2003.10.28より



NO.7:カステラ 『世界の娯楽
        
1.夜明け              8.ヤダヤダ  
2.太陽テカテカ           9.ビデオ買ってよ 
3.軽くなる          10.頭の輪あるいいヤツ
4.やすくなる            11.セミの唄   
5.アイマイ家族       12.夜更かしは出来ない
6.歯が抜ける        13.体力に限界はあるのか
7.お天気おじさん           14.ワガママ  
                 15.温室育ち
 今回は二つ更新しますよ。一つ目は“カステラ”のデビューアルバムをば。
 “カステラ”は現在宅録的なことをやってるトモフスキーこと大木知之をボーカルとしたロックバンド。でも、妙にロックらしくないことをしようとしてたロックバンドでした。レコードを出したのは恐らく、ケラのナゴムが最初。前回ご紹介した『おまつり』ですね。曲自体はビートの効いた、早いロック・サウンドなのに、歌詞はやたらどうでもいいことばかり。「定期が切れちゃってどうしよう」とか「お別れの記念にビデオを買ってよ」とか。日本の音楽、特にフォークソングではよく自己の日常性を歌い上げたりはするんですけど、それだってもうちょっとロマンチック。加えて、ロックのテーマと言うのが「自己の否定」にあるものだから、規制の音楽観とは全く離れた所にある音楽なのでした。
 でも、90年代も過ぎ、2000年代となってる今じゃ、自分の意味無い日常を歌い上げるなんてそんなに珍しいものじゃあありません。80年代後半のバンド・ブームの中には、「他人と違うことをやろう」と模索する連中が溢れていて、そうした成果が今日のハウス・ミュージックやサンプリングの手法を一般的にさせているものだと思います。“カステラ”は結成した時からロックの概念とは離れたことをやろうと考えていたようで、名前の由来もそういう部分から来たようです。実際問題、“カステラ”なんて名前だとポップ・ミュージックみたいですもんね。
 とはいえ、その人気はかなり高かったらしく、86年に結成し、88年に『おまつり』参加、89年にはインディーズでは快挙となる日比谷野外音楽堂でワンマンライブを成功、同年メジャーデビューと、とんとん拍子な出世を遂げることになります。しかし93年「飽きたから」というとんでもない理由で解散、メンバーはソロや新しいバンドを作ったりするわけですが。
 今聴きなおしても、早いリズムに大木の甲高い声が被さって、実にカッコイイ。ケラが呼びたくなったのもわかるような、どこかポップなセンスがあちこちに見えてきますよ。ちょっと中性的な少年がパーカーにベレー帽というポップすぎるファッションで歌ったら、ビタリとはまります。特に「ビデオ買ってよ」の年下ぶりがまた、カワイイ。カラオケで歌ったら、女性陣に爆笑されました。声に特徴あるボーカリストって、それだけでもうバンドの特徴にもなり得るものですからな。今ではCDが廃盤になってるので入手は中古屋でもない限り難しいのですが、見つけたらぜひ買って聴いてみて下さいな。
 声と言えば、かの“真心ブラザーズ”の桜井秀俊が早稲田大学時代に、テレビのフォークコンテスト出場の打診が所属してた軽音楽部に届き、その際「声に特徴がある」ということで、倉持陽一か同じ部の大木知之のどちらを誘っていくか、最後まで悩んだそうな。一歩違ってれば、トモフスキーが桜井と一緒に“真心ブラザーズ”をやってたのかもしれないのだ。人生と言うのは、どう転ぶかわからないものですな。


   back to box………