「 きりたんぽ 3」             ※   東方見聞録 「きりたんぽ」 の続編です。


「で、なにを考えて赤くなったわけ?」
玄関を入って鍵をかけてからカミュをつかまえて聞いてみた。 別にカミュが逃げようとしたわけではない。 酔いに層倍する羞恥の赤さが頬を染め、今にも倒れないのが不思議なくらいだったのだ。
「あの…それは…」
カミュは俺から顔をそむけてますます恥じらっている。 こんなカミュがたまらない。
「わかってる……ゆうべ俺に骨までとろけるほど温められたのを思い出したんだろう?」
「……」
返事のできないカミュをやわらかく抱いてキスをする。 ゆうべのカミュはほんとうに乱れてしまって俺の責めに耐え切れず、赦しを求めて泣いたのだ。 かわいそうに思う気持ちともっと責めたい気持ちがせめぎあい、結局は涙に負けて手を引いた。
「ミロ………あぁ、ミロ………あんなことをされたら私は死んでしまうから…」
そう言ってすがってこられると、可愛くて可愛くてもっと責めたくなってしまうのだから困ったものだ。
「お前が死んだら困るから……それならこれはどう?」
「あっ…」
甘くやさしく心を込めて弱いところを可愛がる。
「だめ……ミロ……あぁ、そんな……」
そうしてカミュはとろけてしまうのだ。

「それにしても、お前がきりたんぽでそんなことを考えるとは思わなかった。」
「ん……いつも言われていたから………つい思い出してしまって…」
ほんの少しのアルコールが及ぼした影響は大きくて、熱っぽい身体がしなだれかかる。
奥の部屋まで行こうと思ったが悪戯心が芽をふいた。
「あっ…ミロ…なにをっ…」
「一度やってみたかった。 悪いようにはしない。」
玄関を入って式台を上がるとそこには二畳ばかりの畳があって、そこでカミュを裸に剥いた。
「なにをするっ…!」
「なにって、裸になったらやることは決まってる。 それとも言葉で聞きたい?」
「っ…」
玄関の引き戸はすりガラスのはまった格子戸で、誰かが来ればすぐにわかるが、むろん向こうからは中の気配はわからない。 俺も手早く裸になると、息を弾ませているカミュを立たせて玄関のほうを向かせると後ろから抱いてやった。
「いけないっ……こんな恥ずかしいこと…!」
「恥ずかしいからいいんだよ。 この姿勢ならお前のとろけた顔が見えないから、好きなだけよがっていいぜ。」
「そんなっ…」
抗議の声には耳を貸さずに後ろから上半身を抱きかかえて乳首を嬲る。
「あっ……あぁ…」
身体をそらせたカミュが喘ぎ、熱い身体がこころよい。 なにも見えないのが残念で、真っ赤に染まった耳元にくすぐるようにささやいた。
「ほかにどこにさわってほしい? お前の好きなところにさわってやろう。」
「そんな……そんなこと………言えない……」
「玄関のガラスが鏡なら、さわってほしいところがどうなっているが見えるのに残念だな。」
「いやぁっ……」
カミュが玄関の向こうを凝視しているのが手に取るようにわかる。 人が来るのを恐れ、鏡だったら見えているだろうおのれのものを心の鏡に映しているのに違いない。
「このままでいいの? どこにもさわられなくてこのままで?」
「ミ……ロ…」
「俺に頼んで……一言でいいから……お前の口から頼まれてみたい。」
指先にいっそうのやさしさを込めかわいい蕾をもてあそぶ。 やわらかく揉んでそっとつまんでやると甘い吐息が漏らされた。 切なげに身をくねらせたカミュはもう息も絶え絶えで、頭をそらせて俺の肩に押し付けながらゆるゆると首をふってつらい責め苦に耐えている。
「あ……ぁ…もうだめ…」
「頼んでくれないのなら…」
「あっ…」
震えるカミュの手を取った。
「自分でする?」
