書評など
    

1000万人が反グローバリズムで自給・自立できるわけ 省エネルギー 2005年7月号

 グローバリゼーションという怪物は、地球の自然を搾取し、発展途上国の人々のいのちと暮らしを脅かしているばかりか、日本社会の苦境とも連なっているように思える。われわれが充足した今を生きるスローライフを手にするためには、グローバル経済から国内の農山漁村を守る国家ガバナンスが必要だ、と著者は言う。  

 本書は、ソ連圏崩壊とアメリカの経済封鎖で食糧・エネルギーの危機に見舞われたキューバの再生を描き、大きな反響を呼んだ『200万都市が有機野菜で自給できるわけ』の続編である。前著では首都ハバナを中心に国をあげてなされた農業革命に焦点があてられたが、本書では農林水産業、教育、環境・エネルギー政策を幅広くカバーし、自然と調和した持続可能な地域づくりのプロセスを克明にリポートしている。

 生ゴミはミミズで堆肥化し、海洋汚染や飲料水は微生物で浄化する。原発と縁を切り、脱ダム宣言を行い、湿地を保全し、砂漠に木を植え、生物多様性の保全と自然再生事業で雇用を確保する。

 この国が「もうひとつの世界」の可能性を切り拓くことができたのは、カストロの傑出した指導力のためだけではなく、ソ連の抑圧から解放された人々の意識に、伝統文化へ回帰する機運が高まったことが大きいと本書は分析している。

 かつて小国には不釣合いなまでのソ連からの援助に甘え、自国の伝統文化を失ったというキューバと大国との関係は、どこか日米の関係にも似ている。キューバの復興から日本を逆照射した持続可能性は、グローバリズムとは一線を画した「農的スローライフ社会」にあると本書は結論づける。陽気なラテン人たちの姿から「足るを知る」ということの何かを教えられる一冊である。

Books ビオ・シティ 2004年6月1日 

 前著「200万都市が有機野菜で自給できるわけ」で、持続可能な世界や自給循環型社会をめざす人の目を開かせた著者のキューバ・リポートの続編。ミミズによる生ゴミ堆肥化、微生物による水質浄化、脱ダム宣言、湿地や森の保全、植林、、、、。豊かさを享受した後の先進国のそれとはちがう独自の自給循環型社会を着々と築くカリブの小国キューバ。そこで筆者が見たのは「有機水田を舞うトキたち」の光景だった。お金をかけない、かけられないこの国の持続可能な地域づくりの方法を深くレポートする中で、本書は日本の自給循環型社会への方法を探っているようだ。

有機農業転換による国の未来図 日本農業新聞(児玉洋子記者) 2004年5月23日 

 その姿を思い浮かべただけで気持ちの悪いミミズだが、キューバに行ってからがらりイメージが変った。

 家畜のふんや生ごみの堆肥化にミミズが活躍し、国立の農業試験場では女性研究者がわが子のようにミミズを育て、有能ぶりを説明してくれた。

 本著は、そのキューバが舞台。ミミズも登場するが、驚くのは水田を悠々と舞うトキの姿だ。キューバは、1990年代に入って農薬使用量が激減、有機農業への転換によってトキの生息数が回復したのだそうだ。

 日本で野生のトキが絶滅したのは、冬季に乾田化したり、営巣地である雑木林を破壊したり、農薬の散布でドジョウなどの餌が減少したことが原因とされる。

 キューバの場合、自然湿地で見られる野鳥は50種に対して、水田には60種もいるという。ともすれば人間とのあつれきが生じるはずだが、ハバナ大学の鳥類生態学チームは、稲作農家と観察を共にすることで、野鳥が雑草や稲の害虫も常食しているのが分り、農家の考え方も変わっていった。ソ連崩壊と米国の経済封鎖で、食料、石油が手に入らなくなったキューバ。金をかけないで、自給・自立を図り、自然と調和した循環型社会の手本として世界から注目されている。

 キューバに最も近い社会に、著者は江戸時代を挙げる。「鎖国自給」した徳川幕府。いまや日本は自給率40%の輸入大国。水田を舞うトキの姿はなく、農業は八方ふさがりの状態だ。東京都庁の食料安全室に勤める著者は、キューバを七回訪れた。前著「200万都市が有機野菜で自給できるわけ」と共に、農業の未来絵図を示してくれる。

