式神使い達の円舞 01
血なまぐさい歓迎せざる事件があって、知り合って。
そんな殺伐とした出会いでも、それでも確かに交わって。
…無関心を装うには、皆、あの時に力をあわせ過ぎた。
◆ふみこの屋敷調理場・小夜と金
「本当にこれでうまくできるのでしょうか…?」
「できますよ。…小夜サンがじっと我慢する、出来ればですがね」
もう何度目か判らないその呟きを口にする小夜に、尋ねられた金は呆れることなく、これまた何度目になるのか判らない同じ返事を返して本を読んでいる。
「あと、どれくらいなのでしょうか?」
「タイマーの残り時間は?」
「は、はいっ、ええと…」
「…あ、焼きあがっていないのに、開けてはイケマセンよ!」
「………はい」
ついうっかりオーブンの扉を開けそうになっていた小夜は、金の制止の声にかろうじて動きを止めた。
「そ、そうでした…。開けてばかりいたから、何度も生焼けになっていたのでした…」
開けはしなかったが、もういい加減失敗は出来ないと、そのことが気になって小夜はオーブンの前から離れることが出来ない。
先ほどから金に教えられた通り、自分なりにちゃんと作ってはいるのだけれど。
努力の甲斐も空しく、金の側にあるテーブルには産業廃棄物と化した、食べ物の成れの果てが山積みになっている。
「どうか上手く焼きあがりますように…」
居候先のふみこの屋敷の調理場に、約3時間以上もまえから金と小夜は篭もりっきりだった。