカバー曲も収録。マリアンヌのシンガーとしての魅力が大いに活かされた好盤。
![]() PRELUDE プレリュード"How Long Is Forever" 1973 アイリーン(イレーヌ?)とブライアンのヒューム夫妻とイアン・ヴァルディによる3人組ポップ・フォーク・ユニット、プレリュードのデビューアルバム。よく「PP&Mに対する英国からの回答」などとも云われていたようですが、特にPP&Mを意識している様子もないし別段比較するところもないと思いますが・・・。 ポップ・フォークをベースにしながらもバラエティに富んだ曲が並びますが、アイリーンの歌唱の素晴らしさは肩肘張らずにすんなりと聴けるところで、特に"Paris Morning"やアカペラで歌う"After The Goldrush"などさりげなく歌い上げています。ジェントリーなアイリーンの歌声と男声ふたりのハーモニーは清々しくもありますがやはりどこか突き抜けないところが英国的ということでしょうか。反面、3人の穏やかでぬくもりを感じさせるハーモニーが絶妙にブレンドされて、気分を落ち着かせてくれる癒し系の典型的英国フォークで好盤。 ![]() WESTWIND ウェストウィンド"Love Is..." 1970 女性1名+男性2名のPPMスタイルの非トラッド系フォークトリオ。どちらかというとポップフォーク的なアレンジで歌うコーラス・グループとでも云ったらよいのでしょうか。 ハーモニーは流麗で温もりが感じられ、アコースティック・ギターをメインにしながらも時折顔を出すストリングスの調べも手伝って曲調はとってもメロディアスで聴きやすいです。 フィメール・ボーカリストはシンプルで飾り気の無いシンギングが好印象のサラ・ダイソン。彼女を中心に男性ボーカルのハーモニーも清々しく響き渡りますが、少々こじんまりとまとまり過ぎ。もう少し冒険しても良かったのでは?という印象ですがいかがでしょう。 ブルーをバックにしたジャケットと水辺に佇む3人。大変インパクトがあって思わずジャケ買いしてしまいそうな一枚ですが、丁寧な作りという意味でなんとか及第点はつけられるアルバム。
![]() NUTSHELL ナットシェル"Flyaway" 1977 男性1名女性2名のポップ・フォーク・グループが発表した77年の作品で2ndアルバム。残念ながら詳細はまったく不明です。いかにも英国的なセピア調のジャケットとともに、リードを取る男性ヴォーカルに追随するふたりの透明度の高いフィメール・コーラス(ここが何といってもポイント!)、甘いメロディラインにさりげない室内楽。アコースティックなアレンジでそれらが絶妙に絡み静謐で穏やかな楽曲が心に染みます。 ふたりの女性のコミカルなシンギングもあったりしますが、全体的に澄みきった美声とさわやかコーラスを前面に押し出した佳曲ぞろい。 中でも"Bedsitter/Sometimes"は7分を越す大曲となっており、哀愁に満ちたメロディに3人の素晴らしいコーラス・ワークが光ります。 細部にわたって丁寧な作りのアルバムなのですが、欲を言えばこれといった特徴があまり見られず、平坦な音作りがちょっぴり残念なのですがいかがでしょうか。 ![]() SUNFOREST サンフォレスト"Sound of Sunforest" 1969 男性1名女性2名のフォークトリオ唯一のアルバム。69年にデラム・ノヴァからリリースのオリジナル原盤は長らくレアアイテムとなっていましたが、04年に紙ジャケでリイシューされました。 いきなりイングリッシュホルンをフィーチャーしたメロディにハープシコードも絡み、格調高くクラシカルな趣の"Overture To The Sun"で幕を開けます。 管楽器、オルガン等を全面的にフィーチャーした曲が多く、霧の中から聞こえてくるような女性ボーカルがファンタジックでドリーミーな雰囲気。しかし決して雰囲気だけに流されているのではなく確かなセンスと技巧に裏付けられておりどの曲も出来が良いです。単なる時代のトレンドにあやかって安易に制作されたものではなくきちんとした制作意図に基づいてどの曲も真面目にそしてたいへん丁寧に作られた珠玉の作品集。却ってへたにフラワー・ムーヴメントを意識せずに自然に表現しているところが好感の持てるところですね。
![]() FARAWAY FOLK ファラウェイ・フォーク"Seasonal Man" 1975 女性2名男性2名のトラッド、非トラッドの両面をあわせ持つフォーク・クインテットの4作目で最終作。なにやらそそられる英国的ジャケット・ワークがグッド。 どうやらこのグループの核はジョンとシャーリーのTurk兄妹(?)が主体になっているらしく、2作目までとはメンバー構成が変わり、それに伴って作風においても若干の変化が生じているようです。 オリジナル曲もトラッド風味のシンプルなアレンジによって奏でられ、たしかに陰鬱な英国的雰囲気が存在しますが、清楚なコーラスワークに寄り添うように聴こえてくるリコーダーの音色よって心地よい涼風を感じ取ることも出来ます。なかでもトラッド曲においてはどこかスティーライ・スパンを軽めにアレンジして万人向けに聴き易くしたような感じですが、とりたてて小難しいことなどやっておらず、耳にすんなりと馴染むさわやか系フォーク・グループです。 ![]() MAGNA CARTA マグナカルタ"Seasons" 1970 シンプルなフォークの王道を行くようなコーラスのうまさと丁寧な曲作りで魅了するマグナ・カルタ。彼らの音楽はすんなりと心地よく耳に響いてくるさわやか系フォークです。 丁寧に歌い上げるコーラス・ハーモニーなどから思い浮かべるのは、チューダー・ロッジが英国版のP.P&Mであるならばこちらは英国のブラザーズ・フォアといったところでしょうか。(笑) 本アルバムでは豪華ミュージシャンがサポートしていることだけでも結構そそられてしまいます。リック・ウェイクマン、トニー・カー、トニー・ヴィスコンティ、またギタリストのティム・レンウィック(クイヴァーの名ギタリストで、アル・ステュアートのサポートメンバーとしても活躍)等の顔ぶれです。 それほど英国風なスパイスも効いておらず正にシンプルなフォークですが、聴き込めばその味を堪能出来る筈です。ジャケットも英国的で秀逸。
![]() > GALLAGHER & LYLE ギャラガー&ライル"Willie and The Lapdog" 1972 ベニー・ギャラガーとグラハム・ライルというスコットランド出身のフォーク・デュオ。といっても、後にアート・ガーファンクルも歌った"Breakaway"の作曲を手がけたということが先行してしまい、初期の素朴なフォークのイメージがあまり評価され難いグループです。彼らはアップル・ミュージックにてソングライターとして契約し、メアリー・ホプキン等にも曲を提供しました。("Earth Song"に収録の"International"など) 2004年に国内においては1stを除く7枚のオリジナル・アルバムがCD化されましたが、ここにもいわゆる「イギリスのアメリカ」がまさに存在します。米国南部のルーツ・ミュージック風味を基盤としながら二人のハーモニーが流れるのですが、聴き込めば聴きこむほどにやっぱり英国の土の香りがにじみ出てくるようなシンプルなフォークです。この後、彼らはどんどんポップになっていってしまうとのことですが・・・。 ![]() ROY HARPER ロイ・ハーパー"Valentine" 1974 英国フォークの重鎮、ロイ・ハーパーがタイトル通りヴァレンタイン・デイに発表したラブソング集。 素朴なメロディーの中にも結構ドラマティックな展開があり、作風はどちらかといえばロック寄りのSSWでしょうか。またサウンドとは裏腹に彼の優しい声(顔にも似合わず)も心に響きます。個人的には"I'll See You Again"、"Twelve Hours Of Sunset"、"One Of Those Days In England"、などは大好きな曲です。 彼をサポートするミュージシャン達にはジミー・ペイジ、キース・ムーン、デイヴ・ギルモア、クリス・スペディング、それにビル・ブラフォード・・・というそれはもうロック界、プログレ界の豪華な顔が揃っています。ピンク・フロイドの「Wish You Were Here」での「葉巻はいかが?」のヴォーカルによって彼をご存知の方はいるでしょうが、日本国内ではそれほど目立つ存在ではないアーティストであるのが残念でなりません。英国フォークの中でも評価されるべき実力派のひとり。
![]() MARC BRIERLEY マーク・ブライアリー"Autograph Of Time" 2005 66年にデビューしたマーク・ブライアリーはサイケ&アシッド・フォーク系のSSWで、1stアルバムのなんとも摩訶不思議なジャケットが印象的です。本作は1stアルバムの"Welcome To The Citadel"と2ndの"Hello"、そしてシングル録音数曲を集めてCD化された66年から70年までに発表した彼のコンプリート作品集です。 物悲しいチェロの響きやトランペットの音色、アコースティック・ギターと彼の歌声がシンプルな作風に程よくマッチしていて、それほど内省的な方向に向かわず、意外にもメロディアスで英国的情緒たっぷりの落ち着いた作風に好感が持てます。 淡々とした弾き語りの小品集といえる1st、より快活でメロディラインの幅が出ており完成度の高い2nd、そしてシングル曲。それぞれの楽曲の出来の良さは思っていた以上で、もっともっと注目されてもよかったフォーク・シンガーのひとりであると思います。 ![]() WIZZ JONES ウィズ・ジョーンズ"The Legendary Me" 1970 英国フォーク界の大物アーティスト&ギタリストであるウィズ・ジョーンズ(本名Raymond Ronald Jones)の2作目。60年代初め頃よりロンドンのフォーク・クラブに顔を出しはじめ69年にレコード・デビュー。 本作はウィズ自身とピート・ベリーマンのアコースティック・ギターをバックにしたシンプルなアレンジで歌い上げる曲ばかりで、その収録曲のほとんどがアラン・タンブリッジというソングライターによる作品。ウィズ本人の作は"If Only I'd Known"のみです。しかしながら、ラルフ・マクテルが参加した"When I Cease To Care"や"Dazzling Stranger"などは一聴するとなぜかマクテル本人の作品のようで不思議です。 顔に似合わず優しい声で淡々とごく普通に歌い上げていく弾き語り調の曲ばかりで、彼のギター・テクニックにおいても特に派手さはありません。しかし聴けば聴くほどその素朴でさりげない魅力にのめりこんでしまう、英国HOBOフォークの最高峰と言っても差し支えない名盤。