1000万人が反グローバリズムで自給・自立できるわけ人民の星(日本共産党左派中央委員会) 04年5月22日

 著者は「キューバが衝撃的だったのは、1000万人以上の規模で、国をあげて持続可能な社会づくりに挑戦し、まがりなりにもそれをある程度実現しているということだった」という。持続可能というのは、人間による自然の開発・生産が自然を荒廃させていくのではなく、自然の再生産が行われるように開発・生産をすすめることである。

 この実践的打開は、この十数年、世界的にすべての国で切迫した問題となっている。とりわけ発展途上国にとっては、グローバリズムという名での多国籍企業による開発によって、国土の荒廃がいちじるしいが、その復活のためには、ばくだいな労力と資金が必要になるため、切実で深刻な問題となっている。

 著者にとってそれは日本の問題である。「一体、市場原理を貫徹すれば、日本に素晴らしき未来訪れるとでもいうのだろうか。どこか、おかしい。これがほんとうに私たちが望んだ社会なのだろうか」という問題意識にたち、「キューバから日本を逆照射したとき、人々が豊かに暮らすための人類の共通項…が見えてくるのではないだろうか」という思いから、この本は書かれている。

 著者は、キューバのすすめている積極的な試みを支持し、できるだけ多くの分野で現場でとりくむ人々に取材した事例をとりあげて、読者に判断材料を提供しようとこころみている。

 大きな分野だけを挙げても、住民が住み続けられる山里づくり、蘇ったカウト川・河川再生プロジェクト、砂漠化との闘い、失った森林の再生、サパタ湿地を守る、開発で失われたマングローブを回復する、持続可能な水産業、暮らしと密着したバイオ技術…など、きわめて多くの分野にわたっている。そこでは試行錯誤や失敗も率直に語られている。

 それらをつうじて筆者は「環境問題の解決には、国家とコミュニティとの統合された行動が最も必要だし、両者の連携なくして、首尾一貫した効率的な環境政策を実施することはできない」が、キューバには「参加型民主主義と人民の大動員能力を革命へのコミットメント」という決定的に有利な要素がある、と指摘している。

 具体例がくわしく多いほどよいと考えた結果だろうが、この厚さと価格は、普通の人が購入するときにはかなり決意がいると思う。

 せっかく大切なテーマをとりあげ、キューバという大衆の共感をよぶ実践例を材料にしているのだから、もう少し整理して厚さと価格を半分以下にへらした方がよかった。

さらにマクロな国へ むすび4月号 2004年4月 

 昨年5月号と8月号の本誌にもご登場いただいた吉田さんの新著。オーガニックファンの度肝を抜いた前著「200万都市が有機野菜で自給できるわけ」の続編というが、今回は質・ボリュームともにさらにパワーアップして、「スロー」「反グローバリズム」という切り口から、持続可能な島国・キューバの現状を多面的に報告している。いろんな話題が紹介されている中で「キューバ流・玄米菜食」というコラムが目を引く。(中略)とにかく、キューバの共産党政治局員のナンバー6のVIPが、率先してマクロビオティックの研究に努めているというのだから、これまた驚く。

 単なる「キューバ・リポート」ではなく、「あくまでもキューバの視点から日本を逆照射した持続可能な社会への挑戦の物語」である点が、読後感をさわやかにして、未来への希望と力がわいてくる。

持続可能な社会を示す 日経ビジネス(磯道 真) 2004年4月12日 

 2002年に出版され、ひそかなキューバブームを巻き起こした「200万都市が有機野菜で自給できるわけ」と「有機農業が国を変えた」の言わば続編。旧ソビエト連邦の崩壊と東西冷戦の終結、さらに米国による経済封鎖の強化で、一時は深刻な危機に見舞われたキューバがいかにしてその難局を乗り越えたか。金銭的な豊かさを必ずしも追い求めず、最近流行の「スローライフ」への国を挙げた取り組みが示されている。

 一般的な日本人にとって、カストロという「独裁者」が40年以上君臨するキューバのイメージは、北朝鮮に近い。砂糖や観光を除けば大した産業もなく、いまだに1950年代の米国車が真っ黒い排ガスを撒き散らしながら走り続けている。

