西伊豆             H,17,11/2.3
夕方、6時、 「オーイッ!」
下で声がする、 いけねぇ、もうヒロちゃんが来た。
昼に、「悪いな、早く出られない。」って電話が入ったから 7時頃になるだろうと勝手に
決め付けてのんびりしていたら・・・・・。
慌てて支度を済ませて、6時20分、出発ーーー!!。
途中、スーパーで食料を、そして 釣具屋で餌を仕入れる。

いざ、西伊豆へ!。

ラッシュ時だったが 思ったほどの渋滞もなく 9時に目的地へ到着出来た。
海は 大潮の干潮で 岩がむき出してしまっている。
駄目だろうな!。 夜釣りは諦めた。


夜風のそよ吹く 港の片隅で、オーバーズボンにジャンパーを着込んで おでんを温め
る。 そいで、カンパーイ!!。

9ヶ月ぶりの西伊豆である。
やっぱり西伊豆はいいなぁ!。
星の量が違う。 海の色が、香りが違う。
寒さも心地好く 星空の下で酒を飲む。
ウイスキーのお湯割りが旨い!、何杯でもいけるぞ!!。

「もう寝よう!、12時半になる。」
いけない いけない、明日の釣りが出来なくなってしまう。


翌朝は案の定である。ヒロちゃんは7時頃に起きたというが、オレは9時まで寝てしま
った。 おまけに二日酔いである。

目が覚めて外を見たが 漁師のSさんの姿が見えない。
普通なら この時間には 網を繕っているはずなのだが・・・・・。
気になるなぁ〜・・・・・。
大潮休みで 旅行にでも出掛けているのならいいんだが。体調を壊しているんじゃあ
ないだろうな?。 心配である。

車から出て 向こう側で網を繕っている漁師に声を掛けてみた。
「足がしびれるって 一ヶ月位前から入院しているようだよ。 お母さん一人じゃあ漁は
出来ないんで休んでいるよ。」
不安があたってしまった。帰りに家を探して寄ってみようか。


ヒロちゃんは テトラの穴釣りをやっている。
魚の入れ物は持って行ってないから 釣れればニッコニコしながら走って来るはずで
ある。 ということは まだ釣れていないな。


テトラの先端に釣り人が一人いる。大仕掛けの竿が二本。
ピトンをテトラに打ち込んで、手前のバケツにはウニとヤドカリ。
「釣れましたか?。」
「イヤ!、魚信は何も無い。」
「何狙いですか?。」
「石鯛!。」
「エェー!、ここで石鯛が釣れるんですか?。」
たいていの石鯛釣りの人は 渡船に乗って 離岩へ乗っかってやっているようだが。
前にここで釣れた事があったと言う。
「昨日コマセを撒いておいたから 寄っていれば・・・・。」 と云う。
頑張ってほしい。


「さて、オレも竿を出してみるかな。」
「今からですか?。」
「そう、夕べから来たんだけどね。」
「あーっ、キャンプの人ですか。 まだ竿を出してないんですか?。」
もう10時である。
「そう、ここへ来れば もう目的の半分は達したようなもんだから。」
「飲みすぎたんでしょう!。」
ギクッ!。何で知ってんだ・・・・・。
図星である。 しかし初対面の人に言う言葉かねぇ・・・・・。


11時、しょろしょろと支度を始める。
ヒロちゃんは テトラの穴釣りで”疲れた〜!”って、昼寝を始めてしまった。
オレはオレで横着を決め込んで 車の近くの浅場へと 釣り座を決め込む。
今日は疲れる釣りはゴメンだ!。

早速 ウキ釣りのオキアミにベラが来た!。と思ったが、良く見るとチビのブダイであ
る。 幸先がいいぞ!。
その後も続いてブダイが釣れた。小さいけど。
そして、その次は横っ走りをする白い魚。鯵系の名前を知らない魚だ。
魚が釣れるたびに 車へ戻ってバケツに入れていたが、先に入れといた魚が跳ねて
バケツから飛び出してしまっている。
この調子なら、と クーラーを担いで釣り座へ戻ったのだが、魚入れを持ってきたとたん
に釣れなくなってしまった。 ま、よくある事ではあるが。


ヒロちゃんが起きて来た。
「釣れたぞ、隣でやんなよ!。」
ヒロちゃん、クーラーのフタを開けて。
「おぉーー、3匹も。」
「 ・・・・・ 。」
オレ達の釣りが如何に情けないか。たった3匹で 「おぉーー!。」 だとは・・・・・。
まだ 「クククッ!。」って笑わないだけいいか。

ブッ込み竿のサンマの餌に魚信が来た。 合わせをくれてグングン巻く!。
ただ重いだけ。これはウツボだ。
ヒロちゃんは 「何だ??。」って顔で期待をしているが・・・・・。
水面まで来て糸が切れた!。 良かった!。
次にウキ竿にまたブダイ!。20センチクラスが来た。
そして潮止まりか、釣れなくなってしまった。

