書評など
    

●有機農業が国を変えた 沖縄タイムズ (2003年3月19日 与那嶺 盛男 南部地区農業委員会会長)
 沖縄農業は、戦後多くの変遷を経て今日に至ってきた。戦後の生きるための自給時代、昭和30年代砂糖の国際価格高騰によるサトウキビの増産時代を迎えることになる。
 昭和50年代は本土復帰に伴いサヤインゲンやカボチャなど出荷野菜が次々登場し、花卉生産額は150億円にも達し、本土出荷ピーク時にはチャーター機も飛んだ。
 時代は変わり、平成に入ると健康食ブームに乗りゴーヤ、シークワーサーなどに加え、ウコン、アロエなどの薬草類も脚光を浴びるようになった。ところが、平成12年頃から環境問題が大きく取り上げられ、世界的規模でその運動が展開、食の安全・安心が大きな社会問題となった。
 近代農業を急ぐあまり、化学肥料や農薬などを多量に使用し、劣悪なまでに地力を減退させた。環境汚染など深く反省するときが来たと思う。
 カリブ海の真珠といわれたキューバは、世界有数の砂糖産地。戦略的にその砂糖を国際相場の4倍でソ連に輸出。その見返りに生活物資や石油、化学肥料、農薬、家畜飼料などを輸入するソ連依存の経済体制だった。ところが、ソ連崩壊にして一夜にしてそれらの資材が入らなくなり、深刻な食糧危機に陥った。
 キューバは官民をあげて有機農業による食糧自給運動を大々的に展開、これまで行われてきた大規模な国営農場を解体、新しい共同農場を誕生させた。
 200万都市、首都ハバナでも空き地やゴミ捨て場まで、だれでも畑にできる制度や自由市場の開設など涙ぐましい取り組みを行ない、見事な生産基盤をつくり上げ、奇跡の回復がなされた。
 キューバは亜熱帯病害虫の発生しやすい土地柄で従来農薬に頼り、あまり見向きもされなかった虫よけの不思議な木、ニームが登場した。これに農業省の植物防疫研究所が着目、約40種の植物で効能が研究され、病害虫を90%減らす天然資材として開発、今では全国に百万本植栽されている。
 一昨年、第四回有機農業国際会議がキューバで開かれ、多くの学者がミミズを利用した堆肥づくりや微生物肥料の活用、ニームによる病害虫防除など発展途上国の先進技術が高く評価された。(中略)
 3月20日、JА糸満二階ホールで東京都農林水産部の吉田太郎氏ら三人の講師を招き、講演会を開催する。関係者多数の参加をお願いしたい。


●有機農業が国を変えた 全国農業新聞(2002年11月22日)
 カリブ海に浮かぶキューバでは、国を挙げて有機農業を進めている。以前はソ連型の近代農業を目指していたが、ソ連解体後に石油、肥料、農薬などが輸入できなくなり、仕方なく有機農業に転換した経緯がある。
 物がなければ人は工夫を重ねる。牛耕を復活させ、地域の気候・土質を研究し、ミミズたい肥、バイオ農薬などを生み出した。今ではこれらが有力な輸出品に成長した。
 小学校から大学までの教育が無料。実作業を通した農業教育を採り入れ、「汗の価値を忘れない人間教育」を貫いている。大学教授より農民の所得が高い国なのだ。

有機農業が国を変えた ふぇみん (2002年10月25日)
 副題に「小さなキューバの大きな実験とある。90年までは旧ソ連の援助も有、筋金入りの近代農業が追求されてきた。数万ヘクタールの大規模農場を大型トラクターが走り回り、飛行機が空から米の種モミを蒔く。大量の農薬と化学肥料が散布され、栽培品目の大半はサトウキビ、柑橘類など換金作物。食料自給率は40%程度にすぎなかった。
 それが91年のソ連崩壊にともなう深刻な経済危機、アメリカの徹底的な経済封鎖が追い打ちをかけ、未曾有の経済崩壊と食料危機に直面する。農業生産量、輸入食料ともに半減し、栄養失調で5万人以上が一時的に失明したという。革命以来の指導者カストロは、「食料問題が最優先」と国を戦時経済体制下においた。
 ここからダイナミックな国をあげての有機農業への大転換がはじまる。本書では、キューバが世界で最も進んだ有機農業国といわれるまでになったこの10年の実践を現地での取材をもとにあきらかにする。
 規模を縮小して栽培品目を多様化し、農業と畜産を合体させ、糞尿を堆肥化するなど、循環型の持続可能な農業を実現させたこの国の取り組みが具体的に語られる。

●「著者に会いたい」朝日新聞(2002年9月15日)
「ここは一つのユートピアだ」と思った。カリブ海の国キューバのことである。 社会主義国キューバでは、ソ連崩壊後に米国の経済封鎖が追い打ちをかけ、輸入が激減した。中でも自給率40%の食糧問題は切実だった。化学肥料が不足し、やむにやまれず有機農業を復活させる。日本では安全と付加価値という視点でしか見られない有機農業で、自給を取り戻した。

