◆第二章
居間から寝室へのわずかな間にも、ミロは、ともすれば身を引きそうになるカミュに甘い口付けを与え優しい愛撫を加えていた。
そうでもしなければ、気弱になったカミュが手の中から逃げてしまいそうに思えたのである。
震える身体を抱きかかえながら寝室のドアを開けると、カミュの足がすくんだ。
初めて見るその部屋は瑠璃色のファブリック類に統一されて美しく、ほんのりと明るいベッドサイドの灯り
を残して部屋の四隅は闇に沈んで見える。
主を待つベッドから目をそらしたカミュの浅い息遣いが耳元で聞え、抱きしめるミロの手に力が加わった。
「 カミュ………来て……」
「 でも………ミロ……」
「 こわくないから……約束するから………」
戸口で立ち止まってしまったカミュの白いうなじから薄紅に染まった耳朶に唇をすべらせてゆくと、たまらずにのけぞらせたのどから漏れた熱い吐息が、ミロの心をいやがうえにもはやらせる。
動けなくなった身体に優しくささやきかけながらようやくベッドの横まで連れてゆき、今度は唇を重ねるとカミュの手がおそるおそる背中に回された。
「 カミュ………自分で脱げる?……それとも……俺が?」
少し緊張が和らいだかに見えたカミュがはっと息を呑み反射的に身体を離そうとするのを、しかし、ミロはもう許さない。
「 もう待たせないで………俺のカミュ……嫌がることは決してしないから……」
「 ミロ………」
それでも弱々しく何か言おうとした花の唇を柔らかく封じておいて、ミロの手がシャツのボタンに触れ、長い指がその一つ一つをはずしてゆく。
唇を閉ざされたままあえぐしかできないカミュにはかまわず、自分のボタンもはずし終えたミロがカミュの胸の蕾をそっとまさぐれば、すでに小さく固くなったそれが出迎え、初めてじかに触れられた羞恥と自分でもまだ気付いていない歓びがカミュに声を上げさせた。
想像もできなかった感覚に我を忘れていたカミュがふっと気付いたときには、すでにシャツは床に脱ぎ落とされ、ミロの唇が首筋から胸へとやわらかく降りてくる。
滑らかで吸い付くような肌がミロをひそかに感嘆させ、心の奥底まで魅了していた。
「 ああ………ミロ……」
立ちすくんだまま背中をのけぞらせたカミュを両手でやわらかく支えたミロが小さい蕾をそっと口に含むと、ひときわ高い声があがり頬がたちまち羞恥の色に染まった。
これは…!と感じたミロがゆっくりと刺激を与え始めると、カミュの手がおそらく無意識だろう、ミロの肩をおずおずと抱き少し爪を立てる。
「 あ…………そんなことを………ああ…ミロ……いや……」
「 ………ほんとに、いや?……いやなら………やめたほうがいい?」
カミュが唇を噛みかすかに首を振ったのを上目遣いに認めたミロがほっとして再び唇を戻してゆくと、花の唇から耐えかねたように洩らされた歓びの声がミロを満足させる。
しばらくの間、カミュに思うさま声を立てさせて楽しんだ後、目が潤みもはや立っていられない様子にそのままベッドに導くと、恥ずかしさのあまりカミュが顔を伏せている間にミロはすばやく互いの衣服を取り去った。
艶やかな髪に覆われた背中が震え、四肢を固く引き付けた白い身体が行き場をなくした幼子のように戸惑っているようにも見えて、掻きいだいて守ってやりたい気持ちをおこさせる。
カミュ………俺のカミュ……あらゆるものからお前を守ってやろう
そして今夜からすべて俺のものになってくれ
灯りは出来る限り小さくしておいた。 カミュは闇を望んだが、なにも見えないのでは、とミロがやんわりと意を通したのである。
かたわらのミロの視線に射抜かれる思いのカミュが身を隠そうにも、おののく身体をおおうものはなにもなく、今更この場をのがれようにもどうすることもできはしないのだ。
ベッドのかすかなきしみがカミュの緊張を一気に高めてゆく。
「 カミュ………こっちを向いて……俺を見て……」
ミロの手が露わにされた肩にかかり、カミュが息をとめた。
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