第9章 ワニのいる川で水を浴び、雨のジャングルで野宿しながら大河の懐の深さに舌を巻くこと
初PNGバスを釣り上げた後、
」
俺達はレイク=イナリクへとカヌーを進めた
あまりに順調すぎる展開、
やはり落とし穴にはまった・・・・
「トラブル発生だ!」
とエンジンを操縦するワビル。
どうやら変速ギアが動かなくなってしまったらしい!
俺達は一旦浅瀬に移動し、修理を試みた。
岸辺に着き、カバーをあけた
と・・・ポロリ
部品がひとつ川に沈んでいった・・・・
必死で水底を探ること数十分
「あ、あった!!」
しかし・・・・
「ギアの変速部分がポッキリ折れてるよ!
村に帰って数日間、一時交換のための部品を周囲の村で探さなきゃならないよ・・・」
振り出しに戻ってしまった・・・・
こんな僻地で修理部品がすぐ見つかるだろうか?
ここまできて・・・・
あぁ、レイク=イナリクはやはり幻で終わるのか?
が、数分後
「直った!」
とワビル。
!?
よく分からんが、確かにギアは変速してる。
どうやらその辺の金属片やら木屑やらをカマせて応急的にギアシステムが復活した!!
やったぜ、ワビル!!
工具もない、専門知識もない
でも工夫と気転で与えられた条件を最大限に生かす
この事件だけではない。
彼らは本当に物をうまく使う。
「たくましさ」
それを彼らに教わったような気がする。
その晩、俺達は川辺の小屋に泊まった。
ワニ漁の期間、誰もが中継宿泊地点として使えるよう、
ここらでは何箇所かに高床小屋が建っているのだ。
俺はそれを川の駅と呼んだ
サラトガが焼け、PNGバスの入ったなべからいいにおいがする。
一日を振り返りながら
そのあまりの時間の濃さ自分自身で驚いた
PNGバス、バラマンディ、サラトガ、ターポン、
今回の遠征のターゲット四天王のうち三つを、あっさりと達成してしまったのだ。
どこからかワビルがかぼちゃをとって来た。
この川の駅を利用する人が誰でも食べられるように、
毎年誰ともなく植えるのだそうだ。
あまりにぶっきらぼう、あまりに素朴だけれど
水の国に生きる男達の生活
すげぇかっこいい。
川の駅での夕食準備風景。左下はアクアリストが見たら失神しそうなサラトガの頭(汗
手前はかぼちゃを刻むゴートン。奥は蚊帳をはるワビル。
川沿いにはこういう施設がいくつかある。
翌朝
ビスケットと紅茶で早々に食事を済ませ、出発
支流との合流点に来た
ターポンの群れが見える。
俺は昨日と同様、ハルコを投げた。
来た
いきなり75センチ!
が、この魚にはやられてしまった!
写真を撮ろうともち上げようとしたら
暴れて尻尾付近で手を叩かれ、
右手人差し指の爪の半分が吹っ飛ばされた!!
何たるパワー!!何たる鋭利さ!
まるで全身にナイフのウロコをまとっているかのようで、危険すぎる!
船底をバタン、バタンと重量感のある音を立てて暴れまわる!
以後、この魚を持つ時は手をガードすることに・・・・
その後も73、77、と爆釣は続き・・・
そのときは来た!!
うりゃあーーーーっと!
81センチ、終にハチマル捕獲完了!
その後も更に73,76,60と爆釣は続いた・・・・・・
群れで固まってのだろうか?
このサイズが入れ食い!
もう、腕もパンパンだ!
疲労困憊、何たる幸せ!
それは水面でも同じであった
オリノコには子供が飛び込んだかのような水柱が立ち、
Addyにも魚雷が爆発した
手元には重みが乗らないまでも
水面のルアーは一瞬のうちに傷つけられ、
おれは呆然と立ちつくす。
左、カルティバST41の1/0
Sスプークに装着。手元に重みが載っていないのに、バイトご確認すると針がぺちゃんこ
右はST46は1/0
60センチの1番小さい固体に曲げられた。
口の中に入ると、たとえ60センチであろうとこのフックですら平気で曲げる。
おそろしや〜。
俺はこの大河の豊穣さに舌を巻いた。
有史以前の状態とはこういうことをいうのであろう。
フルサイズのルアーが着水、
落雷のような衝撃
竿は限界まで曲がり
船べりの攻防で俺はずぶ濡れになる。
灼熱の太陽、キラキラ光る汗、雫
乳酸のたまったその両腕に感じる怪物の命
至福の時
笑顔、のち雄叫び
風・・・
釣り飽きた俺は正午になる前にイナリクへと更にカヌーを進めた。
ノーシンカーワームを湖底でシェイクする日本の釣り場をふと思った。
悪路を突破し、カヌーは進む。
難所難所を俺たち3人、力を合わせて突破していく。
ボートでは突破できないこんな場所でもシンプルな現地式の丸太カヌーなら強引に突破可能だ!
