そんなつもりはないけれど。
ざあざあと、きこえるのはそれだけの、まっくらなところで。
さむいよ、って。
おなかがすいたよ、って。
たくさんたくさん、そういって「だれか」をよんだけど。
ぼくは、ずっとぼくだけで。
まっくらな「ここ」で、「だれか」をよぶのもつかれちゃって。
ざあざあっておともきこえなくなるくらい、ねむくてねむくて、だからもうねちゃおうなんておもって。
でも、もういちどだけ「だれか」をよんでねむろうとしたら。
いきなりあかるくなって。
ざあざあっておともきこえて。
それじゃないおともきこえてきたんだけど、それがなにかなんてたしかめることもできないくらい、ぼくはねむたかったから。
…なんかとってもあったかいな、っておもったあとは、なんにもおぼえてない。
でも。
つぎにめがさめたとき、とてもあったかくて、とてもとても、あったかくて。
あったかいな、っておもったら、おなかがすいてるのもおもいだしちゃって。
「おいしい」をちょうだいって、いっしょうけんめいないたら。
「体力つけねえといけねえんです、しっかり飲んでくだせえよ」
あったかいが、たくさんと。
ぼくがしってるのとはちょっとちがったけど、すごくいいにおいがして。
「よし、こんだけ飲む元気がありゃなんとかなるだろうよ」
「ええ、ひとまず安心でさあ」
ぼくはすごくうれしくて、でもあったかいそこからうまく出られなくて。
いいにおいがするほうにがんばってからだをのばして、いいにおいをちょうだいってなこうとしたとき、いいにおいの「おいしい」がくちにはいってきて。
「さて、なんて名前にしましょうか?」
なんかいわれたようなきがしたけど、ぼくは「おいしい」をなめるのにむちゅうだったから、それがなんだったかなんてしらないけど。
あったかいをくれた「だれか」に、あったかい「おいしい」をありがとう、ってないたらね?
「…アンタ、それがいいんですかい?」
いきなりおいしいがなくなって。
もっとちょうだい!って、ないたらね?
「こいつが返事をしたんだ。何か文句あんのか?」
「…ありません」
「なら決まりだろうが」
なんかよくわかんないけど、なにかきまったらしくてね?
「おいチビすけ。お前の名前は【和】だ。【なごむ】、だからな。早く覚えろよ」
…それってなに?