『闘え、チーターマスク!』   司条冴





やあ、よいこのみんな! オレの名は正義の味方、って言うか、正義のベビーフェイスなプロレスラー「チーターマスク」だぜぃ! つぶらな瞳とちょっと控えめな三角筋がチャームポイントなシャイなレスラーなんだ。覚えといてくれ。今日はオレが所属する「筋日本プロレスリング」での試合をリポートさせてもらうぜ。いつもアツイ、パツパツでムチムチなプロレスを展開している、日本でも指折りの会社なんだ。そこんとこチェックしといてくれよな。

 ちなみに、今日のオレの試合はタイトルマッチなんだぜ! そう! 苦節5年。ついに念願のチャンピオンシップだよぉ! 思えば、苦難の連続だった。海外での修行も、ロサンゼルス、メキシコ、ブルガリア、果ては北朝鮮なんてやばい所まで行っちまったが、そんなオレもついにベルトを巻くときが来た! 今日は後輩連中を引き連れて飲みに行くとするかぁ! おおっとぉ、ちょいと浮かれすぎてたな。まあ、オレの実力ならば試合はもらったようなもんだぜ。うし! 前座の試合も終わったことだし、リングサイドでオレの試合でも見学しててくれ。ちっ、花束なんて持ってくるなよ? 照れるじゃねェか。なんたって、今まで最高4人と………おっと、今のは聞かなかったことにしてくれ。ヒーローにスキャンダルは似合わないぜ。フッ。なんせオレは、みんなの心に残りつづけるヒーローなんだからな。よぉし、オレのテーマ曲がかかったぁ! いざ出撃だぜ!

「おおっと、どうしたチーターマスク、チャンピオンのザ・ライオン丸の前に防戦一方! このままでは、日本にベルトを持ってくると豪語した発言はどうなってしまうのか!? ああっと、ザ・ライオン丸がチーターマスクのマスクに手をかけた! このままでは覆面がはがされてしまうぅ!! チーターマスクがんばれ!」

 クッ、オレ様としたことが! チャンピオンのライオン丸はなかなかに強いぜ。やっぱ、敵の資料ぐらい見とけばよかったかなぁ。余裕かましすぎて、まったく敵に対する対策、立ててなかったからなぁ。その上昨日なんて、ベルト取りの前祝いだなんてキャバクラに飲みに行っちまったし、そこにいた「ミィちゃん」なんて言う姉ちゃんといいムードになっちまって、そのままホテルへGO―しちまったからなぁ。昨日は朝までサイコ−だったぜ………なんて、試合中に何考えてんだ? そんなことよりも、こいつを倒す方法を考えなくては! 今までさんざん仲間うちで大口叩いてきちまったんだ。ここで負けたら、奴らに何て言われるか! ここで負けるわけにゃいかないんだよぉ~~

「おお! チーターマスク、チャンピオンのフォールを返しました! ああ、しかし、すでにその足元はフラフラ! このままチーター、負けるか!?」

 くそったれ! このままじゃあ負ける! なんか一撃必殺で逆転満塁ホームラン並に勝てちまう超ウルトラミラクルでセクシーなオレ様好みの必殺技はねぇのかよぉ!? ハ! いかんいかん。レスラーたるもの、そんな安易に漫画みたいなことに頼っちゃいかんぜ。頼りになるのは、この肉体ただひとつ! と言ってるそばからグハァッ!!

「ああ! チャンピオンのドロップキックが炸裂――!! そしてコーナートップへ! これはチャンピオンの必殺技のフライング・ボディプレスか――!」

 グウ、いかん。こいつを喰らってはさすがにマズイ。だ、だが、体が動かんぜ。ぐわぁ! さ、さすがに90キロ台のプレスは効くなぁ。こ、このまま俺は負けるのか。負け犬になっちまうのかよ………。

「チーター! 返せ! 返すんだ!」

 こ、この声は、社長? 社長の声が聞こえるぜ………。聞き違いか? いや、違う。これは、社長の声だ!