![]() NICK DRAKE ニック・ドレイク"Way To Blue" 1994 本作は3枚のアルバムおよび未発表曲集である「Time Of No Reply」から収録されたベスト盤です。彼については若くして亡くなった・・・ただそれだけしか知らず、肝腎の歌声はずっと後になってから初めて聴いたわけですので多くは語れませんが、メロディー、歌詩、歌声、はっきり言って非常に「暗い」です。しかし彼の短い人生の中の苦悩や想いがあからさまに表現されていることによって何故か親近感さえ憶えてしまうほど説得力があります。普段あまり詩の内容については追究しないのですが、彼の歌を聴くには是非そのダイレクトな詩を味わいながら聴いて欲しいです。 それにしても「Fruit Tree」の“They'll all know that you were here when you're gone.”という詩は彼の短い人生がこの時既にレールが敷かれていた!というのを予言しているようでもあります。別ページにある彼の特集もぜひご覧下さい。(ジャケットをクリック!) ![]() MICHAEL CHAPMAN マイケル・チャップマン"Fully Qualified Survivor" 1970 英国SSWの重鎮的存在であるマイケル・チャップマンの2ndアルバム。2005年現在も活動を続ける現役ミュージシャンです。 本作はデヴィッド・ボウイとの関わりも深いギタリストのミック・ロンソン、後のスティーライ・スパンに加入しマディ・プライアの夫君であるベースのリック・ケンプなどの渋いメンバーが全面的にバックアップ。またプロデュースにはガス・ダッジョン、エンジニアがトム・アロムとくればフォーク関連アルバムでは間違いなしの作品でしょう。リズミカルな奏法で押しまくるギターと絞り出すような歌声がインパクトの彼ですが、シンプルでアコースティカルなサウンドの中にもエレクトリック・ギターのハードなサウンドをフィーチャーした曲もありロック・スピリットが溢れ出します。雰囲気的にはロイ・ハーパーに通じるところも見え隠れします。英国的陰影に満ち溢れた、まさにいぶし銀のような味わい深い歌声と楽曲による名盤。
![]() ERNIE GRAHAM アーニー・グレアム"Same" 1971 北アイルランド出身のSSWであるアーニー・グレアムのソロデビュー作で、オリジナル原盤は激レア。その渋い歌声のバックを固めるのはブリンズリー・シュワルツ、イアン・ゴム、ニック・ロウらの英国スワンプの有名処です。ギターのシンプルなストロークをバックに朴訥な彼の歌声で始まる1曲目の"Sebastian"などは典型的な英国フォークで聴けば聴くほどスルメです。 波音のイントロとピアノの旋律にかぶさるひんやりとしたオルガンの音色と寂しげなE・ギター、"Sea Fever"はベルファストのどんよりとした寒空と冬の海を連想させるような雰囲気。 「イギリスのアメリカ」的なメロディ・ラインも多く含んだ哀愁漂うフォークですが、やはり背景には北アイルランドのくすんだ風景が見えてくるわけで、 アイリッシュ・トラッド風味のフィドルをフィーチャーし、自分の故郷を歌った"Belfast"あたりに彼の音楽的ルーツがあるようです。 彼の真摯な音楽姿勢と懐の深さがダイレクトに伝わるまさに名盤。 ![]() BRINSLEY SCHWARZ ブリンズリー・シュワーツ"Despite It All" 1970 パブロックの雄(?)ブリンズリー・シュウォーツの2作目。だいたいパブロックというジャンルの意味がよくわからないのですが、いわゆるメインストリームで活躍していたアーティスト達とは対極の位置にいた結構地味めのロッカーという意味でしょうか。 彼らの音楽はアメリカンな風が感じられるのは間違いなく、やっぱり「イギリスのアメリカ」。 陽気で親しみやすい"Country Girl"で始まる本作ですが、ジャケットのイメージそのままで、しかしやっぱりどこか突き抜けない英国人ミュージシャンの奏でるカントリー・ロックなのです。 全体的に地味で落ち着いた作風が目立ちますがポップな"Love Song"や"Funk Angel"のようなファンキーなナンバーでもそれほど泥臭くなく、軽快なフォークロック・サウンドがスルメ的でうれしいです。 最後を締めくくる"Old Jarow"は英国トラッドロック風味。やっぱり英国バンドにしか出せない味というものが存在していてグッド。