「いやぁぁっ…」
「それなら俺に頼んで。 そうでないと…」
「あっ…」
つかんだ手をほんの一瞬ふれさせた。 後ろからでは見えないが、そんなことは勘でわかる。
「だめぇっ…!」
身をよじったカミュが悲鳴を上げた。 外に面している場所なのではっとする。 人の気配はないが用心するにこしたことはない。
「早く……早く頼んで……お前の望みを叶えたい。」
「でも……あの……ミロ………」
「さあ、早く! これ以上待たせるならもっと玄関に近づくが、それでもいい?」
「いけないっ! そんなことをしては外から……」
「外から、なに?」
「あの………気付かれてしまう…」
声を殺したカミュがおののいた。 近付き過ぎればすりガラスは容易に裸体を透かして見せるだろう。
「困るなら、さあ、俺に頼んでみて。」
舌先でちろちろと耳朶をなぶりながらささやいた。
「あの……さわって…もっと……そこに…」
「そこって、どこに?」
「ミロ…………頼むから……私にさわって……」
かすれた声がささやいた。 迷いに迷ったカミュは重いため息をつくと、俺につかまれたままの手をおずおずと動かし望みの場所に導いた。
「ここを……さわってほしい…」
どうしても言葉で言いたくないカミュの精一杯の努力を認めてやろうとして握り締めていた手首を離したときにふっといい考えが浮かんだ。 愛は互いに与え合うものというではないか。
「それならお互いにいいことをしようじゃないか。」
そうささやくとカミュの左手を引き寄せて、さっきから白い身体に押し付けている俺のものを握らせた。
「あっ…」
「やさしく包んでくれればいい。 動かそうなんて思わなくていいから。」
そして、やっと立っている身体を支えながらカミュの思いを叶えてやった。 やさしく、時には熱を込め、握り包んでいつくしむ。
「あっ……あぁん……いやあぁぁ…」
喜悦の声がほとばしる。
「お前ときたらほんとに素直じゃなくて…………ここをこんなにされるのがそんなに嬉しいか?」
「ミロ………あぁ……もっと…」
快楽に身を浸したカミュはつま先立ちして背をそらし、甘い仕打ちに必死に耐える。
「玄関先で昼間っからこんなことをされて…」
「いやぁぁ…」
「まるで人に見せ付けてるみたいだな。」
「そんな…」
「これが夜なら、中の明かりをつけるから外からでもすぐわかる。」
「うそっ…」
そのときだ、玄関の向こうに人影がさし、何人かの話し声が聞こえた。 カミュが身を固くして息を呑む。むろん、俺の手も止まった。 さすがにドキッとして気配をさぐっていると、やがて始まったのは回廊の軒先の修理のようだ。そういえば、今日の午後にちょっとした工事の予定があると聞いていた。
「大丈夫だ、軒先の工事のことは知っているだろう。 こちらには関係がない。」
「……」
小さく頷いたカミュは、それでもまだ緊張が抜けずに息をひそめているばかりだ。
「そっとするからそのままでいて。 工事が終わったら許してやるよ、約束する。 なあに、きっとすぐ終わるから安心だ。」
安心だって?
すぐにやめて奥に退散するのが安心に決まってるが、それでは面白みに欠けるというものだ。
声を出させないように加減しながら俺は静かに手を動かしてカミュの身体を愉しんだ。 快感を得る一歩手前で焦らさせて、もっともっととねだらせる。 中途半端な刺激に耐えきれなくなったカミュがやがて音を上げ、悶えはじめるのが待ち遠しい。 もしかしたら自分から手を添えて動かし始めるかも知れず、それを思うとぞくりと震えが走る。
工事は二時間はかかるだろう。 すぐそばに人がいる状況を心ゆくまで堪能しよう。
「ミロ………あぁ…ミロ……」
切なそうにささやいたカミュが左手にそっと力を込めてため息をついた。