2006年03月01日
今回は、「民間の英語教室と同じようなつもりで、小学校でやってしまうと陥りがちな落とし穴」について、少しじっくり考えてみたいと思います。
学校の現場に、一教育者として入るのか、一英語の専門家として入るのか、
皆さんはどちらの立場でしょうか?もちろん、英語の専門性を持った教育者として現場に入るべきだと思うので、これはとても愚問なのですが、実際にはいろいろな立場の方がこれからの小学校現場には入っていかれると思います。
例えば、私がお手伝いしている小学校でも、来年度お手伝いすることが決まっている外部指導者の立場は様々です。
私自身はというと、たった6年間だけですが、公立中学校の教壇に立っていたためか、いまだに教師根性の抜けきらないところがあります(^_^;)
ですから、ただ英語を教えるのだけでなく、英語を通してどんな子どもたちに育てたいか、という思いをついつい抱いてしまいます。でも、もし自分の教育方針や思いばかりを前面に出してしまったら、週にたった1時間しか子どもたちに関わらない者が、担任の先生が毎日積み重ねてこられたものを踏みにじってしまう危険性だってありますよね。
ですから、英語の時間の特別なかかわりの中で、子どもたちの良い芽を見つけて伸ばしてあげることや、授業そのものの中にメッセージを込めるような形で、自分の思いは伝えていくようにしています。
(次回に続く)
2006年03月03日
(前回続き)
幸い、英語の時間は子どもたちにとってもまだ特別な時間なのでなんでも真っ白な状態から受け入れる準備ができています。日頃の学級生活の中ではあまり目立たない子も、英語の時間には思いがけず自信を持って行動できるかもしれません。逆に、いつもは落ち着きがないと叱られてばかりの子も、英語の時間には思い切り元気に活躍して褒められる場面がたくさん出てきたりもします。
1学期の出来事ですが、見た目はやんちゃそうな子なのですが、誰よりも真剣に、私のほうを食い入るように見ながらアルファベットの発音を頑張ってくれていたので、授業が終わってから担任の先生にその子の名前を確認しようとしたところ、『何かいけない事をしましたでしょうか?』とすごく心配してくださったのでわけを話すと、すごく喜んでくださって、『Yuka先生がほめてくださっていたよ!と伝えますね!!』と言ってくださいました。
お話を聞くと、日頃よく叱られている子だったようで、なかなか褒めてあげる場面が見つからず、担任の先生にとってもその子を褒めてあげるよい機会になったということでした。
(次回に続く)
2006年03月06日
(前回続き)
教育者としての立場で私が気をつけていることは先に書きましたが、
英語の専門家としての立場で気をつけること、それは専門家としての正しい意見が、必ずしも学校の現状には適さないこともあるという事を心がけておくこと、だと私は思っています。
例えば、板書の中でカタカナを使うかどうか?
と言えば、英語の専門家としては私だって絶対に『No!!』です。
でも、今年から小学校で初めて英語に触れる3年生の現状に合わせれば
小学校ではそれもありかな?と思っています。
わたしは3年生を春から担当しましたが、最近では幼稚園児ですらひらがなをスラスラ読み書きする子がたくさんいる一方で、3年生になっても、ひらがなの読み書きがまだおぼつかない子も少なくはありません。ですから、カタカナがあってもそれを読むことすらおぼつかない現実もあるのですが、もしそういうボーダーラインにいる子どもにとって、カタカナが少しでも英語の垣根を低くしてくれるのならそれはそれでいいのかもしれない、と思っています。
ただ、私としてはそれを鵜呑みにするのではなく、カタカナがなくてもいけるようにアプローチはしています。
2006年03月08日
今年私がやってきたことのひとつは、アルファベットの定着からフォニックスへの移行でしたが、これが定着してくれば、大半の子どもたちはカタカナが書いてあってもそれにこだわらず英語の文字に反応してくれていますから、カタカナはあっても邪魔にならない存在になりつつあります。
それと、1学期の段階で小学校の先生から『カタカナも板書に使いたい』と申し出があったときにこちらからも何点かお願いをしました。
*英語の文字表記は、大文字・小文字を正しく使って、中学校で習うブロック体で正しく書くようにしていただくこと。
*絵にもできるだけ英語を正しく表記すること。(例えば、りんごが1つの絵ならan
apple、複数ならapplesなど)
*カタカナ表記の中にも英語の発音を意識してb = ブ、 v = ヴ など発音の違いを表現する。
これは、私の中に2年先3年先には必ず読む力にもつなげていきたいという思いがあったので、小学校で読み書きの文字指導をしないなら、なおさら日頃の授業の中でこの事を視覚的にインプットしていただくようにお願いしました。
これらのことは、小学校の先生方も快く受け入れてくださいましたから、子どもたちにもよい結果が出ています。
でも、もし、『カタカナは絶対だめです!!!』といってカタカナを使うことの弊害を担任の先生に延々と説明していたら、どうだったでしょうか?