「2! カウント2,9! チーター、かろうじてカウント3を免れました! 果たして、ここから秘策はあるのか!? リングサイドには、筋日社長のバンドエイド下着も来ております! 会社一丸となって、ジュニアヘビー級初のベルト取りに期待しているのです! ガンバレ、チーター!」

 うう、下着社長も来てくれるなんて。こ、ここはなんとしてでも勝たなくては! ここで勝った暁には、特別ボーナスもでるに違いない! そうすれば、もう一度キャバクラ三昧が………ち、ちがうちがう! 今はそんな雑念を切り捨てて、試合に集中しなければ! 昨日の彼女達はすでに電話番号をひかえてある! また何時でも呼び出せるぜぃ! よし! ここは未完成だが特訓中の必殺技を出すという設定にしておこう。 なんたって、ついさっき「必殺技を唐突に出すなんて、なんて漫画チック(はぁと)」と言ってしまったばかりだからな。しかしここは劇的に勝つことが大事だ。遠慮なくこの技を使わせてもらうぜ、チャンピオン! その名も『フジヤマ・ベリーナイス・スーパースタータイガー・ドロップ・ホールド』だぁ! ちなみに名前が長いって方は、通称『フジベリ・タイガーホールド』と呼んでくれ。さりげなく『タイガー』を略さないのがミソだぜ。ついでに形のほうだが、バックドロップとジャーマンスープレックスとカナディアンバックブリーカーとカニばさみと恥ずかし固めと空手チョップを足して4ぐらいで割って2足したもんだとしてくれ。いちいちそういうことを説明してたら時間が足りないからな! まずはキメるタイミングだ!

「チーター、ローキックの連発でチャンピオンを追い詰めます! これは何かの作戦か? おお、コーナーに詰まったチャンピオンに、チーターが襲い掛かる――!」

 これだ! ここしかないぜ! オレ様の超必殺技(って、大抵そこまですごいってもんじゃないんだけどねぇ)の出し時は!

 グワッッッシャア〜〜〜〜〜ン!!

「うおお! これは、チーターの新必殺技か――! あっと、そのまま固めてる! 1,2,3―――!! 入った3カウント―――! ここに新チャンピオン誕生―――!!」

 や、やったぜ社長! 後輩、同期のみんな! これで今日はキャバクラでパーティーだ! おめかししてこいよ。

「よくやった、チーター。これでお前もチャンピオンだ。立派なレスラーになれよ」

「お、押忍! 自分はこれからもガンバルッス! 今日は応援ありがとうございマッス!」

「ダァッシャッ!! コノヤロウ。次の試合も気合入れてやれよ、コノヤロウ」

 バンドエイド下着の世にも聞こえた鉄拳が、気合入れのためにオレに入ってくる。相変わらず本気で殴るんだからまいっちゃうよ。しかし、今日はそれ以上に嬉しいぜ! これで明日からオレのファンは3倍は固い! オット、そこのお嬢さん、祝福の花束なんて野暮なことは言わずに、今日は一晩どうだい? ベッドの上でも冴え渡る、オレの空中殺法をお見せできるぜ!

 何てな。今日のオレの試合は楽しめたかな? というか、楽しめないわけが無い。なんたって、このチーター様の試合だ。ファンの女の子なら股を濡らす位喜ぶはずだからな。言っとくが、こいつは比喩だぜ。実際にそういう意味って訳じゃないんだからな。いや、ホントに変な意味じゃないんだ。それだけは言っとかないとな。ちゃんとレスラーたる者、道徳ってやつを考えないといけないぜ。フッ。大人ってのはつれぇなぁ。オレももうちょっと若けりゃ無茶したのによ。最近は色々と世間体とか考えちまってよ。汚くなっちまったもんだぜ。

 チッ。愚痴っぽくなっちまったんで、おれはファンの女と第2ラウンドといくぜ! オレ様のチャンピオンロードはまだまだ終わらないからな! 続くかもしんないってことだ。じゃ! そん時はよろしくな! 彼女! マスク脱いでって、オレは被ったプレイが好きなんだよぉ!

 

   …戻る?