![]() MALCOLM MORLEY マルコム・モーリー"Lost and Found" 1976 アーニー・グレアムも一時在籍したHELP YOURSELFのメンバーでギタリストのマルコム・モーリーの唯一のソロ作。バンド解散後の1976年、ブリンズリー・シュワルツのイアン・ゴムのプロデュースにより録音。25年間埋もれていたマスターテープが発見され02年にやっと日の目を見た盤です。 ここでは彼のメロディメイカーとしての本領が充分に発揮されしっとりとしたSSW然とした作風となっています。レイドバックしたピアノにスパニッシュ・ギターが絡み、余裕のボーカルが素晴らしいカントリーロック調の"Without A Word"。タイトル曲の"Lost and Found"はまさにP・マッカートニー風。一転してダルでジャジーでオールドタイミーなピアノをフィーチャーした"All That I Need"ではまったりとしたトム・ウェイツ風。それにしてもマルコムの多彩なソングライティングにはびっくりでその憂いを含んだボーカルも好印象。彼をバックアップするメンバーとの息もぴったりでまさに幻の名盤といっても過言ではありません。 ![]() BRYN HAWORTH ブリン・ハワース"Sunny Side Of The Street" 1975 英国スワンプ系SSW、ブリン・ハワースの2ndアルバム。サポートにはグリース・バンドのB・ローランド、クリス・ステイントン、アラン・スペナーにフェアポート一派(スウォーブリック、ペグ、マタックス)そしてココモのメンバーら。 いわゆる「イギリスのアメリカ」ですが、やはり英国風味は隠せません。それほど主張しない彼のボーカルと共に、自然にやりたい音楽を演じるスタンスでしょうか。 粘っこい英国スワンプ的な"Good Job"は後半のゴスペル・ライクなコーラスの盛り上がり、"Pick Me Up"での骨太ブギーサウンド、"Darlin' Cory"でバックアップするのはまさにフェアポート・サウンド。"Give All You Got To Give"のハイセンスなAOR風味など。曲ごとに変化するサウンド構成は、多彩な音楽性を持ち合わせた彼の魅力を存分に伝えてくれます。さりげなく溶け込む彼のスライド・ギターも魅力的です。彼のセンスを十二分に発揮した捨て曲一切なしの愛すべき名盤。
![]() CLIFFORD T.WARD クリフォード・T・ワード"Singer.Songwriter" 1972 タイトル通りのSSWであるクリフォード・T・ワードのデビュー作。 荘厳な弦楽をバックに歌いだす"Coathunger"を聴いただけでノックアウトですが、説得力のあるボーカルに伴ってすべての楽曲が心に響くとても印象的で素敵なメロディラインを奏でています。 作風はフォーク・ポップ的ですが、英国的な憂いのあるグッと来る曲ばかりで、デビュー作なのにこの完成度はいったいどこから来るの?と思えるほどの完璧な仕上がり。全曲クリフォード自身による作詞作曲で本人がボーカルをとり、またプロデュースも自身で手がけています。特に有名どころのバック・ミュージシャンを集めて作り上げたわけでもないのですが、とにかく今まで聴くことが無かったことを後悔したほどの、英国の正統派SSWが心を込めて作り上げた渾身の一枚であって、まさに名盤であることを確信します。そんな彼は惜しくも2001年に肺炎でこの世を去ってしまいました。合掌。 ![]() COLIN SCOT コリン・スコット"Same" 1971 有名ミュージシャンをバックに従えたSSW のコリン・スコットが発表した作品。とりあえず、バックアップメンバーを列記すると・・・。 Robert Fripp,Brinsley Schwarz,Rod Clements,David Kaffinetti(Rare Bird),Rick Wakeman,David Jackson(VDGG),Peter Hammil,Peter Gabriel,Phil Colins,Anne Steuart(Tudor Lodge),Jane Relf,Jon Anderson,Linda Hoyle,Alan Hull... これらの超豪華メンバーの名前を聞いただけでも、本作およびコリン・スコットという方の交流関係の凄さがわかるというものです。しかしながら駆けつけた仲間達はそれぞれの個性は敢えて主張せず、バックアップに徹しているようです。 いかにもSSW然としたオーソドックスで親しみやすいメロディを中心とした本作品は、どこかドン・マクリーンやアンディ・ロバーツなどに共通するところも見受けられる魅力的な好盤となっています。
![]() KEVIN LAMB ケヴィン・ラム"Who Is The Hero" 1973 ポップ・フォーク的なSSWであるケヴィン・ラムの1stソロアルバム。 プログレ方面の方にはあのレア・バードのアルバムにヴォーカリストとして招かれたことが有名らしいのですが、まったくプログレ臭は感じられません。むしろケヴィンの叙情的で優しく穏やかなヴォーカル・スタイルがバックのオーケストレーションと絶妙なバランスを保ち、クリフォード・T・ワードにも通じるような、歌の上手なシンガーのアルバムとして味わうことができます。 本作のレコーディングに際して、おそらくレア・バード関係者の参加はありえるとしてもクレジットはなく残念ながら不明。 また本CDはこの度06年に正規盤として国内初登場ですが、リマスタリングにおいて若干の難があるのが惜しい。 