2000年8月7日

カストロ、キューバで農薬を打倒
 

 有機農業は食料供給上、重要ではないと考えられがちだ。だが、フード・ファーストのレポートは有機農業で国全体を養うことが可能だ、と結論づけている。

 フード・ファーストとは、米国カリフォルニアのオークランドにある食料と開発ための機関で、持続可能な農業を主張するグループで、そのリポート「Cultivating Havana: Urban Agriculture and Food Security in the Years of Crisis」によれば、キューバでは日々国民が口にする食料の多くが、無農薬無化学肥料で栽培されている。

 キューバの有機農業運動は、経済危機に対処することから進展した。1959年に独裁者フルへンシオ・バチスタ(Fulgencio Batista)をたたき出した革命以前、そして、ソ連がキューバを支援していた間は、キューバ農業は、典型的な植民地のパターンに従うもので、輸出穀物を生産し、かわりに人民のための食料は輸入していた。1990年ではキューバの食料の50%以上が輸入されていた。

「カリブ諸島で食料が不安定なのは、砂糖やその他の輸出用換金作物の生産を優先し、国内消費用の食用穀物を無視するという数世紀にわたる植民地主義の直接的な結果である」

 報告書はこう述べている。革命政権は、この状況を正常化しようと努力はしてきたが、1989年にソ連が崩壊するまで、キューバはこの枠組みの中にいつづけた。

 報告書によれば、ソ連からの支援がなくなったことで、キューバは、化学肥料130万トン、除草剤1万7千トン、農薬1万トンを輸入できなくなった。この打撃への対応策のひとつが「都市農業」を発展させることだった。主にハバナ周辺で何千ヶ所もの未利用地を集約的な野菜菜園に転換する「国家食料計画」は、以前にも策定されていたが、それはこの計画をさらに強化したものだった。食料生産を農村ではなく、都市で行うことは、輸送や冷蔵貯蔵の必要性を減らし、その他の乏しい資源も節約することになる。

 そして、計画は想像された以上に成功した。1998年では、ハバナ市内やその周辺に8000以上の都市農場やコミュニティ菜園があり、30,000人以上がそれを耕作している。

「いまや都市農業は、ハバナ市の景観の大きな要素となっている。そして、毎年250~350%というペースで生産を高め、全国のモデルにもなっている。そして、都市農場では、ほとんどすべてが積極的に有機農法で生産されている」。フード・ファーストのリポートはこう述べているが、ハバナ市内では、化学合成農薬の農業使用が禁じられている。

 フード・ファーストの持続的農業プログラムの責任者、マルチン・ボルクエ(Martin Bourque)氏はこう語る。

「全国都市農業計画の目標は、全国民のために十分な生鮮果実・野菜を生産することにあります。そして、いくつかの都市ではこのことに達成しています。キューバでは、いま農家が最も高賃金を得ていますが、有機農産物は全キューバ人のためのものであって、お金持ちのためのものではないのです」。

 今、ハバナ市内には、学校や職場に376ものアウトコンスモスや自給菜園がある。生産物はふつう昼食用に利用されているが、その残りは安い値段で労働者たちに販売されている。土に堆肥を混ぜ、高床式のコンテナ・ベットで集約的に野菜、ハーブ、スパイスを栽培するオルガノポニコ(organoponicos)も451ヶ所あり、生産物は、人々に直売されている。それ以外にも、面積当たりの収量を最大限にするための集約菜園、ウエトス・インテンシボス(huertos intensivos)も取り組まれている。そこでは、有機物は直接土壌に投入されている。

 菜園では信じられないほど生物多様性が豊かなため、病害虫問題はほとんどない。

「生物的な平衡に達しているのです。生態系内に天敵がいつも存在していますから、害虫は管理できる数以下しかいません。防除資材を施用する必要性はほとんどないのです」。

 ある集約農園の農場長はこう述べる。

「都市や都市近郊での小規模生産で、卵、ウサギ、花、薬用植物、蜂蜜の生産を高めることを目指すそれ以外の計画もあります」と、ボルクエ氏は語る。

 多くの農村家庭では、マメ、ヴィアンダス(伝統的な根菜類)等の主要食料を自給しており、都市近郊や農村部では、小家畜の飼育も急速に広まっている。

「持続型農業は、はじめこそソ連の撤退というインパクトを堪え忍ぶ手段と見なされていました。努力をはじめた時は、高投入型の緑の革命技術なくしてはコメ栽培は行えないと、ほとんどの農政関係者が考えていました。ですが、1997年には小規模なコメ生産は、全国生産の65%に相当する140,000トンに達しました。今では、誰もが持続型農業が国民を養ううえで、大きな役割を果たし、海外の農薬メーカーに支払うことになる何百万ドルもの節約につながっていることに納得しています。政府の統計数値によれば、1999年時点で、有機都市農業は、キューバのコメの65%、生鮮野菜の46%、オレンジ以外の果実類の38%、根菜類やバナナの13% 、そして卵の6%を生産しているのです。誰もが基礎的食品を確実に入手できるように配給プログラムは立てられていますが、いまだに食料はとても高額です。ですが、キューバは明らかに1990年代半ばの食料危機から抜け出しています」。

 そうボルクエ氏は指摘した。

 1999年、フード・ファーストは、キューバの有機農業の体験から学ぶため、全世界から数多くの農業者、研究者、科学者、活動家が参加した視察ツアーを実施した。

(ワシントン・フリープレスからの記事)
  Renee Kjartan,Castro Topples Pesticide in Cuba,2000.

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