多分、あまりよい結果は出ていなかったのではないかと思います。
つまり、小学校現場の受け皿が、今どういう状態にあるかという事をよく把握して、
専門家として正しい方向にじわじわ持っていく、時間や手立て、タイミングをよく見る必要がある事をぜひ知っておいてもらいたいと思います。
2006年03月15日
民間で教室を開いているといっても状況はさまざまだと思いますが、自宅で教室を開いている方にとっては、人数と空間の違いは、はじめに一番戸惑われることかもしれませんね。
『生徒の収拾は担任の仕事ですから』と私の行っている学校では先生方がそう意識してくださっているのでとてもありがたいですが、英語の先生仲間と話している中では、学校によっては崩壊学級があったり、担任の先生が協力的でないなどということも現実としては結構あるようです。
私自身は中学校や塾での経験があったので、その点は全く抵抗なく現場に入っていけましたが、40人弱の生徒を相手にする中で、やはりチェックポイントがあるかな?と思います。
(次回に続く)
2006年03月17日
(前回の続き)
あくまでもこれは私流のやり方ですが、自分が全員の子どもたちときちんと目を合わせられているか、ということもひとつのチェックポイントになると思います。
例えば、アルファベットや新しい言葉の導入でリピートさせているような時に、私は必ず全員と目を合わせるようにしているのですが、こうすることによって目の合わない子がいることが確認できます。目が合わない子は、その日、心か身体の調子が100%は英語に向いていないということですから、そういう子には必ず何らかの言葉かけをします。
元気がないなら日本語で『大丈夫?』でもいいし、何かちょっとした瞬間を捉えて“Good
!!!”でもいいので、とにかくその時間内、それもできるだけ早い段階で何かしらアプローチをして、こちらに意識の中にあなたがいるよ、という事を伝えます。
(もちろん子ども同士のトラブルなどあまり踏み込まない方が良い場面では、そっとしておくことも大切です)
もちろん、言葉をかけなくても、リピートを繰り返す中で、さりげなくその子と目が合うまで視線を投げ続けるだけでもOKです。
このこともそうですが、『先手必勝』というのが、どの場面にも結構当てはまると思います。
自分がこれから言うことに対して、子どもたちがどんな反応をしそうか常に少し先を考えておく、ということですが、それも子どもの立場で予想しておくと良いと思います。
授業での子どもたちへの問いかけを『発問』といいますが、この発問としてどんな言葉を選ぶかによっても子どもたちの動きは全く変わってきます。
『指示』の言葉もいくつもの事を一度に言うのではなく、必要最低限の事を分かりやすくシンプルに言う事を心がけるだけでも、子どもたち自身が動きやすくなり授業がスムーズに流れます。
子どもたちにとって、これから自分たちがすべきことがきちんと分かっている、ということが不必要に騒いだり、収拾がつかなくなって大声を出されてしまう場面を少なくしていくことにつながると思うので、いかに分かりやすく伝えるかを、こちらは常に意識しておくことが大切です。
でも、一番大切なことは、はじめから全てを自分で抱え込んでしまわず、不安なことは担任の先生にお伝えして、フォローをお願いするなど、担任の先生と一緒に関わっていくことだと思います。
2006年03月20日
児童英語教師となるために私がまず初めにしたことは、アルクの通信教育の「児童英語教師養成講座*」の受講でした。
もう10年以上前の話ですから、その頃はまだインターネットも今ほど身近なものではなく、マザーグースや英語の遊び歌、洋書絵本などについて知る良いきっかけとなりました。
(実際、中学校で教えていても教科書にはこの手の内容はすごく少なかったです)
特に最近は児童英語に関連のある情報や教材もあふれるほどあり、簡単に手に入るようになりましたよね。価格的にもシステム的にもすごく購入しやすくなっているのはありがたいです。
(でも、ありすぎて、今度はそれらのなかから適切なものを見抜く目とやりくりが必要になってきましたが・・・(^_^;))
指導法についても、同じようなことが言えます。
いろいろな素晴らしい先生方のさまざまな指導法を知るたびに、
なるほど~~~~~!!!!