しかし、彼の歌唱力および美しいメロディラインなどがいっぱい詰まった魅力的な作品であるのは事実で、このまま埋もれてしまうには惜しいアルバムおよびアーティストがまだまだ存在するということの証になるのでしょうか。 ![]() PAUL KORDA ポール・コーダ"Passing Stranger" 1971 ポール・コーダは66年にレコード・デビュー。フォーク・クラブで歌う彼の仲間にはサンディ・デニー、アル・スチュワート、キャット・スティーヴンスらがいたようです。ロック・ミュージカル「ヘアー」のロンドン・キャストそしてロック・バンド「ダダ」を経由しSSWとして本作を発表。内容はいかにも英国の陰影を感じさせるフォーク・スタイルのSSW然とした作風がほとんどで、すべてが心にダイレクトに響く優しいタッチの作品ばかりです。しかし一方では彼の特徴である高域の発声を充分に活かした"To Love A Woman"でのソウルフルな歌唱も見逃せません。参加したミュージシャンは後にアベレージ・ホワイト・バンドを結成するアラン・ゴリーとオウエン・マッキンタイアそしてマデリン・ベル、アンディ・ロバーツ、クリス・スペディングら。本アルバムはたった12時間で録音とミキシングが行われたと本人が述懐しているわりには完成度も高く、また彼の持つ感性が充分に発揮されている好盤です。
![]() MICK GREENWOOD ミック・グリーンウッド"Living Game" 1971 英国生まれで米国育ちのシンガー・ソングライター、ミック・グリーンウッドの英国に戻って発表したデビュー作品。バックのサポートには、フォザリンゲイのパット・ドナルドソン、ジェリー・ドナヒューそしてジェリー・コンウェイ。またフェアポートのデイヴ・ペグらによる豪華メンバーです。また流麗なストリングス・アレンジメントはトニー・コックス。 アルバム全体を通してポップ・フォーク系の作品がメインなのですが、親しみやすい作風はすんなりと耳に入ってくる曲ばかりで聴き易い作品です。特にジェリー・ドナヒューのギターの音色が心地よい雰囲気です。ラストの曲"Sight"は当時の音楽シーンにおいてのひとつの方向性を示していたシタールやタブラで表現した典型的なインド音楽。いかにも70年代初頭の典型的SSW作品といってもよさそうな感じですが、少々こじんまりとまとまりすぎたようにも感じ取れますがいかがでしょうか。 ![]() BOB THEIL ボブ・ジール"So Far..." 1983 スコットランド出身のボブ・ジールが83年に発表したデビュー・アルバムで唯一の作品。ただし収録された曲自体は1971年〜77年の間に書き下ろした作品とのこと。影響を受けたミュージシャンがアル・スチュアート、ロイ・ハーパー、マイケル・チャップマン、ジョン・マーティンなど、というだけあって声質をはじめ作風においてどこかしら彼らに似た部分があり、かなり興味深いです。特にロイ・ハーパーからの影響は大きいように感じ取れます。 全曲ボブ自身の作品ですが、彼の奏でる12弦ギターのアルペジオやストロークに加えて、ちょっぴりへヴィで艶やかな泣きのE・ギターがひとつのアクセントとなり、また、いかにも80年代的シンセの煌びやかなサウンド・メイクも特徴的です。スコットランドの情景を想い起こさせるような幽玄で重厚なフォーク・ロック・サウンドのなかに、それほど歌が上手いというわけではないのだけれど、彼の素朴で朴訥なヴォーカルがうまく溶け込んで耳に優しいです。
![]() HONEYBUS ハニーバス"Story" 1970 ピート・デロ、コリン・ヘアが在籍したフォーク・ポップ・バンド、ハニーバス唯一のアルバム。シングルで発表した13曲ものボーナス・トラックを含んだ紙ジャケ再発盤は日本初のCD化です。 ピート・デロとレイ・ケインが中心となって67年にデビュー。その後コリン・ヘアらの加入によって数々のヒットを放ちますが、本アルバムを発表する前にピート・デロは脱退。実際、レコーディング後にはメンバーはソロ活動などに入っていたのでアルバム・リリース時には一旦バンドは消滅。71年にはオリジナル・メンバーにて再結成し2作目を録音しますが発売にまでは至りませんでした。 なんといっても彼らの作る音楽はポップでメランコリックで美しいメロディラインと透き通ったハーモニーによる良い曲ばかり。バンドとしては決して成功を収めたとはいえないのかもしれませんが、彼らの作る音楽は今でもキラリと光輝いているのは事実です。 ![]() PETE DELLO & FRIENDS ピート・デロ&フレンズ"Into Your Ears" 1971 フォーク・ポップ・バンド、ハニーバスの立役者ピート・デロの唯一のソロ・アルバム。ジャケットはあのロジャー・ディーン。本作品を聴けば聴くほど、ハニーバスの音楽性というのはピートの作る音楽そのものだという感じが明らかになってきます。メランコリックな佇まい、甘く柔らかなメロディー・ライン、そして英国人にしか作りえない儚さと叙情性のあるポップ・チューンは彼の独壇場。 しかしながら、おそらく彼も当時の不十分なプロモーションの問題ゆえにメジャーになりきれなかったアーティストのひとりだったのでしょう。まさに71年というハードロック全盛時代、ピートの作る美しいポップス調の作品はちょっぴり時代遅れのような感覚で捉えられてしまったのかもしれません。 グループサウンズ風な作品の中にも決して甘さだけに流されない芯のあるフォーク・ロック。室内楽風のストリングスを上手に配したアレンジメント。決して埋もれさせてはいけないアーティストの名盤。
