2003.12.2より



NO.11:UNICORN 『PANIC ATTACK
        
  1.I’m A Loser        6.シンデレラ・アカデミー
2.HEY MAN!          7.サービス
3.SUGAR BOY          8.ペケペケ
4.抱けないあの娘          9.She Said
5.FINALLY             10.眠る
   11.ツイストで目を覚ませ
 “ユニコーン”は言わずと知れた、奥田民生率いる実力派ロックバンドとして、80年代後半〜90年代前半までの活動を駆け抜けていったバンドです。とか言っても、もう知らない世代がでてきてるんでしょうなぁ。民生は初めっからソロってわけじゃあないのですが。元は広島中で「プロ」を目指すために各アマチュアバンドから選り抜きで集められた連中でした。結成当初のメンバーはボーカル・奥田民生、ギター・手島いさむ、ベース・堀内“EBI”一史、ドラム・西川幸一、キーボード・向井美音里という構成で、結成してすぐのソニー・オーディションにて賞を獲得してそのままメジャーデビュー、という絵に描いたような好スタートをきったのでした。
 1stアルバム『BOOM』の時点では、当時勢力を伸ばしつつあったビート・パンクの要素の中に、アイドル的なポップセンスが混じったもので、まあ確かに「ロックバンド」でありました。個人的には、この時代の“ユニコーン”も結構好きで、「Maybe Blue」なんか高校時代よく聴いてました。元々、早いテンポのロック・サウンドが好きな人間ですので。まあ、本人的にはそういったルックス的バンドに入れられるのがイヤだったようで、楽曲作りにおいても次第にひねくれたポップセンス、格好に囚われないユーモラスさを見せつけるようになっていきました。その過渡期の作品がこの『PANIC ATTACK』であります。
 音楽的には前作のストレートなロック加減は少々鳴りを潜め、変わりに実力があるからこその「おフザケ」を見せていったものになっています。1.などはシングルカットしそうなマジメ路線ですが、それ以降は歌詞も妙に変わっていき、良い意味で“その他大勢”にはならないバンドとなっていったと思えます。やっぱり、奥田にはポップセンスがあったんでしょうなぁ。3.の「SUGAR BOY」は元々普通のスタンダードなラブソングとして歌っていたものが、どういうわけか本作に納められているものはホモの恋愛が対象の歌詞になってたりしてます。今ではその“スタンダード・バージョン”は昔のライブ音源、もしくはビデオ『MOVIE(DVD化もされている)』に収められているものでしか聞けません。こっちの方もカッコいい歌詞ですが、やはりメロディラインがキレイなのが一番耳に入ってくる部分です。
 「抱けないあの娘」は太ってしまった彼女の嘆きながらも、頑張って痩せようとする話ですし、ペケペケ」はEBIがキレイなボーカルを取っている名曲ですが、男の感情を歌うEBIとは対照的に民生が女の感情をフザケテ歌ってたりしてます。プロモーションビデオも傑作で、何故か温泉地で歌う連中。民生は直立不動で温泉の中に倒れこむわ、訳のわからん宴会場で、馬の上に乗って歌ってたりしています。まだ試行錯誤の途中ながらも、彼らが様々なエッセンスを詰め込んだ、マジメでオモシロイ「世界に一つしかないバンド」を目指そうとしたことがわかります。後のシングル「働く男」のプロモーションビデオで、裸の女が出まくる中を歌う、という行為を行ってるのもその一環なんでしょうなぁ。こうしたオモシロエッセンスがボクは好きなんです。
 個人的なイチオシ名曲は5.の「FINALLY」。心に染みるメロディのバラードです。高校生の時分にカラオケで歌おうと思ったら、入ってなかった記憶があってガックシきたものです。今だったら、探せばあるかもしれませんねぇ。“ユニコーン”の曲って、結構カラオケに入ってますからね。とにかく、ちょっと80年代の香りがするこの曲のためだけに聴いてみてもらってもいいぐらいですから。
 今でも話題になる曲っていうのは、今聴いてもまったく「色褪せていない」曲なんですな。つまりは時代に負けていないんですよ。80年代って言うのは、そういう曲がゴロゴロ出来てきた時代だったと思います。まあ、60,70年代ももちろんありましたが。この80年代の特徴は、やはり“バンド”によってそういう音楽が作られ、残されていったことなんですよ。この“ユニコーン”しかり、”ジュンスカ”しかり。
 “ユニコーン”の音楽は自作の『服部』で完成したのだと思います。自分達がどういう道を選んで、どういう方向に進んでいくか、そういことがわかったのだなぁ、と。実際、民生のやりたいことも、この時代とそうは変わっていないと思いますよ。後期の“ユニコーン”は確かにソロの民生色が出ていたし、それとはまた別にバンドメンバーそれぞれの色も混ざり合ったものになっていきましたから。今でもレンタル屋にCDは置いてるでしょうし、中古屋でも結構売ってるので比較的簡単に手に入ります。ここはゼヒとも、聴いてみてくださいな。


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