 本書で紹介されているキューバの取り組みは、専門家から見れば窮余の一策と映るかもしれない。例えば、経済危機でマヒしたキューバでは、微生物を用いた「緩速濾過フィルター」を家庭に設置して、水を浄化する方法が普及しつつあるという。浄水場で塩素殺菌するのとは違い、濾過するのに時間がかかるうえ、フィルターの設置場所も必要になる。だが、環境への負荷は小さく、大きな投資も必要ない。発展途上国で安全な水を手に入れるには手っ取り早い。

「暮らしに必要なモノだけを消費せよ」というスローガンは、GDPが前年や3カ月前に比べてどの程度増えたか、という物差しで豊かさを測る我々とは、明らかに異質の価値観に基づく。だが、江戸時代の日本がそうであったように、結果的に持続可能な社会につながる。古い車も修理を重ねて使い続けることで、環境に与えるトータルの影響は小さいかもしれないという。

 筆者によれば、「モノや金はなくても少なくとも『不安』はない。つつましいが、笑いと陽気なダンスのある暮らし。今世紀の中頃には訪れるであろう環境破局の中を生き残るのは、このカリブの小国ではないだろうか」となる。

 本書には、これまで国に頼り、東京を目指し続けてきた日本の地方にとっての目指すべき方向や価値観のヒントが含まれている。経済的に豊かなだけが幸せではない。

 著者は東京都の産業労働局農林水産部に勤める地方公務員。有機農業や環境問題は学生時代から関心を持っていたそうだが、キューバの専門家ではない。キューバを訪問した七回はいずれも休暇を利用してのもの。『200万都市が〜』ではやりすぎの感もあったキューバ礼賛も影を潜めた。

1000万人が反グローバリズムで自給自立できるわけ ふぇみん 2004年3月15日 

 日本もキューバも島国。海洋資源が豊富で森林も豊かだった。お米が主食なのも共通している。日本に米軍基地があるように、キューバにもかつてはソ連の基地があった。日本の第二外国語が英語のように、かつてのキューバもロシア語を習い、食糧から石油まで依存し、文化や思想も影響を受け、国中にダムを造り、サトウキビ栽培に邁進していた。しかし、10年前ソ連圏は崩壊し、アメリカの経済封鎖で、スペシャル・ピリオド(食糧、水、電気、医薬品などの生活物資も枯渇)と呼ばれる国家存亡の危機が襲った。しかし、キューバはこの危機をバネに、舵をきりかえた。本書はそんな新生キューバの姿を愛情を込めて伝えている。

 生ゴミをミミズで堆肥化する、海洋汚染や飲料水は微生物で浄化する、脱ダムを実践し、沙漠に木を植え、ソーラーパネルが活躍する、、、、。巨額な資金と技術を投入しなくてもここまでできるのかと、びっくりするような身近な例が多い。キューバの歩みと、今の日本との落差にボーゼンたる思い。

編集部からレターズ 日経ビジネス(磯道 真) 2004年2月9日 

 米国の経済封鎖に屈せず、都市の有機農業で自給自立を成し遂げた国があります。キューバです。旧ソ連の崩壊後に食糧やエネルギーの輸入が激減し、経済的には貧しい国です。それでも人々は明るく、欧州を中心に世界中から注目されているといいます。

 日本の田舎の多くは、これから十数年前のキューバのような状況になるかもしれません。国からの補助金や地方交付税が削られ、満足な産業基盤もないからです。でも、国に頼ること、東京を目指すことをやめた時、光明が見えるのではないでしょうか。今回取材した地方は、それぞれオンリーワンを追求し、手に入れつつありました。豊かさとは必ずしもお金ではないことを、確信しました。


ウェブサイトの声 書評 パッションさん 2006年1月5日

「ヒマラヤの見える学校で/田中千聖著」を読んだ(略)。作者は終わりの方で、もうネパールに援助はしない方がいいんじゃないかと書いていた。もう長年援助が入っているのに(国家予算の約1/3は海外からの援助金である)、状態が改善していかない。理由はいくつかある。政治の混乱と腐敗。人心も相当乱れている。援助が入らない状態で、もうどうにもならない状態から自分達で頑張り始めた方が、いいものを作れるのではないかと僕も考え始めた。援助は自分達でやる力や機会を奪っているのではないか、と。全ての国がこれに当てはまりはしない。けれど、いつまでたっても良くならないネパールはこれに当たるのではないかと僕は考え始めている。