![]() COLIN HARE コリン・ヘア"March Hare" 1971 アルバムジャケットがいかにも英国!を感じさせるSSWコリン・ヘアのハニーバス解散後に発表したデビュー作。本作で彼は作詞、作曲、ボーカルはもちろんのことギター、ベース、キーボード、ハーモニカ等を担当しプロデュースもこなすマルチプレーヤーぶりを発揮しています。 "New Day"のようにもろに英国トラッドを意識したような作風もあれば、米国カントリー調フォークの"Underground Girl"や"Cowboy Joe"など、米国への憧憬(いわゆるイギリスのアメリカですね)の中にも英国的な陰影に満ちている作品ばかりですが、 曲調が至極多彩でこの一枚で彼の音楽すべてが把握できるとは思えません。本作発表後はミュージシャンとしては表舞台には顔を出さなくなってしまったそうで非常に残念です。 シンプルな作風の中にも聴けば聴くほどじわりじわりと味が染み出てくる玄人受けするスルメ的名盤。 ![]() JOHN KILLIGREW ジョン・キリグリュー"Killigrew" 1971 元ハニーバスのピート・デロのプロデュースによるSSW、ジョン・キリグリューの唯一のアルバム。 彼は本アルバムと一枚のシングルのみを残したのみで、セールス面でも特に目立ったわけでもなく、その後アメリカに渡ったりしたのですが78年には交通事故によって惜しくも亡くなっています。 穏やかなピアノのイントロで始まり流麗なオーケストレーションが効いた"Just A Line"や"Yesterday And You"での美しいメロディライン。ホーンセクションとオーケストレーションが艶やかに展開する"John Dupree"のようなドラマティックな構成のバラードなど、秀逸なアレンジによるしみじみとした美しい佳作ばかり。 もう少しシンプルなアレンジでもいいのではないか?と曲によっては思えなくもないですが、聴けば聴くほど「スルメ」のとっても心と耳に優しく、渋いけどちょっと好き嫌いの分かれるところの歌声にも特徴があり、たいへん味わい深いアルバムです。
![]() ANDWELLA アンドウェラ"People's People" 1971 デイヴ・ルイス率いるアンドウェラズ・ドリームがアンドウェラと改名し発表した2ndアルバム。06年にオリジナル・ジャケットにて再発売されました。何はともあれアンドウェラ=デイヴ・ルイスと言い換えても良いほどで、ルイスのソングライティングとボーカルは(そしてルックスも)見事。北アイルランドはベルファスト生まれの彼の作る音楽は米国指向でありながらもやっぱり英国人にしか作りえない哀愁と深い陰影が同居しています。 全曲ルイスの手による作品ですが、すべて名曲ばかりといっても良いほどの完成度です。意外とすんなりと耳に入ってくる心地よいメロディライン。そこに彼のいぶし銀のような渋い名唱がブレンドされてきて、これもまた聴けば聴くほどのめりこむスルメです。一流アーティストとして才能がありながらも何故か不遇な時代も経験したルイスですが現在も音楽活動を続けているとのことで嬉しい限りです。本作はデイヴ・ルイスの才能が凝縮された奇跡の名盤。 ![]() DAVID LEWIS デイヴィッド・ルイス"Songs of David Lewis" 1970 ANDWELLA'S DREAM 〜 ANDWELLAの中心人物であったデイヴ・ルイスが、上記の「People's People」制作以前にソングライターとして自身を売り込むために制作したデモ盤で、当時50枚のみの限定盤だったとのこと。03年にファン待望のいわゆるルイスの1stソロ・アルバムのCD化がようやく実現したわけです。 本作はピアノやギターの弾き語りをメインとしたSSW然とした曲調のなかにオーケストレーションされた曲も収録されていて、限定盤という形態にしては丁寧に作り上げられており完成度も高いです。ムーディーなメロディに乗って彼の男っぽくて渋〜い奥行きのあるボーカルに聞き惚れてしまう、ちょいAOR的なヴォーカル・アルバムに仕上がっています。それにしてもデイヴ・ルイスという人の作曲能力はまさに天才肌で、その心を打つ美しいメロディ・ラインは感動的です。