ウキ竿は餌取りになってしまって 飽きてしまった。
ブッ込み竿に 大物の期待を掛けているのだが、こちらも魚信が小さい。
餌取りである。
「ぼちぼち帰ろうか!。」
少しづつ 車へ荷物を運ぶ。
釣り座へ戻ると 竿がビンビン跳ねている!。
「来たーーーーーっ!!。」
おもいっきり合わせる!。
また ただ重いだけ・・・・・。 ウツボだ。
オッ! 黄色いウツボ!。こいつは喰える奴だ。
「ヒロちゃん、コイツ喰ってみるか!。」
ヒロちゃんにバケツへ入れてもらう。 こいつは噛み付くから気をつけないとな。


帰り際 Sさんの息子が舟で帰って来た。
「親父さんはどうなんですか?。」
「ヘルニアで入院しちゃったんですよ。あと一週間位で退院出来ると思うんだけど。」
息子が釣りに出掛けられる位だから それほど深刻な状態ではなさそうだな。
「また会いに来ますよ!。」
それでも 腰が悪いんじゃあ当分の間は 漁に出られないだろうな。
今度来た時に見舞いに伺う事にしよう。



清水が近くなった所で、Fさんの店へ電話を入れる。
「伊豆の帰りなんだけど 獲物を捌いてもらえるかなぁ?。」
「いいよ!。 飲みに来いよ!!。」
「OK! すぐ行く、たのむねぇ〜!。」
ウツボとは云いにくい。
「ウェーーッ!!、こいつをか〜!。」って云われそうだなぁ。って
ヒロちゃんと笑いながら走る。 さぁて、楽しみだ!!。


Fさんの店に着いて、ビールで乾杯!!。
「おつかれさんでしたぁ〜!!。」

Fさん、ひと通り忙しいのは済んだようだ。
「どぉ、何が釣れた?。」
「ちよっと 云いにくい・・・・・。」
「俺の嫌いなやつか?。」
「たぶん、そのたぐいかと・・・・・。」
「ハモか?。」
「近い!!。」
後ろの席の客が
「アナゴか?。」
「近いけど、遠くなってきた。」
Fさんの店は鰻料理もやってんだから アナゴなんかへのかっぱだよ!。
Fさん、
「わかったーー!!。あれだ、あれ!!。」
どうも解ったようだが、名前が出て来ない。
「云うなよ!、今思い出すからな!!。」
うーーーん、出て来ない・・・・・。 首を捻っている。
ヒロちゃんが助け舟を出す。
「ヒントをあげよう!。あたまが ウッ!。」
「ウ〜〜ッ?????。」
しばらく考えていたが。
「解った!!、ウツボだ!!。」
「ピンポーン!、正解〜!!。」
何となく頼みやすい雰囲気になって来たぞ!。このタイミングでバケツを差し出す。
他の客も覗き込む。
「ウェ!!。」
Fさんも
「ウェッ!こいつをか。 ウツボは喰った事はあるけど 捌いた事は無いんだよな〜。」
バケツを持つとウツボが動く、まだ生きている。
「ウェーーー!、どうすんだコレッ!。」
「噛みつくからね、気をつけてよ!。」
「オォーーーーーー!!。」
大騒ぎである。
タオルで持ったが ウツボが暴れるたびに腰が引ける。
他の客も 何ともいえない顔つきで見ている。
だが、流石に料理人である、まな板にウツボを押さえつけて 首根っこを出刃包丁の
根元でコーン! と一発!!。
千枚通しを頭へと コンコンッ!っと打って、手際がいいや!。
それでもウツボの奴 ウネウネと捻り込む。すんごい力である。

Fさん、汗をかきながら刺身を造ってくれた。
「土佐造りみたいに 焙るんだよな。」
良く知ってる。
身は白くてきれいだ。 歯ごたえはすんごい弾力がある。
鳥モモの刺身のような感じで、少しだが血なまぐさい臭いがする。
「魚というより肉だね。」
「小骨が残ってしまう。」
硬い小骨が抜けないらしい。そうだろう、咥えて指で引っ張っても取れないもの。
「これ、塩コショウで焼いたら旨いかも・・・・・。」とオレ。
「やってみるか!。」
Fさん、フライパンで焼いてくれた。
「どうかな?。」
びっくり!。今度はウソみたいに身が柔らかくなった。
クセも消えて あっさりとした味になった。
「天ぷらかフライにしたら旨そうだな!。」
「小骨がなんともなぁ・・・・・。」
そうだ、小骨が邪魔をする。揚げ物に小骨があったら面白くないもんな。

「よし!、もう喰ったから次は持ってこないよ。」
小さいブダイと、鯵系と、オジサン系と、ハゼ系の小物を煮付けにしてくれた。
これも旨い!。もう少し大きければ刺身で喰えたんだけどなぁ。
ま、大きいのはこの次に期待する事にしよう。


今日は今日なりに 満足であったぞよ!!!。