 僕は社会主義国キューバの事例を知っている。アメリカの経済封鎖を受けている最中、頼みの綱のソ連が崩壊した。キューバは一気に混乱と貧困に陥った。ここからキューバの思考錯誤と再生が始まるのである。もちろんこれは社会主義国であるキューバに、カストロという偉大な指導者がいたから出来たことである(カストロをうらんでいる人も沢山いるけどね)。そして、キューバは誰の手も借りずに、自らの手で見事に復活したのだ。このストーリーはとても面白いので、興味がある人は「1000万人が反グローバリズムで自給・自立できるわけ スローライフ大国キューバ・リポート(吉田太郎/著、築地書館、2004)」を読んでみてね。

ウェブサイトの声 書評 カズさん 2005年3月18日

 厚い(577ページ)ので、読むには少々骨が折れます(笑)ただし、読む価値は十分。「持続型社会」に興味がある人には必読。 

ウェブサイトの声 書評 日本共産党山梨県委員会 花田 仁さん 2005年3月18日

 以前、『地球持続の技術』という本を紹介しました。あの本では、持続可能な世界をつくるためのエネルギー問題・地球温暖化問題での解決の方向性は示されていましたが、食料問題などの問題については述べられていませんでした。なにか参考になる本はないかと探しているときに出会ったのがこの本です。

 キューバは、「1000万以上の規模で、国をあげて持続可能な社会づくりに挑戦し、まがりなりにもそれをある程度実現している」国です。

「かつて1200万トンの石油をソ連から輸入していたキューバは、90年代初頭のソ連崩壊とアメリカ経済封鎖の強化によって未曾有の経済崩壊に見舞われた。このため、いまは、国産原油など400万トンだけでやりくりしている。地球温暖化防止には、エネルギー消費量の削減が最重要課題だが、キューバは幸か不幸か、軽く6割近い削減を達成している」「国土の14%まで減っていた森林は、2015年には28%まで復元される見込みだし、海岸では、石油浚渫や観光開発樹木の伐採を管理規制する沿岸保護システムがある」「キューバでは持続可能な有機農業モデルが広がり、2002年には都市農業だけで20万トン以上の収穫をあげ」ているなどの事実は注目に値すると思います。

 キューバも以前からこういう持続可能な国づくりをおこなっていたわけではありません。「かつては、東側共産圏の中での国際分業というグローバリゼーションの中で、きわめて深刻な国土の荒廃と環境破壊を招いてしまっていたし、10年前のソ連崩壊以降は、一歩間違えれば大量の餓死者を出しかねない深刻な危機に直面し」ていました。

 この本では、アメリカの経済封鎖もあり大変な困難の中、どのように持続可能な社会づくりを行なってきたかについても具体的に書かれています。

 キューバは日本に比べれば貧しいし、技術的にも劣った国です。そういう国でなぜこれだけの成果を達成できているのでしょうか。それは「教育を受けた人材やそれを動かすための社会制度や組織がなければ、いくら技術だけがあっても、環境保全はできない」のであって、キューバにはそれだけの社会制度や組織があるということではないでしょうか。持続可能な社会づくりのうえで日本がキューバから学ぶべきものは多いのではないでしょうか。

 「社会主義という体制の壁やカストロの独裁という偏見を越えて、環境の世紀に向けて日本との交流がより進展し、両国のみならず地球全体の環境改善にささやかでも寄与できることを筆者は望んでいる」という言葉に大いに共感させられました。

ウェブサイトの声 書評 小島 香子さん 2004年5月20日

 キューバと言えば、私を含め多くの日本人の頭に思い浮かぶのは「キューバ革命」、「キューバ危機」といったワードであろう。米国からは目と鼻の先にありながら、カストロ議長による独裁政治が行われている社会主義国であり、緩和が進められつつあるとはいえ長期にわたって米国からの経済封鎖を受けている。日本人は海外旅行好きで知られるが、このように否定的なイメージが先行するキューバという国に関心を寄せる日本人は多くないだろうし、関心を持たれていないがためにこの国の実情が知られる機会も少ない。そのように「(日本人にとって)知られざる国」であるカリブの小国キューバを、本書で著者は「国をあげて持続可能な地域づくりを目指し、それをある程度実現している国である」として紹介している。

