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コラム
 vol.3 音楽って、仕事?遊び?

以前こんなことを言われた事があります。『音楽をやっているやつの中にはよく「仕事、仕事」っていうやつがいるが音楽は「遊び」なんだよ。』と。 どっちでもいいが、今回はこの事をネタにしてみます。

音楽は仕事か遊びか。

そんなの決まってる。両方です。
物事はそんな単純ではありません。ネジを作る人がどうやってそんなネジを作ることができるのか私は知りませんがあの技術があれば何でも作ることができそう なもの。でもネジしか作らない。なぜか? 仕事だから。そう仕事とは依頼されたもの、求められている事をするということです。だからネジ屋がいくらきれいな鉄のビーナス像を作っても売れないので す。さっぱり。
音楽でも同じことが言えます。スタジオミュージシャンなるものがいますが、彼らはプロデューサーやシンガーなどに求められたモノを弾くのが仕事です。もし かしたら「歯で弾いてくれ」と言われるかもしれないが、その時は歯で弾くのです。そして弾き終わった後、煙草に火をつけ一口吸い、「ふ〜」と一息ついて 「良い 仕事ですね」「うん、良い仕事だ」とエンジニアとプロデューサーが話してるのを隣の部屋で聞くのです。つまり仕事です。
ジプシーの演奏家達も結婚式に呼ばれたら明るい曲を、葬式に呼ばれたら暗い曲を弾かなくてはいけません。仕事だからです。
でもアーティストとかいわれる方々は違います。彼らは何をやってもいいのです。求められているわけではないからです。それは遊びに近いでしょう。でも大抵 の遊びにルールがあるように、ルールはあります。大事な部分はベースで隠さないと捕まります。
大事なところを隠すのにも技術が要ります。そこにおいては技術者なわけです。
中には鉄で砂漠の真ん中に変なオブジェを作ってもちやほやされる人もいますが、アレは例外です。物事はそんなに単純ではない、と言うわけです。我慢してく ださい。
マルクスブラザーズのチコはリンゴでピアノを弾きますが、アレも相当練習したはずです。リンゴはピアノを弾くようにはできていません。誰もリンゴで弾いて くれとは言ってもいません。

つまるところ、仕事をする人も遊びをする人も、技術はいるのです。みんな技術者でなくてはいけません。そこを磨くのがプロです。何を作るかが違うだけで、 仕事をする人も遊びをする人も同じ技術者なわけです。ですから音楽をやっている人は常に仕事と遊びの両方の意識があるわけです。

よって音楽は仕事で遊びです。

仕事と遊びの境界線というのは非常に微妙なのです。世の中は突如素晴らしいアーティストを求めることもあるのです。求められたことをするアーティストもい るわけです。もしかしたら昨日まであなたの隣でもくもくとネジを作っていたおっさんが、明日テレビでピカソになっているかもしれません。その時は「あの人 もあれだけの技術を持っているんだから」と思ってにこやかに見守ってやってください。
(hayasi keiji,06/5/22)
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