書評など
    

百姓仕事で世界は変わる 日本農業新聞 2006年3月20日

 ヨーロッパでの地産地消やスローフード、キューバやグァテマラの有機農業、アジア各地で広がる不耕起農法、、、、。グローバル化やコストダウン競争にほんろうされる農業とはいささか毛色が違った世界の農業の新たな胎動や自然と暮らしの姿を、52カ国でのフィールドワークを基にイギリスを代表する環境社会学者が描き出す。日本の類書とは異なり、はるかに大きな時間的・空間的スケールで農業と自然との関係をとらえ、持続可能な社会を構築する道筋を深く考察している。  

本と出会う・世界農業の新たな潮流 毎日新聞 2006年3月19日 

 スローフードや有機農業への関心が日本農業に与える影響を英・エセックス大生物科学部長のJ・プレティさんが解説する「百姓仕事で世界は変わる」が、築地書館から出版された。ヨーロッパでの地産池消やキューバでの有機農業など食の安全・安心にむけた生産者の活動まで、遺伝子組換えの功罪などを幅広く網羅した。翻訳者の吉田さんはキューバの農業についての著作もある長野県農政部職員。吉田さんの解説がわかりやすい。

吉田さんの書評解説。スローフードや有機農業への関心が日本農業に与える影響は、訳者である吉田さんがあとがきで書いているだけで、J・プレティさんは解説していません。なるほど本の中でプレティさんは、日本について多くのページを割いています。例えば、江戸時代の日本文化の持つ価値を建築家、黒川紀章氏の主張をもとに解説していますし(第2章)、「里山」の持つ治水機能について越谷市の例を取り農村工学研究所の研究成果を引用していますし(第3章)、さらには、環境省からオックスフォードとケンブリッジの両大学に留学されていた中島恵理さんから「海は森の恋人」という日本の魚付き林保全活動のことを知り、これについて触れ(第8章)、日本の伝統集落、ムラの果たしてきた内発的自律力の価値をソーシャル・キャピタルの面から評価した、デューク大学の日本研究者、マーガレット・マッキーン助教授の分析についても紹介しております(第8章)。しかしながら、有機農業への関心が日本農業に与える影響という見地ではなんら言及していません。せっかくのご紹介していただきながら誤解を避ける意味であえて天下の公器たる毎日新聞様にコメントさせていただきました。