と、感銘を受けますが、
それらの中からどの方法をどんな風に自分のレッスンの中に取り入れていくのかも
大きな課題となっています。
教えるための引き出しはたくさん持っていたいと思いますが、
1本 筋の通った自分なりの柱というものを持っていないと振り回されてしまうのも現実です。
(次回に続く)
* 編集部注:『児童英語教師養成講座』は、リニューアルのうえ、現在は『児童英語教師養成コース』として、皆さまにご提供しております。
2006年03月22日
(前回の続き)
アルクの講座を受講した中でもうひとつすごく役に立ったのが、子どもの発達段階と指導法の関係です。
幼稚園や小学校の子どもたちは、1年1年、心も身体もどんどん成長していきますから、それぞれの時期の発達段階の特長を生かせるようにレッスンを組み立てていくことはとても大切ですし、効果も大きいです。
大学でも一般教養として児童心理学などは履修しましたが、実際に自分が子どもたちに教える事をイメージしながら、この事を勉強するとまた違った部分にも意識ができたように思います。
ただし、実際の子どもたちはさらにそれぞれの個人差がありますから、何年生だからこうだ!!というのではなく、この子は今この発達段階にいるから・・・・と、一人一人に目を向けていくことを心がけたいですね。
2006年03月24日
アンテナ、といえばやはり子どもたちが今どんなことに興味を持っているか、という事を知っているのと知らないのとでは、授業そのものよりも+αの部分で子どもたちがこちらに親近感を持ったり、共通の話題で話ができたり・・・ということはありますね。
流行のゲームや、TVドラマやキャラクターといったところでしょうか?
でも、これはあればあったでいいですが、なくても別に大丈夫な部分かな?とも思います。実際、私もそんなに詳しい方ではないので、そういう話題になった時は子どもたちに『知らないから教えて!!』と、話を聞きます。そうするととても張り切って教えてくれるので、それをまた授業に取り込んだりもします。
それよりも私が張っておきたいアンテナは、その日の子どもたちの様子に対してのアンテナです。
(次回に続く)
2006年03月27日
(前回の続き)
私の側から見れば、週に1回英語のためだけに小学校に行くわけですが、毎日学校に通っている子どもたちにとっては、今週はどんな行事があったか、とか、英語の授業の前の授業でどんな事をしたか、とか、その日の天気、何曜日の何時間目か、前の時間に叱られたかどうかその日の体調はどうか等、あげればきりがないほど英語以外のいろんな状況があるわけで、お腹の減り具合、疲れ具合、気分も汲み取った上で授業を進めていくと無理なく授業に乗ってきてくれるように思います。
もうひとつの張っておきたいアンテナは、やはり教授法など英語そのものに関する最新の情報に対してです。新しいものが良い、とは限りませんが、少なくとも今注目を浴びているもの、多くの先生方が良いと支持しておられるものについては知っておいて損はありません。
新しい知識を得ることによって、これまでに自分が持っていた知識をより生かせる事だってあります。知った上で自分で消化ができ、噛み砕いて子どもたちに与えられそうなものがあればより良い形でどんどん取り入れていけばよいと思います。
(ただし、ここでも食べすぎと消化不良にはご注意!!!です。)
そして、アンテナで受信するだけでなく、先生自身が学び続けている生き生きとした姿を見せることで、こちらからの発信をしていくこともとても大切なことだと思います。
2006年03月29日
公立小学校でも5年生から英語を必修化にということで、ただ今、検討が進んでいます。
3月27日の中教審外国語専門部会を傍聴したJack先生も、
・指導者については、当面は学級担任とALTや英語が堪能な地域人材等とのティーム・ティーチングを基本とする。
・海外勤務経験のある者や、英語に堪能な「地域の人材」を、「特別非常勤講師等」として「積極的に活用する」ことも重要である。
ということを報告しています。
(詳しくは、「小学校英語ブログ」内の、「Jack先生、吠える」コーナーをご覧くださいね)
Yukaせんせいは、J-SHINE取得者として、いちはやく、公立小学校で英語活動の指導にあたっています。いわば、「地域の人材」の積極的な活用の事例ということですね。
Yukaせんせいが、今後、どのように小学校で指導を進めていくか、このブログを通して、情報共有ができそうですね!
来年度も小学校で英語のお手伝いをすることに決まったと、Yukaせんせいも、大張り切りです。
ただいま、Yukaせんせいは、新学期の準備中です。
そのため、1週間程度、レポートをお休みさせていただき、4月から、連載を再開する予定です。
ますますホットになる小学校英語と、小学校英語で活躍する民間指導者のYukaせんせいの奮闘レポートに、今後もどうぞご期待ください!