 本書ではキューバがいかに国全体を持続可能な社会へと変身させることができたか、様々な取り組みを挙げながらその過程を説明しているが、そもそもキューバがそのような奮闘を開始したきっかけはソ連圏の崩壊とアメリカの経済封鎖にあった。食糧、水、電気、生活物資が窮乏する中、社会主義体制の利点を生かし、国をあげて互いに助け合うことで有機野菜の自給を達成し、環境破壊から国土を救うために自然再生事業に力を入れ、またその事業によって雇用を確保することに成功したのである。

 そんなキューバの取り組みを記載したこの本は、全577ページと非常に分厚い本となっている。それだけこの本にはキューバの地域づくりのさまざまな取り組みの過程が詳細に記載されているのである。その理由として、著者はあとがきとして次のように述べている。「キューバの取り組みが象徴するように、持続可能な地域づくりというテーマは、農林水産業、教育、医療、福祉、エネルギーとあらゆる要素が複雑に絡みあっている。ならば、一個の生活者の立場、あるいはコミュニティでもいいのだが、ある地域に暮らす人間が生き生きと光り輝く人生を送るためには、どのような政策が必要なのかという視点から発想したほうが、この国に本当に根づかさなければならない地域政策、それを担保すべき国家ガバナンス、そしてグローバルな連帯がどうあるべきか、も垣間見えてくるのではないか。そう思ったのである」。つまり著者が目指したのは、まさに“Think Locally, Act Glocally”という姿勢で地域づくりに励んでいるキューバの姿を、キューバを含めた途上国の開発問題または環境問題に無関心になりがちな日本人に伝えることだったのではないかと思う。

 この本の「1000万人が反グローバリズムで自給・自立できるわけ」というタイトルを見て、日本の人々はどのように思うだろう。まるでキューバが鎖国でもしているかのような印象を受けるのではなかろうか。米国が中心となって進めるグローバリゼーションに、多くの日本人は疑問を持たず、世界を一つに結びつけるための絶対的に良いシステムとして受け止めている。それゆえ「反グローバリズム」と聞けば国際的な協調それ自体を拒み、孤立しているようなイメージを持つ。だが、キューバは国際的に孤立しているわけでは決してなく、独裁者と言われるカストロ議長も環境サミット等に多く出席し、持続可能な地域づくりを中心となって進めてきた身ならではの名演説を行っている。また、自然再生事業に携わる市民への給与は国連などの国際機関からの支援でまかなわれている部分も大きい。キューバが行ってきた取り組みは、北朝鮮やベネズエラなどのモデルにもなりつつある。つまり、キューバが掲げる「反グローバリゼーション」とは、途上国の事情を顧みない米国主導のグローバリゼーション(アメリカナイゼーションと言い換えることも可能であろう)に反旗を翻し、途上国に真に根づかさなければならない地域政策やそれを担保すべき国家ガバナンスのあり方を政府と市民が一体となって考えていくことでグローバルな連帯のあり方をさぐる、グローカルな姿勢なのだ。

 日本はとかく米国に盲目的に追従しがちだが、この本の読者がキューバの行ってきた取り組みを知り、グローバリゼーションという米国主導の世界の画一化だけではなく、キューバが行っているようなグローカリゼーションという形での国際協調にも目を向けていくことの必要性を、本書は訴えている。

ウェブサイトの声 スローな私 2004年5月2日

 僕が一番違和感を感じているのが、新聞を読むと、「Happy」=「景気」=「消費」となっているところです。それは市場経済では当たっているんだろうけど、いっぱい物を買って、消費して、それで景気がよくなって、そうならないと、景気が悪くなって生活が苦しくなる、というのは、何だか終わりのないラットレースというか、泥沼にはまり込んでいるような気がします。そこで、僕が昨日注文した本が、「1000万人が反グローバリズムで自給・自立できるわけ」という本です。

 日経ビジネスの書評をまとめると、ソ連の崩壊、冷戦の終結、米国による経済封鎖で経済的に苦しい立場にいたキューバは、求めたわけではないだろうが、世界最高峰の「スローライフ」を実践する国となっている。「暮らしに本当に必要なモノだけを消費せよ」というスローガンで、にリサイクルにリサイクルを重ねてムダのないスローライフの境地の日本の江戸時代のように持続可能な社会へとつながっている。「本書には、これまで国に頼り、東京を目指し続けてきた日本の地方(田舎)にとっての目指すべき方向や価値観のヒントが含まれている」。