この難所もワビル、ゴートンが流木をどけ、その隙間を俺がパドルでカヌーをあやつり、突破!
ちなみに、この水の中にもワニは潜む。おそろしや〜。
この日の午後は帰りの夜のことも考え、
ジャングルに俺達だけの基地を作った。
昔ワビルが住んでいたという少し開けた場所
上陸すると無数のトカゲが逃げ惑い、
茶色のアリがとめどなく足を上ってくる
俺達は火をたき、ようやくウザいアリから多少開放された。
昔の家の廃材や、まっすぐな枝を切り取ってくる
そのとき大活躍するのが通称山賊ナイフだ!
バナナとワビルと山賊ナイフ。
日本刀のようなシェイプ。
高いところのヤシの身やバナナもこいつがあれば楽勝!
ナタであり、ナイフであり、のこぎりでもあり、缶切りであり・・・すべてをこなす
それにしてもワビル、いい顔してるなぁ(笑
支柱の先端を尖らせ、大地に思い切り突き刺す。
俺もやってみたが、どうしても深く刺さらない。
「ははは、タクはまだまだガキだなぁ」
とワビル
悔しいが反論できない。
「これだからCITY BOYは使えねぇんだよな〜!笑」
とゴートン
・・・いいもん、俺はCITY BOYの青白少年さ!(笑
あっという間に基地が出来上がっていく!
ブルーシートをかければ完成だ!!
力仕事ではやはり彼らにはかなわない!
俺はワビルがどこからともなく採ってきた木の皮を割き、
組んだ木を縛って固定する役目に回った。
この木の樹皮、通称「ジャングルローブ」
乾燥すると若干ちぢみ、よりしっかりと固定される。
すべてが理にかなったジャングルライフ!
更に俺達は午前中に釣った魚をさばき、焼き干しにして村の人々へのお土産を作った!
4匹さばいた時点で「めんどくさいから後1っぴきは捨てようぜ」
とゴートン。
あまりにも自然が豊かな証拠。
食い物はその辺にいっぱいあるのだ。
だけど俺は殺めた魚は最後まで責任をもつのがポリシーー。
汗だくになりながら、最後の1匹をさばいた。このサイズになると、
1匹さばくだけでも重労働だ。
こんなデカい鯛を捌く機会など、日本では皆無に等しい。
無数のハエがどこからともなく集まってくる。
汚いとは思わなかった
その黒い集団のもつ生命力にただただ圧倒された。
内臓を投げると、瞬く間に真っ黒に埋め尽くされた
リミット達成!!
焼き干しになる前の魚達。食う分だけキープ。
手前から81、77,76、75、73
パプアンバス、現地名ブラックバス。
だとしたらこの重量ならUSAトーナメントも優勝だろうな(笑
推定総重量:余裕で50ポンドオーバー!!
一休み
雑魚を狙って投げた小型ポッパーにサラトガがかかり、びっくり!
一休み
新聞紙巻きタバコで一服
鉄砲魚が毛ばりをつつきに来る
あまりにちっちゃくてフッキングできなかった・・・。
ジャングルの中に何かを探しに行ったワビルが戻ってきた
「100メートル先にワニの家があったぞ!
夜に狩りに行こう
!もしかすると卵も手に入るかもしれないぜ!」
それはイコール
半径100メートル以内に
ワニがいるってことだよね?
・・・・・
ムシの羽音、鳥の声、水しぶき・・・
騒々しいジャングルが、
なぜかとても静かに感じる
夕暮れが迫る
俺達はワニの家の100メートル下流で水浴びをし、体を洗った。
「ジョーズ」の音楽が頭を流れる。
と
ここで事件が・・・・
起こらないでよかった〜(笑
ネタまみれはもうお腹いっぱいです(笑
真っ暗なジャングルに焚き火の炎
パチパチという音が響く。
昼は昼で傷口でハエが手をすり足をする。
夜は夜で生物兵器保有可能性大のモスキトーが忍び寄る。
俺は唯一の安らぎの場所、蚊帳にもぐりこみ目を閉じた
が・・・・
雨
地面にゴザを引いただけ
モロ背中に水が染みてきた。
・・・・・
「マイペンライ、マイペンライ」
ここは楽園、水の国
明日はいよいよイナリクに着く(予定)