1998年3月

キューバの持続可能な農業

 必要性にかられて、キューバ農業は通常の農法を捨て、持続可能な土づくりや栽培方法を適用しはじめている。このことは、米国の進歩的な農業団体の関心も呼んだ。1997年、米国のフード・ファーストは、この新たな農法を学ぶため、26名の米国の農家や農業研究者からなる派遣団をキューバに送り込んだ。その結果は、1997年4~5月のミネソタの「Land Stewardship Letter」に取りまとめられている。

 1989年、ソ連は砂糖と引き換えにキューバの精練所に原油を提供することを止めた。同時に、キューバは化学肥料、農薬、除草剤を輸入できなくなっていることにも気づく。輸入量は、80%も落ち込んだ。そして、米国のキューバに対する経済封鎖が、通常の農業投入資材をほぼ途絶させてしまう。このことで、キューバは文字どおり、作物全般に及ぶ農業の転換を強いられる。トラクター用のガソリン燃料が欠乏すると、キューバの農業は、トラクターの代わりに10万頭の牛耕へと転換し、「残飯」が、キューバ農業の「機械化」を生き残らせたのだった。以来、全国的な繁殖キャンペーンを通じて、キューバの大地で働く牛数は40万頭にまで増えたが、このことで、牛耕に適したカルチベーター、播種、収穫機の生産も必要となっている。

 キューバの病害虫管理プログラムは、もう化学製品には依存していない。地域で管理・運営される230ヶ所以上の捕食・天敵再生産するセンター(CREE)が無毒の農薬を生産している。こうしたセンターの一つは、農業高校の中にあって、そこでは生徒たちが、畑を調査して病害虫の発生度合いを調査し、天敵を育てて、畑に放ち、その結果を観測している。

 生物多様性が農業生産の安定につながる。牧草・飼料研究所も、この原則に基づいて運営されている。研究所は、家畜工場のように牛を密飼するのではなく、園芸にとって最適な面積あたりの家畜頭数の割合を研究している。これは多くの労力を必要とすることにはなるが、研究所のホセ・スアレス(Jose Suarez)氏は「自分の仕事を愛している」と語る。

 スアレス氏が責任を持って管理しているのは1ヘクタールだが、驚くほど豊かな果樹、野菜、ハーブ、穀物、生垣、地生の飼料作物が栽培されている。

「どのやり方から最高の見返りを得られるのかを学ぼうとしているんです」。

 スアレス氏はそう説明する。

 キューバのプログラムが、果たして進歩なのか、原初的な農業への退歩なのだろうか。農業機械研究所のエクトル・ボウサ(Hector Bouza)所長は、機械化された耕起は、土壌微生物にダメージを与えると断言する。日光を嫌う微生物は、陽光にさらされれば死んでしまうし、その逆も同様だ。土壌を過剰に撹乱すると、土壌中の生命を殺してしまうし、雑草の繁茂も促してしまう。

 キューバを訪れた農業者や研究者たちが導きだした結論は、今のキューバ農業は、自然に優しく、かつ、キューバの緊急的な食料需要に見合った最高の方法だ、ということだった。もちろん、それには多くの労働力が必要だ。だが、もしそのことで食料が提供され、キューバが生き残れるのであれば、それは適切に投入された労働と言えるだろう。もちろん、牛が農場の恒久的なエネルギー源でありつづけることを望む者は誰もいない。だが、犯罪的な経済封鎖のために、通常の経路が閉鎖されている限りは、それは当面、生き残るための方法なのだ。そして、それは国外からの支配からキューバが自由であり続けるための国家の前向きな意思決定の証でもあるのである。

(スウェーデンの森と木と人というニューズレターからの記事)
 Robert Collier, Diversity leads to stability'Cuba attaining sustainable agriculture,1998.消滅

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