 なぜキューバで有機農業が成功したのか。その答えを、欧州のエコロジストたちとも親しい著者は何度も現地を訪れて考えてきた。『200万都市が〜』にはハバナを中心とする環境問題全般が、『有機農業が〜』には国全体の農業環境がリポートされている。 61年、東京生まれ。現在は東京都の農業振興課に勤務する。鳥獣害対策が主な仕事だ。都市農業は学生時代からのテーマだった。有機農業の里で、漫画『夏子の酒』の舞台の一つ埼玉県小川町にある霜里農場で修業した。農場を営む「師匠」金子美登さんにすすめられて役人になった。 統計上ではキューバは貧乏な国だ。しかし、医療や教育が保障された生活、国を挙げて危機を乗り越えた事実を吉田さんは見た。疲れて希望をなくしている日本では、不景気、リストラ、管理社会と嫌になる話ばかり。豊かさとは何だろうと考えさせられる。

 「成功している面だけを見たのかもしれません。でも、私には悪い国とは思えない」

 穀物の7割を輸入に頼る日本で、同じように輸入が止まったらどうなるのか。また、化学肥料の原料は鉱石など限りある資源だという現実も忘れてはいけない。 今春まで3年間、伊豆大島で、都会人が農山村で自然を楽しむグリーンツーリズムに携わった。屋上緑化や休日農業の増加、NGOの活動などに変革への希望を見る。

 「とにかく自分で野菜を作ってみることです。最高の味ですよ」

●ガバナンス 2002年9月号

 前実はキューバは世界でも類を見ない有機農業先進国である。社会主義経済圏の崩壊に伴い、徹底した国際分業体制をとっていたキューバは深刻な食糧危機に陥った。その苦境を克服するために国をあげて取り組んだのが有機農業であり、自給体制の構築である。原罪、日本も極端な国際分業体制をとっているが、もしその体制に亀裂が入ったら? この想像を「一笑に付す」ことは危険ではないか。


●読者より
 有機農業の先進国といえば、ヨーロッパ諸国を連想しがちです。でも、ヨーロッパは米作が殆どなく、冷涼で小雨であるため、有機農業の理念や政策面では参考になっても、技術面では我が国にそのまま適応できるものは限られています。
 この本は、我が国と似た条件(米を主食にし,多雨で夏に暑くなる)キューバが国を挙げて有機農業に取り組んでいる状況を技術面と政策面についてバランスよくまとめた良書であります。
 また,都市住民の自給用菜園や子供たちに食や農の尊さを教える食農教育の取り組みも丁寧にまとめています。
 BSEや農薬まみれの中国産野菜に代表される食の安全性が注目されている今、農業者や農業関係者必読といえるでしょう。(AMAZON.COM/読者からの投稿)

ウェブサイトの声 「有機農業が国を変えた」(2002年11月24日金丸弘美)

 とても面白い本が出ました。もうご存じかもしれませんがご紹介します。キューバは、ソ連崩壊後、ガソリンも農薬も化学肥料も入ってこなくなり、それまでの近代農業を辞めざるを得なくなり、カストロ政権は1991年、国全体を有機農業に大転換しました。
 これはその詳細なレポートです。著者の吉田太郎さんが、有機農業のメンバーであるため、レポートの農業の取り組みや体制が非常に具体的で、わかりやすく書かれています。これは必見です。なにせ、メダカのがっこうで考えてるようなことが、なんとキューバでは形になって実現してしまっているのです。
 スローフード運動もキューバの取り組みも、肝心なことは、その政策に、農業の「経済的振興」が、方針として明確にあり、その実績を具体的に作りあげているところが、かなり日本とは違います。

ウェブサイトの声 有機農業で再生したキューバ(2002年10月1日 坂井貴司)

 政治か音楽で語られることが多かったカリブ海のキューバを、有機農業の視点で語る画期的な本が出版されました。
 1991年のソビエト崩壊後、キューバは深刻な食糧不足に見舞われました。ソビエトに砂糖を輸出し、食料や石油を輸入するということができなくなったからです。これにカストロ政権崩壊をもくろむアメリカの経済封鎖が追い打ちをかけました。
 しかし、上記の本によればキューバは官民挙げて有機農業に取り組み、食料自給に成功したとのことです。それは、都市の空き地やゴミ捨て場を農地に変え、輸入ができなくなった農薬や化学肥料に代わって天敵昆虫や微生物を研究・投入することで可能にした、とのことです。特に、人口の8割が集中する都市が有機農業の舞台になったことが特徴です。この政策によって都市部は米の65%、生野菜の46%、オレンジをのぞく果樹類の38%を生産できるようになった(1999年)ということです。
にわかには信じられません。しかし、あれほど騒がれていたキューバの食料不足がこのごろ伝えられないところを見れば、これは本当に起こったことだと思います。これは、有機農業による第2次キューバ革命ではなかろうかとさえ思います。

ウェブサイトの声 有機農業が国を変えた (2002年8月17日 イーエスブック)
 地球の裏側、キューバからの衝撃レポート。キューバは、環境後進国である日本からは信じられないほど、有機農業が実践的に進んでいます。本書は、経済危機から有機農業の必要性が生まれ、現在にいたるまでのキューバ農業の足跡を追います。