『僕がはじめてエロ本を買った日』 安田献辞
二〇代
ついこの間、大学に合格した。と思ったら、もう卒業年度ではないか。高校生くらいまでは、一日の時間が経つのが長ったらしくて、ウンザリしていたもんだが、二〇〇〇年に突入して以後はスパッと過ぎ去ってしまった。
年齢も、もう二十二だ。その割には、さほど成長してないような気もするが。あり余るほどだった体力、精力、社会への憤りは、そろって過ぎ去りし過去の遺物と化してしまったんだから悲しいことだ。
今の知識と行動力を持って、一〇代の華やかなりし時代に戻りたいと、誰しも一度は思ったことがあるだろう。ウチの親父は毎日言っていた。そこまで言われると、我々現代の家族に未練無し! と言われてるようできつかったが。
まあ、とにかく僕は一〇代に戻れるのなら、まずは女子高生の彼女を作る! 後は………特に無いなぁ、よく考えてみたら。あの頃、友人と交わしていた会話の数々は、素晴らしいほどに無意味で下らないものばかりだったが、楽しくて仕方なかったモンである。高尚さ、学術さは一切無し! どういうわけか、下ネタばかり話していたのである。アレ? 今とあんまり変わらないぞ。
高校生ともなると、異性への興味と興奮が最高潮に達する頃。しかも、特に勉学やスポーツに打ち込んでいたわけではなかった我々ボンクラ学生達は、自己の集中力をたくましい妄想と自主トレに費やしていたわけである。恥ずかしいったらありゃしないね。
例えば、放課後になると、根城にしていたパソコン教室(パソコン同好会に所属していたんで……)に集まり、日暮れ近くまでだべってるわけだが、最初はごくフツーに昨日のテレビの話や、最近読んでる本の話をしていたのが、いつの間にか個々人の性生活に流れてしまっていた。一体、どんなキッカケがあったんだ?
話す議題も様々。「何発連続で出すことが出来るか?」という話だと、
「お前さ、一回ヤったらどのぐらいで回復できる?」
「んー、まあ、三〇分くらいじゃないか? やっぱり」
「え! オレ、5分でイケるぜ!」
「あー、オレもオレも! いや、5分なんて言わず、連発でヤれるよ!」
………とまあ、こんな感じになる。
若さ爆発、これを教室の隅っこでヒソヒソ話をするんじゃなく、大声でゲラゲラ笑いながらやるんだから性質が悪い。
ちなみに、話しているのは彼女とのアレではなく、一人でするほうのアレである。仲間内揃って彼女がいなかった。イメージトレーニングで積まれた経験値は、必然的に一人エッチの方で昇華されていき、また仲間内でそれらの技術交換をしていくという、なんとも不毛な連鎖が作り上げられていったのである。
その他の話も推して知るべし。
「オレさ、この間ヤってたらさ、アレの狙いがそれて、壁まで飛んでっちゃったんだよ!」
「あ、それ、オレもある! オレ、自分の顔にかけちゃったんだよなぁ!」
とか、
「最近さぁ、ヤり過ぎたみたいで、血が出てきちゃったんだよなぁ……」
「オレ、なんか知んないけど、先っちょにシワが寄ったまま、戻らないんだよ……」
なんて話までしていた。
もー、恥ずかしい! でも、やっぱり楽しかったよなーと思うんである、コレ。
僕ももう二〇を過ぎた。さすがに、あの頃のような無茶はやるほどアホでもない。しかし、あの頃にこういうバカなことをして、そのことを笑い合える、というのは結構貴重なことなんじゃないかなーと思うのだ。思い出はバカなことだろうとなんだろうと、ゼロよりはあったほうがいい。振り返ってみると、一〇代だから出来たこと、一〇代にしか出来なかったことが実は多かったことに気付く。
二〇代になった僕には、無茶をやる度胸も、時間も場所も無くなった。だもんだから、一〇代の頃に戻ってもっとバカなことをやってみたいと思うし、出来ないことがわかってるもんだから、結局尻込みして何もしないだろうな、とも思うのだ。
“二〇代の自分”が当たり前になっちゃった最近は、ふとこんなことを思い出しては、うーんと唸って酒を買いに走ることが多くなってるんだよな〜。