名前を覚えました。



おなかがいっぱいで、ぼくがしってるのとはちょっとちがうあったかいにつつまれて。
ぬくぬくするそこがきもちよくて、ぼくはきもちがよくてうとうとしてたけど。

「かわいい…!」

もそもそってからだをゆすられて、どうしたんだろうってめをあけたら、そこにまたしらない「だれか」がいたんだけど。

『こんにちは』
『こ、こんにち…は?』

しらない「だれか」じゃない「だれか」にはなしかけられて、もっとびっくりしちゃった。
ぼくとおなじじゃないけど、でも、あったかいの「だれか」とはちがう「だれか」だから、なんかもっとおはなししたくて、あったかいからでようとしたのに。
…きがついたら、なんかへんなにおいのするところにつれてこられちゃった。

「目は大丈夫、耳もノミダニ問題なし、四肢問題なし、と。それとこの子、男の子ですね」
『な、なに、なに!?』
「和さん、ちょっとの辛抱ですから落ち着いて!」
「…落ち着くのはお前の方だ」
「ちょ…こ、これだけ元気があったら大丈夫だと思うんだけど…。京香先生、検温どうしますか?」
「もちろんします。ちょっと我慢してね…あら那須さん、邪魔しちゃ駄目よ?」
『あ、そうか。診察受けなきゃいけないんだよね』
『???????』

ぐにぐにとか、さすさすとか、とんとんとか、あーんとか。
なんかあんまりうれしくないこといっぱいされて、もうやだようってなこうとしたら、だいじょうぶだよっていって、ちがう「だれか」がぼくのかおをなめてくれた。

『やー!!』
「和さんしっかり!」
「…だから。しっかりするのは和じゃなくてお前の方だ」
『大丈夫だから、ちょっと我慢しようね』

ぐにって、なんかおしりにはいって、それがきもちわるいようってないたら、またちがう「だれか」がぼくのかおをなめてくれたから。

『これなにしてるの…?』
『診察だよ』

ぼくはきもちわるいをがまんして、でもやっぱりなきながらちがう「だれか」にうったえちゃった。

『大丈夫、君、何処か悪そうなところはないみたいだし、きっともうすぐ終わるよ』
『ほんとう…?』
『うん』

さわぐだけさわいだらつかれちゃって、もうやだってさわぐげんきもなくて。
そしてちがう「だれか」にかおをなめてもらうと、ぼくがしってるあったかいもおもいだしちゃって、なんだかものすごくさみしくなっちゃって。
しってるあったかいのところにかえりたいって、そうないたらちがう「だれか」が「え?」ってききかえしてきてくるから、なんかびっくりしてなくのわすれちゃった。

『なに言ってるんだい。帰るならこの人たちと一緒に帰らなきゃ駄目だよ、和くん』
『…なごむくん?それ、なに??』
『なにって…『和』はきみの名前だろう?』
『なま、え?』
『そう。名前。君の名前は『和』。男の子だから『和』くんだね。『なごむ』ってそう呼ばれたら自分の事だって覚えるといいんだよ。ちなみに僕の名前は『那須さん』だよ、よろしくね』

さっきあったかい「だれか」からきかされてた『なごむ』っていうのが、ぼくをよんでるってことをおしえてもらった。





『…なごむは、ぼく?』





なごむってよばれたら、それはぼくのこと。
それから『なすさん』っていうのが、このぼくのめのまえにいるちがう「だれか」のこと。
じゃあ、そうしたら。





…ぼくがしってるのとはちょっとちがうあったかいは、なに?



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