◆第一章
もう外は暗くなっていた。
こんな時刻までカミュが天蠍宮にいるというのは初めてのことである。
「
ねぇ、カミュ………いいだろう?」
「 ミロ………」
酔いも手伝っているのであろうか、頬を桜色に染めたカミュが目を伏せる。
「
どうしてそんなに私を困らせる……?」
「
どうしてって…お前が好きだからだよ、他に何がある?俺はお前に無理強いはしたくない………でも……」
ミロの唇がカミュのそれを柔らかく包んでゆく。
少しあらがう仕草を見せながらも、カミュはミロの手が背中に回るのを拒みはしない。
十分な満足を与えたところで、ミロの右手が絹のシャツ越しにカミュの胸の蕾に触れ始める。
最近になって始まったその行為はすでにカミュの身体に馴染み、新しい歓びを感じさせているものの一つである。
「
あ………ミロ……」
のけぞらせた背中を巧みに左手で支えながら、ミロの愛撫はやむことがない。
「
そろそろ俺の我慢も限界だ……それに、お前にもわかっているはずだろう?」
カミュがゆるゆると首を振る。
その表情からすると拒否しているのではないのがわかるのだが、これまではそこから先に進まなかったのだ。
しかし、今日のミロには引き下がる気はなかった。
ミロの手が
そっと動いた。
「 あっ…!!」
「
ほら………お前だって……俺に抱かれたいはずだ………」
初めての衝撃にみるみるうちに首筋まで朱に染めたカミュが、たまらずミロにしがみついてきた。
「
ああ…………ミロ……そんな……」
もう自分では立っていられずに、全身を細かく震わせて身体を任せているさまがいとおしい。
「
頼むから許すと言って…………俺は素肌でお前と触れ合いたい………」
小さくあえぐばかりの熱っぽい身体をやさしく長椅子に横たえると、ミロは耳元に口寄せて甘い言葉を注ぎ込む。
「
愛している……俺のカミュ……やさしくするから………なにも恐くはないから……」
軽く耳朶に口付け、時に息を吹きかけながら、その間もミロの手は的確な愛の動作を止めてはいない。
「
ミロ………ああ……ミロ……………」
与えられる刺激に身をよじり身体をこわばらせる仕草は、甘美な試練からのがれようとするのか、それともさらに快感を得るためのものなのか。
どちらともつかずに悶えるカミュの熱い吐息がミロの頬をかすめ、不規則に震える身体がミロの想いをさらに燃え立たせる。
「
もう待てない………カミュ……言葉で言えなかったら、頷いてくれればいいから……」
ミロは床まで垂れている艶やかな髪の一房を手に取った。
「
素肌にこの髪が触れる感触を知りたい……きっと震えがくるだろうに……自分だけで楽しまないで俺にも味わわせてほしい……」
ひざまずいたまま顔を寄せ、左手で髪を梳きつつ甘い唇を吸い、もう一方の手でカミュの羞恥心をあおって密かに楽しんでみる。
感じることを恥ずかしく思っているカミュなのはとっくにわかっているが、必死になってそれを隠そうとしているのもいじらしくてミロの心をそそるのである。
カミュの反応を確かめながら、ミロの手にさらに繊細な動きが加わった。
「
あぁっ……」
半ば開いた唇から、ついに甘く切ない喘ぎが漏れる。
…今だ!
「
……カミュ……どう?……許してくれる?」
顔をそむけたカミュが瞬時のためらいのあと、小さく頷き目を閉じた。
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