2004.1.24より



NO.17:木魚 『幸福の条件
        
1.木魚のジ・エンド          10.ちびくろサンボは空の雲  
2.疑惑                   11.駄菓子屋無残  
3.幸福の条件 T         12.成長(幸福の条件 U)
4.新宿三丁目             13.悲劇(時の流れに)
5.叫び                 14.木魚の紫のけむり
6.東京大飯店                15.虚像           
     7.東京大飯店・カラオケ   16.駄菓子屋無残(ANOTHER VERSION)
      8.そして私は           17.成長(幸福の条件 U)<RE−MIX>
 9.ラブ・木魚            18.ラブ・木魚<RE−MIX>
 日記のネタが無いので、こちらを更新。音楽サイトか? ここは。やたらハイペースな気がするのはご愛嬌。今まで目標にしてた更新ペースが全然守れてなかったから、ホントはコッチを毎日やりたいだけなのです。小説も書かねばならんのですが、このサイトに関して言えば、さっさと過去作品をまとめて収録しろ、といったところでしょうか。アレもコレも、と手を広げるのは疲れますな。
 そんなグチは置いといて、ナゴムレコード発の“木魚”です。木魚ってのは、お坊さんが使うあのポクポク叩くやつです。まあ、インディーズブームが到来する直前、80年代初頭なんてのはこうしたミョ−な名前のバンドは山とありました。それを披露してるとページ数だけが進んじゃうので辞めといて。“木魚”は結成が83年、ボーカル・ツネヲ、ギター・カイシュウ、ベース・ニャンコ、キーボード・ベラがオリジナルメンバー。キーボード担当のベラは、後に“筋肉少女帯”に加入、電動ノコギリでギターを切ったりと、ハードコアなライブ・パフォーマンスを行っていました。現在はオーケンも在籍するアングラ・ロマンバンド“電車”のリーダーとして、趣味丸出しのアルバムを作ったりしてます。ベラ脱退後は、首から太鼓を下げて客席をうねり歩く担当のシンタロウが加入することでメンバーがほぼ固まります。後期にはドラム担当ではっちゃきが加入しますが、基本的には4人編成でライブを行っていました。音楽性は限りなく暗く、リズムボックスにベースの音が重なり、アコースティック・ギターを掻き鳴らす、と見事に暗め。しかし歌ってる歌詞の内容は果てしなく意味ナシ、もしくは人を食ったようなユーモアが漂っているようなもので、暗さと明るさが同居というか、渾然一体となってしまった歌ばかり。まさしく、ナゴム系統のバンドと言うことが出来ます。ボーカルのツネヲのMCは観客をバカにしまくったり、いきなり踊りだしたり、怒ったりとまともにはなりません。そのパフォーマンスが原因となってライブでケンカになることも、たま〜にあったそうな。バンドのスタイルは全員工員服やら柔道着やら、女物の着物(つまり、えりが逆)を着込み、ツネヲはややパジティブ・パンク系統のメイクをしていました。彼自身、80年代ポジパンは好きなようで、ライブもよく見に行っていたそうですし、その影響でしょう。ボクの持ってる『ナゴムレコードの黄金時代』というライブビデオには、お決まりであった着物ではなくてロングコートに目を際立たせたメイク、コートを脱げばキレイに切れ目の入ったシャツ、と遠めから見れば及川光博にソックリでした。近くから見れば当然違うんですが。そんなカッコいい見た目とは裏腹に、歌っている曲は「アンパンにはアンが入っているのに うぐいすパンにうぐいすが入っていないのは なぜ なぜ なぜ なぜ なぜ〜」の「疑惑」とちょっとアレです。その違いがまた、違う意味でカッコいいと言えばそうなのですが。
 84年にLP『幸福の条件』をリリース、 86年にはソノシート『大明神』をリリース。演奏から歌、MCまでをもテープのカラオケでライブをやってしまうと言う奇抜が売りのバンドでしたが、87年ごろから楽曲のコミカルさやパフォーマンス性をなくし、シリアスなバンド携帯にシフトチェンジをしていきます。ツネヲ曰く「やっぱり若いから、カッコつけたかったんじゃないの? 笑われるだけは嫌だ、とか」とのこと。活動的にはこの直後からツネヲが他バンドで活動を始めたために停滞することになります。ナゴムで予定されていたEPも結局発売されず。しかし、この頃の“木魚”を知る人によると、ライブのカッコよさは尋常ではなかったとのこと。音源が存在してないのが実に悔やまれます。当時のツネヲは“筋少”の本城、太田らと組んだ“T−ZONE”、クラブミュージック・バンドであった“アルルカン”の本橋ソイネ、はっちゃきやベラらと組んだ“スペイン”と言った他バンドがありましたが、これらの音源化もされてはいません。是非とも聴いてみたい……。
 本作はそんな“木魚”の発売された音源をCD化したものです。盤の絵をクリックすると『幸福の条件』と『大明神』のジャケットを見ることが出来ますよ。前述した歌詞がシュールな「疑惑」、しかし『大明神』収録のリミックス・バージョンの本曲は力強く、かなりカッコいいです。「新宿の七色仮面」の言葉もコミカルな「新宿三丁目」、“ドアーズ”のカバーである「木魚のジ・エンド」、同じくギターの神様、ジミ・ヘンドリックスの「パープルヘイズ」もカバーされています。本来の楽曲と比べると、さらに暗くアレンジされちゃっています。最後の3曲はほぼ新録。ハードコアのような17.やテクノ・リズムが炸裂する18.など秀逸。
 元々“木魚”は「何か面白いことをやろう」という考えの元に結成されたんだそうです。80年代、まだお笑い芸人がいきなり世に出れる時代でもなく、表現衝動を抱えた殆どの人間はライブハウスにその発散の場を求めていたのでした。現在のインディーズ・シーンでは殆どが“ブルー・ハーツ”を基調とした「青春パンクス」になってるような気がします。少なくとも、メジャーにいける音楽とはそう言うものなのでしょう。企画性の高いバンドや、お笑い中心のバンドではあまり客も入ってこないでしょうしね。ライブハウスが出させてくれませんよ。だからこそ、ブームの中で”本気なファン”を獲得することは無かったのかもしれませんが、こうした音楽を数十人の観客の前に疲労できる80年代は羨ましいんですね、ボクにとっては。まあ、”ニューロティカ”とかは今でも頑張ってるのだから、一概にそうとは言えませんが。CDはネット通販でなら、新品を置いている所もあります。比較的新しいもの(92年発売)なので、中古屋にもあるかもしれません。それにしても、新古書店とかでのCDは高いような気がするんですが、ボクだけでしょうかね?


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