これはオマケルートをネタにしています。




◆和さんが皆から愛されてます。
◆そして日織が最初から和さん大好きです。
◆納得するにはかなり無理のあるご都合ネタが出てきます。
◆暗石さんが優遇されてます。
◆そこはかとなく臭いますが、一応オールキャラギャグで特定カプネタではありません。



以上の事で一つでも駄目だと思った方は読まないで下さい。
オールオッケーな方だけ、先にお進み下さい。












みえるひとびと 01

















「いやだーッ、もういやだあああッ!」





御陵があっさりと(?)自白したことにより、多少のぎこちなさを残しつつも平穏を取り戻した館の中で。




「日織助けて、僕もうやだよーッ!」


朝も早くから、今回の事件において最大の功労者かつ最大の被害者である、一柳和の悲鳴が盛大に響き渡っていた。


「お願い、何とかしてッ」
「そんなこと言われましても…生憎俺には全然見えねぇんで。
和さんのためにどうにかしてぇと思っても、こればっかりは一体何をどうしたらいいのかてんで判りませんや」
「そんなぁーッ」

その訳は、てっきり成仏したと思っていた斑井が舞い戻って来ただけでなく、彼が強烈極まりない姿の四倉を引き連れ和の元へと現れていることによるものだった。

「うるせえな、朝から何騒いでんだッ」
「あ、椿くん助けて!」
「おや、邪魔が入りましたか」

和達の部屋が近いせいか、日織を除くと一番最初に悲鳴を聞き付けたらしい椿が駆け付けてみれば。

「何だよ和、お前泣いてんのか?」

もはや半狂乱になって泣いている和と、そんな和にしがみつかれながら(でもしっかりと抱き返してあまつさえ頭を撫でて)困惑している日織の姿。

「ああ、和さんは俺がなだめときますから。お気遣いはいりませんぜ椿さん」
「聞いて椿くん、増えたッ」
「こいつが泣いてたら放っておけねぇって。で、増えたって…何が」
「み、見えちゃいけないものが…」
「はぁ?」

怯えて助けを求めることが精一杯な和は、自分の頭の上で軽く飛び交う火花に全く気付くことはなく。

「斑井さんだけじゃないんだよぉ!」
「…あーと、落ち着け和。ちゃんと話を聞いてやるから、まず落ち着け。な?
っつーかいつまでも日織なんかにしがみついてねぇで、どうせなら俺んとこ来い」
「わーん、やっぱりいるーっ!」

椿から肩を捕まれた和は、少し顔を上げては無遠慮に視界に入り込むものに悲鳴をあげる。

「ちょいと、朝っぱらから冗談言っちゃあいけませんぜ、椿さん」
「悪ィけど、俺は冗談なんか言ってねぇよ。そんな事より、あのおっさん成仏したんじゃなかったのか?」
「したと思ったら帰ってきた…」
「んなアホな」
「アホでもなんでも帰ってきてるんだもん!実際そこにいるんだもん!!四倉さんも遠慮がちに椿くんの背後からこっち見てるしーっ!
やだやだ顔近付けないでごめんなさい分かりましたから近寄らないでいやだ怖いーッ」
「うーん…これはちょいと困りましたねぇ」

朝からばちばちと音がしそうな程に火花を散らす二人には、やはり全く見えてはいないのだが。
それに気付かず怯える和の視界には、あいかわらずだらだらと自慢と愚痴と虚栄とをまぜこぜにして一人話し続ける斑井と。
そして顔が潰されているせいか話すことが出来ないものの、それでも何とかジェスチャーで和に礼を伝えようとしている四倉の姿があった。

「もう嫌だ……もう眠りたい…いっそ気を失いたい…」
「あんたは俺がこうして抱いて守りますから、眠るんならそれでも構いませんぜ。
むしろ和さんのお望み通り、幽霊のことなんざ気にならなくなるようなことを、アンタが気を失うまでしてあげましょうか?」
「何嬉しそうに言ってんだッ?つか手前ぇ和に何をする気…」
「なぁ、朝からえらい賑やかやけど、お兄さん一体どないしたん?」
「和たん、しっくすせんすぜっこうちょー?」
「また邪魔が増えましたか…」
「うわ、ややこしくなるのが出やがった…」

そうこうしているうちに騒ぎを聞き付けたのか、双子まで和達の部屋へやって来て、えぐえぐと泣き続ける和を見ては何やら企んだ笑みを浮かべていた。

「お二人さん。今和さんは一杯一杯なんです、そっとしといておくんなさい」
「和たん、こっちこっち。着長しさんは硬い」
「うん、しがみつくのに感触は大事やでお兄さん。絶対お姉ちゃんの方がええ」
「…お前等全然和の心配してねぇだろ」

双子は日織にしがみついて顔を埋めている和を両方から引っ張り、反対側にある和のベッドへと連れていこうとしたのだが。

「な、なに…うわうわうわッ、いやだ今顔を上げたら見えちゃうんだよ、やだーッ!」

その時少しだけ顔を上げたところ、待ってましたと言わんばかりに斑井と四倉が近付いてきたせいで、和はまた成りふり構わず渾身の力でまた日織にしがみついた。

「着流しさんずるい!うちらかてお兄さん慰めたいわ」
「もういいです結構です、お願いだからもう成仏してぇっ」
「うん、ずるい。和たん独り占め反対」
「僕は怖い話一切駄目ですお願いやめてー!」
「お前ら本ッ気で和の心配してねぇな?!それどころか遊ぶ気満々だなッ!?」
「やです今斑井さんと写真なんて撮ったら、よしんば写っててもそれは立派に心霊写真ですよぅ!」
「何言うてんの、アンタかてお兄さん構いたい言うんは一緒のくせに。うちらだけがおかしいみたいな言い方せんといてぇな」
「死んでまでオカルトに興味持たなくていいですーっ!」
「和たんもてもてー」
「そいつは否定できませんが、生憎俺は、この役を誰かに譲るつもりは更々ありません」

目を閉じて姿を見ないようにしても、他者には聞こえぬ音無き声に和が一人反応してしまっているというのに。
霊感を全く持ち合わせない連中は、全員本人の意志そっちのけで争奪戦を始める始末。




「なぁお兄さん、泣き顔見せてぇな」
「和たん、ぷりてぃーふぇいす見せて」
「日織、俺と替われって」
「いけませんや皆さん…あ」
「う、わ…っ」



しかし、いつまでも自分達を見ようとしない(和にしてみたら出来ないが正しいのだが)ことに焦れたのか、双子と椿が揃って和を引っ張ったところ。
勢いよく後ろに引かれ、それに驚いて目を見開いてしまった和は、斑井よりも四倉の方を間近で視界に捉えてしまい。







「っぎゃーーーーーッ!!」








その強烈な姿に、本日最大音量の悲鳴と共に、とうとう意識を手放してしまった。









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