2004.1.23より



NO.16:あぶらだこ 『あぶらだこ
        
1.FARCE          6.ダーウィンの卵
  2.260            7.ティラノの非告知
3.ROW HIDE        8.BUY   
4.象の背           9.PARANOIA
5.生きた午後        10.翌日   
 さて、新年2発目は“あぶらだこ”。パンク、プログレ好きが泣いて喜ぶバンドです。パンクだとかハード・コアだとかいう一方的なジャンルの分け方がまるで通用しないそのサウンド、あらゆる音楽の要素をごった煮にして、さらに上からカッターやドリルで穴だらけにしてしまったような。歌詞に至っては、哲学的でもあるしあまりに有意味、あまりに無意味とも言える。
 メンバーはボーカル・ヒロトモ、ギター・イズミ、ベース・ヒロシ、ドラムは次期によって異なり、オリジナルメンバーはその後“ラフィン・ノーズ”へ加入するマル。ライブの早さにも定評があり、早ければ30分くらいで終了してしまうことも多いそうな。実際、この超スピードな演奏とボーカルを2時間、3時間と続けることなど不可能でしょう。もっとも、そのライブでさえ多くはやっていません。バンド自体は83年に結成、“ザ・スターリン”のタムが主催していたADKレコードよりソノシートを発表後、メジャーから出た『グレイト・パンク・ヒッツ』に“ラフィン・ノーズ”らとともに参加したことで一気に知名度を獲得、86年に徳間ジャパンからメジャーデビューしました。89年に活動を停止、しかし元々商業戦略に載って活動するでもなく、まるで思いつきのようにアルバムを発表してきたバンドであるだけに、「解散」とは誰一人として捉えてはいませんでした。そしてその認識が正しいかのごとく、96年に復活、今現在でも水準の落ちることの無い、いや、むしろ深化を続ける一方のサウンドを披露しています。マーペースな活動は今でも変わらず、1年の内にライブは数回あるだけ、新作発表になると、もう何年待たされるか、という状況となっています。それでも彼らのファンが絶えないのは、そのサウンドが普遍性を持つからであり、1度聴けばなにかを考えないわけにはいかない、素通りの出来ないものであるからだと思います。
 この盤は86年のメジャー・デビュー作。まだハード・コアのイメージを強く残してはいますが、ただ絶唱するだけに収まらない強いエネルギーが溢れ返っています。いや、溢れているのではなく、聴く人間を今か今かと待ち構えるような、そんな深みの中に沈殿している、と言った方が正しいのかもしれません。アルバムの殆どは、今現在でも新品で入手可能なので、タワーレコード等を覗いて探してみてください。この盤に限らず、どれも名盤揃いです。中途半端な賞賛の言葉はチープになるばかりなので止めておきますが、とにかく、一度聴いたときの衝撃は他に類を見ないものになっています。普通のロックに飽きてしまった人、音楽業界を見限っている人、アンダーグラウンドの中にはまだこういった才能が眠っているのかもしれませんよ。


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