 ちょっとお勉強して、キューバ的スローライフを生活に取り入れてみようと思います。

ウェブサイトの声 森林大国の正体みたり・・

 日本は、国土のおよそ7割が森林で覆われる、世界でも有数の緑に恵まれた国だといわれる。自分も、山に囲まれたところで育ったし、それは、無条件で、とてもすばらしいことだと思っていた。確かにすばらしいことはすばらしいのだが、少し認識を改めなければならないかもしれない。

「1000万人が反グローバリズムで自給・自立できるわけ」という本を読んでいるのだが、その中で紹介されている話。実は、日本も、明治のころまでは、はげ山が目立ち、そのころやってきた外国人もその様子に驚く程だったのだそうだ。なんとなく、100年前なら、もっと緑が濃かったはずだと思い込んでいたが、意外だった。原因は、燃料として薪を大量に消費していたことによるものだった。そして、そんな状態だった山々が、現在、再び、みっしりと緑に覆われた状態になっているのは、石油というエネルギーを輸入しているからに過ぎないというのである。結局、日本列島の豊富な緑も化石燃料の消費によって維持されているといえるのだ。将来、少し状況が変われば、薪をはじめとするバイオマス資源の取り合いになるに違いない、と考えている人もいるそうである。

 エネルギーとして薪を使うと、あっという間に緑は食いつぶされてしまうものらしい。化石燃料を使うのはやめて、バイオマスに転換しようとする試みも徐々に進んでいるようだが、前提条件はしっかりと考えなければならない。今の日本、思わぬものが、石油に支えられていたりするのだ。

ウェブサイトの声

「1000万人が反グローバリズムで自給・自立できるわけ」という本をちょびちょびと読んでいる。これはずいぶんと分厚いので時間がかかりそうだが僕が最近気になる、スロー&環境問題&農林業&食すべてを網羅している題名(あくまで題名!)なのでなんだか怪しいとは思いつつも避けて通るわけにはいかないなぁと思い読み始めた。実はキューバと有機農業関連の本は書店で見るだけでもかなりの数が出版されている。

 では何が怪しいのか。つまりキューバ危機後、エネルギー不足や資金不足に陥ったキューバがカストロ政権下で自給農業を達成し資源の持続的利用を目指して突き進んでいるという絵に書いたような理想郷を描いているように思われる点。得てしてこの手の本は、現地から発信される、良い部分のみを取り扱って負の側面を見逃しがちだ。文化大革命を考えてみればその危うさがわかる。

ウェブサイトの声 セタきのこ 2004年1月8日

  高い。3600円。しかも厚い。570ページ。でも買って良かった。しっかりとした研究に基づく理論的な文章、政策の背景にある歴史も交えて分かり易く書かかれている。現代のキューバの国内政策を紹介、住民と自然保護、エコツーリズム、河の再生 バイオと伝統的な知恵、有機水田とバイオ、マングローブ、ダムの関係、生活と自給とバイオテク 微生物で石油汚染を防ぐ 濾過機でおいしい水を、生ごみとミミズ、環境アセスメントとリゾート失敗と解答、反グローバリズムの中の地域自給へ向かう途上国、参政率95%以上、キューバの教育、自然と調和していた江戸、職人国家を超えてカストロの見る夢。

 目次ではありませんが、以上のような内容です。すごく面白くて、多くの人に読んでほしいのです。農学 歴史学 社会学 政治学 観光学 スペイン語勉強している人。色んな人にお勧めです! 。

読書カードの声(28歳男性)

 フィデル・カストロのカリスマ性、チェ・ゲバラ、ホセ・マルティの思想・実践に魅せられた。地球の持続可能な開発に寄与できる仕事をしたい。

読書カードの声(65歳男性)

 ソ連は真の共産主義社会ではなかった。崩壊は当然だった。キューバの最近の姿を知りたかったので、大変勉強になりました。国民が主人公の政策に驚きました。カストロの演説はいい。日本国民にもっと知らせて欲しい。世界人類の持続可能性のために。