![]() ROGER MORRIS ロジャー・モリス"First Album" 1971 ザ・バンドの影響が色濃いSSWのロジャー・モリスのデビュー作。05年に待望のCDがリイシューとなりました。生粋の英国人による米国ルーツ・ミュージックへの憧憬でしょうか、やはり「イギリスのアメリカ」です。 ここではジョニー・アーモンド、グレン・ロス・キャンベル、ロッド・クームスやトミー・アイアーといったリフ・ラフ、ジューシー・ルーシーそしてマーク=アーモンド関連の強者たちがバックを盛り上げ、歯切れのいいグッド・ミュージックを聴くことが出来ます。特にトミー・アイアーのオルガンとグレン・キャンベルのペダルスティールは素晴らしい出来。 ロジャー・モリスの作るメロディライン、歌唱は土臭いイメージがいっぱいで一聴すると米国音楽そのもの。しかしながら聴き込んでいくと英国人気質が顔を覗かせ一筋縄ではいきません。 米国ルーツ・ミュージックの土臭さに英国のメローなポップ・ミュージックがちょっぴりブレンドされて出来上がった知る人ぞ知る(?)名盤。 ![]() BRIAN SHORT ブライアン・ショート"Anything For A Laugh" 1971 60年代に活動したハード・ロックバンド、ブラック・キャット・ボーンズのヴォーカリストであったブライアン・ショートが発表したソロ・アルバム。モノクロームのジャケットがとっても印象的。参加メンバーはYESのドラマー、アラン・ホワイトにジェフ・ベック・グループにも参加したマックス・ミドルトンなど。程よい加減のストリングスのアレンジはデヴィッド・カズの演出。 一曲目の"Ring That Bell"で、あのアンドウェラ風味のメロディにブライアンの渋いボーカルが絡まった英国スワンプが炸裂。続く"Emily"は英国の陰影をまともに感じさせるジャジーな作風。AORもフュージョンも、またフォーキーなSSW作品もあり、どちらかといえばなかなか一筋縄ではいかないロック寄りのシンガー・ソングライター作品で、味のあるソングライティングが魅力的です。パワフルなスワンプ作品も、しっとりと歌い上げるバラードも叙情的で湿ったサウンドをベースに彼の味わい深いボーカルが活かされて、アルバム全体のまとまりもよい名作。
![]() RONNIE LANE'S SLIM CHANCE ロニー・レインズ・スリム・チャンス"One For The Road" 1976 ![]() 75年に発表した元フェイセスのロニー・レイン率いるスリム・チャンスの2作目。"ロニー・レイン・モービル・ユニット(LMS)"をバックにしたジャケットからして本作のほのぼの感があふれ出てくるようです。彼は惜しくも多発性脊椎硬化症という病で亡くなってしまいましたが、彼の残した音楽はこれからも時代を超えて伝わっていくのでしょう。 土臭いカントリー・ミュージックにフォークロック色が加わり、ロニーの味わい深いヴォーカルとバンドの演奏は聴けば聴くほど英国の田舎の田園風景が思い浮かべられ、演奏を楽しんでいるバンドのよい雰囲気がダイレクトに伝わります。ロニーの人柄がわかるような、暖かく誰でも気に入るメロディ・ライン、そして郷愁をそそる作風もポイントとなっているようで何度聴いても飽きません。本作は他にありそうでなさそうな、彼独特の優しい音楽的魅力がめいっぱい詰まった傑作。 ![]() DUNCAN BROWNE ダンカン・ブラウン"Give Me Take You" 1968 繊細で穏やかなメロディラインが印象的なシンガーソングライター。本作は彼のデビュー作品でしたが、所属するイミディエイト・レーベルの放漫経営によってセールス面においては不発に終わってしまいました。 その後、別レーベルに移り2ndアルバムを発表したり、メトロというポップ・デュオユニットにより広く世間に知られるようになり、ソロに戻っても数枚のアルバムを作成。メディア関係等でも仕事を続けていたのですが、癌に侵され闘病生活の後、残念ながら93年に46歳でその短い生涯を閉じてしまいます。 本作は01年に紙ジャケットにて待望のリイシューとなったわけですが、クラシカルなイメージのジャケットから想像できるイメージそのままに、彼の爪弾くガットギターの円やかな音色とたおやかで郷愁に満ちあふれた歌声、そして美しい楽曲。まさにこれらが見事に調和して完成された一級品の一枚。
![]() AL JONES アル・ジョーンズ"Alun Ashworth Jones" 1969 フォーク系SSWのアル・ジョーンズのデビュー作。本作のCDリイシュー盤はオリジナルに加えて未発表曲やライブ音源を含めた26曲入であり、とても魅力的な1枚ですが(私的にはオリジナルのままでよかったのに)。 主にギターの弾き語りに加えて、フルートやバイオリンの音色が自然に絡み合って彼の飾り気のない素朴な歌声が妙にたおやかな気分で心に染み入ります。これといって上手い歌ではないのですが、陽だまりの午後のゆったり気分が味わえます。反面、ライブでの彼はフォークにとらわれない幅広い音楽性を披露。これがまたバラエティに富んだ選曲で、プレスリーやトリニ・ロペスの曲を演奏したりしています。収められたライブ音源はあの有名なレ・カズンズにおける録音で、また、サンディ・ロバートンが主宰するセプテンバー・プロダクションの作品とくれば、それだけで内容は間違いなしだと思います。 ![]() THE HUMBLEBUMS ハンブルバムズ "The New Humblebums / Open Up The Door" 1969,70 ビリー・コノリーとタム・ハーヴェイによって結成。本作はタム・ハーヴェイに代わりあのジェリー・ラファティが加入して発表した"The New Humblebums"と"Open Up The Door"の2in1CDであります。