2004.2.27より



NO.19:angie 『Angie’s Life
        
1.センチメンタル・ストリート                   11.マグマの人よ(HISOKA)
2.天井裏から愛を込めて                     12.すべての若き糞溜野郎ども
3.アストロボーイ・アストロガール                   13.ゆきてかえらず    
4.わいわいわい                           14.しあわせのしずく
5.掃き溜めの街で歌い始めたチンピラ達の新しいメルヘン  15.夜中の3時のロマンチック
6.素晴らしい僕ら                          16.君が忘れた大きなもの
7.銀の腕時計                             17.ミミズ     
8.蝿の王様                              18.でくのぼう   
  9.遠くまで                              19.猛き風にのせて  
                                     10.ナイタラダメヨ
 ハイ、思い出したので“ザ・スターリン”は置いといて、懐かしの“アンジー”でやってみたいと思います。相も変わらずバンドブーム期のバンドですがね。“アンジー”は80年に博多で結成、メンバーはボーカル・三戸華之介、ギター・中谷のブースカ、ベース・岡本様ひこ、ドラム・藤井がちゃ彦の4人編成。地元で高い人気を誇り、86年にファースト・アルバム『嘆きのバンビ』を発表、東京にも名を知られるようになり、上京後には宝島社を母体としたキャプテン・レコードから作品を発表、知名度と動員は急上昇し、折からのバンド・ブームに乗って88年にメジャー・デビューを果たすことになります。そのサウンド自体は明るいビート・パンクながらも、三戸の書く歌詞は難解、シニカルで文学性が高く、当時は頭でっかちなファンに多く指示されたものでした。とはいっても、バンド・ブーム期にはどのようなバンドにも、本来損バンドが持っていた音楽性に共感してファンになった人よりも、ブームに乗って騒がれているモノにはすぐに飛びついていったミーハーなファンの方が多かったものですからね。それがバンドの方向性を変えて寿命を縮めることもあったし、逆にその流れを利用して、人気を取った挙句に解散してしまうバンドもあったりしました。まあそういう時代であったからこそ、アングラっぽいのもそうでないのも、シーンの真ん中で自己を表現できる機会を手にすることが出来たとも言えますが。
 それで“アンジー”と言えば「ポコチン・ロック」です。まあ、バンド・ブームの中でもそれぞれのバンドが独自性を出して、シーンの中から頭一つ出ようとしていたころでしたから、ボーカルの三戸がMCで「我々の音楽は、あえて言えばポコチン・ロックです!」みたいなことを言ったのも頷ける話ではあります。ま、言った本人もここまで大事になるとは思ってなかったらしく、逆にそのことに縛られる危険性も出て来ていたのでした。ポコチン・ロックに分類されていたのは、中心バンドとして“アンジー”と“レピッシュ”の2バンド。そして1軍にトモフスキーの“カステラ”、大槻ケンヂになぜか“バクチク”、“POGO”まで入っておりました。2軍には“電気グルーブ”前身の“人生”や“マッド・ギャング”、教育リーグに“スカンク”と言った連中、果てには長嶋一茂(表記は長嶋Jr!)、ヒゲとボイン、ダンドリくんともはやわけのわからない組織図が日夜「バンドやろうぜ」編集部内で更新されていたのでした。もちろん、殆どの人間はただ勧誘されただけの友達連中で、まあ真面目に派閥を作ってやろう、という気概を持っていたバンドは殆どいなかったのでした。あったのは、「下らないことを精一杯やる」ということだけ! ただそれだけを残して、ポコチン・ロックはわずか半年程度で提唱者自らの手によって「閉幕」となったのでした。
 ポコチン・ロックの実体は? “アンジー”の三戸華之介はこう言いました。「カトちゃんの『ちょっとだけよ』と同じですよ」と。つまり、単なるネタだったんです。言い出した根底には、当時のストレートなビート・パンクに入りきれない、フォークさながらの捻れた音楽性を持つ“アンジー”と、ジャンルとしてはまだ未定着であったスカ・パンクの“レピッシュ”が時代に向けた強烈なアンチテーゼでもありましたが、その小さな心意気はあまりに多くのファンの力によって、見事に偶像化していきました。まあ、当事者本人がそのことを一番よくわかってブームの肥大化を防いだのは彼らの理解度の高さを示したものですが。その部分が妙になったのは「ビジュアル系」っていうジャンルじゃないでしょうか。ただ化粧をして、音楽的にはポジティブ・パンクからメタル系まであった音楽性が、90年代後半には「ビジュアル系」の言葉で括られることになったのだから不思議なものです。だってそういう音楽は無いんですから、ねぇ。
 “アンジー”は92年に活動休止、99年と2002年には復活ライブも行っていますが、現在三戸華之介は水戸華之介と改名して、“水戸華之介&3−10chain”として活動。メンバーにはベースに“筋少”の内田雄一郎、初期には元”ゴーバンズ”の森若香織も参加しておりました強力バンドです。他にソロもやっております。“アンジー”のオリジナルメンバーはまだ水戸の近くにいるので、いつか本格的な結成があるかもしれませんな。このCDもその流れの一つのようなもので、99年発表の新しいベスト盤。彼らの代表曲が1枚に込められた作品であります。特に代表曲「天井裏から愛を込めて」の衝撃たるや、今でも忘れられません。単純なビート系バンドに終わらない音楽を是非とも聞いてほしいものです。どうですか?