ジェリー・ラファティといえば「霧のベーカー街」の大ヒットで有名ですが、その彼の音楽的ルーツがここにあるようです。アコースティック・ギターに木管楽器なども使ったまさしく英国フォーク的世界が展開されますが、単なるフォークというジャンルに収まらずにジェリー・ラファティのメロディ・メーカーとしての才能が充分に発揮されています。しかしながらこの二人の音楽性には若干のズレ(?)があるのか、アルバムとしてのまとまりに欠けているような気がしないでもありません。ビリーは後にコメディアンとしてTVで活躍、一方のジェリーはスティラーズ・ホイールを経て、ソロ活動・・・と、それぞれ別な道を歩んでいったのは納得。(ジェリー・ラファティについては↓)
![]() GERRY RAFFERTY ジェリー・ラファティ "Can I Have My Money Back?" 1971 "グラスゴーのマッカートニー"、ジェリー・ラファティによる初ソロアルバム。いかにも英国的で特徴的なジャケットイラストはハンブルバムズ〜スティラーズ・ホイールと長い付き合いになるパトリックによるもの。 ハンブルバムズ時代からラファティはポップなメロディ・メイカーとして評価されてきましたが、相方であるビリー・コノリーとバンドにおける方向性の違いから袂を分つことになってしまいます。 その後ソロとして活動を始めたラファティ。満を持して発表した本作こそが彼の魅力を100%発揮した最高傑作と云えるのではないでしょうか。 アレンジにおいては荒削りな面もありながら、彼の出身地であるスコットランドの爽やかな風を運んできてくれるようで作風は意外とシンプルでフォーキーな曲も多い。叙情的で優しく響く独特の歌声と豊かなポップ・フィーリング満載で彼の溢れる才能を十二分に楽しめる傑作です。 ![]() PENTANGLE ペンタングル"Cruel Sister" 1970 フェアポート・コンヴェンション、スティーライ・スパンと共に英国フォーク・ロック&トラッドにおいて重要な位置を占めるペンタングル。 彼らについては、ほとんどのアルバムを未だ聴いていないので語るにはおこがましいですが、一聴してわかるのはメンバーそれぞれのテクニックは群を抜いており、アルバム構成においてもハイテンションを最後まで維持し続けているような感覚を持っていることです。 バート・ヤンシュ、ジョン・レンボーン、ダニー・トンプソンという英国フォークシーンにおいての一流ミュージシャンを従えて、ジャッキー・マクシーが渇いたボーカルを聴かせてくれますが、今思えばペンタングルというバンドはこんなすごいメンツが揃っていたのか!と改めてびっくり。 本作は名盤の誉れも高く、18分以上もの大作である「Jack Orion」も素晴らしいですが、アカペラで歌う"When I Was In My Prime"は聴かせてくれますね。
![]() BERT JANSCH バート・ヤンシュ"Rosemary Lane" 1971 LPを購入し運良くリアルタイムに体験したバート・ヤンシュの「Rosemary Lane」。どうしようもなく英国している本作はトラッドを基盤とするその素朴で湿っぽいメロディと彼の口ごもったような独特の歌唱法が聴くほどに惹かれてしまう一種独特の不思議な魅力があります。アレンジされたトラディショナル・フォークソングからの楽曲はもとより、彼のオリジナル曲もトラッド風味いっぱいの心に染みる曲ばかりです。 バート・ヤンシュはジョン・レンボーンと並んでペンタングルの中心人物であり、その卓越したギター・テクニックが大いに注目されるのですが、それだけではなくトラッディショナルミュージックを本格的に追究した素晴らしい雰囲気と表現力を持ったひとりのヴォーカリストでもあり、そういうトータルな形で捉えなければいけない英国フォーク&ロック最重要人物のひとりであります。 ![]() JOHN RENBOURN ジョン・レンボーン"The Lady And The Unicorn" 1970 バート・ヤンシュと並びペンタングルにおける二大ギタリストのもう一方の雄、ジョン・レンボーンが70年に発表したインスト・アルバム。 彼の紡ぎ出す音楽は英国トラッドはもとより、ブルース、ジャズ、クラシックにまで及ぶ広範囲にわたる音楽性がベースなのですが、本作品においては中世ヨーロッパにおけるルネッサンス期の古楽をレンボーンなりのフォークサイドからの解釈によって発表した作品となっています。 彼のギターはもちろんのことですが、トニー・ロバーツとレイ・ワーレイのフルート、レン・ニコルソンのコンサーティーナ、ドン・ハーパーのヴィオラ、そしてデイヴ・スウォブリックのバイオリンが冴え渡りいろどりを与えています。タイトル曲の"The Lady And The Unicorn"、トラッド曲では"Scarborough Fair"や"My Johnny Was A Shoemaker"など、本作品はアコースティック・ミュージックの美しさを十二分に堪能できる傑作アルバムです。
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