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コラム
 vol.10 動きの中で考える〜肉体の持つ知性outtake@〜

前回のコラムの、アウトテイク集のようなものを作ってみようと思う。

追記で木村尚三郎のドキュメンタリーを見直したことを書いたが、その時印象に残った事が「動きの中で人生を考える。」とい う言葉、旅を通して自分のたどってきた人生を考える=巡礼 という見方だ。
ここからは、最近の僕の感じたことを交えて探求していくので、若干、独断と偏見になるかもしれない。 これは答えではないし、無責任なようだが、すぐ変わるかもしれない。ただの探求だ。


「人生は心の旅」という言葉があるけれど、僕はもっと現実的に旅であると思う。
つまり、心の旅であり、それと同時に身体は実際に旅をしていると思うのだ。

旅をして生活をする人は持ち物が限られる。最低限必要なものしか持っていられない。
最初はいろいろ持っていこうとする人もいるかもしれないが、そういう人でもだんだんと荷物が減っていくことになるだろうと 思う。そういう風に、動きの中に人生を置くと持ち物は減る。心の問題でもそうだという風に思う。

執着心というのは、心が物事にとらわれている状態だと思う。その心にある物事が大きくなり重くなるほど、軽やかには動き回 れない。それは現実の行動を左右するにいたる。そういうものを解くには、心から身体に意識の中心を移す必要がある。 身体というのは常に現在という状態に置かれている。その認識をするのに五感を使って感じ取る。
それは常に最新の状態に更新されている。

執着心は自分の心の中でのサイクルに置かれていると思う。外とはつながれていない。

例えるなら、子供が栗まんじゅうを食べようとしてたら、それを誰かに食べられてしまう。 子供が泣く。お母さんが「ごめんね、新しいのかってあげるから」と言って新しい栗まんじゅうを買ってくる。

でも、子供はその時こう言う。

「やだやだ!あの栗まんじゅうがいいの!」(ホントかよ?)


これが執着だと思う。あの栗まんじゅう。「あの」というのが重要なのだ。
でも、それはもう二度と手に入らない。寸分たがわぬようにしか思えない、新しい栗まんじゅうが目の前にあっても満足は出来 ない。圧倒的なまでにあの栗まんじゅうは旨いものに変わっていくのだ。

欲望が執着に変わる瞬間は、その現実に欲していたものが消えた瞬間ということ。つまり、そこからは自分の中のサイクルの問 題になってしまう。どんどんと自分で大きくしてしまう。
これを解消する方法は、心を外とつなぎ直すことだと思う。それには最新の状態に更新しなくてはいけないのだ。

それが旅の状態だと思う。

旅をしていると、今まで行った事のない所に行けば、五感を働かせて、その場所から情報を捉えようとする。 最大限に五感を働かせると、ちょっとだけ緊張し、ちょっとだけテンションも上がったりする。テンションは日本語で「緊張」 だ。身体は動き始める。

たとえ最初荷物を抱えていても、だんだん減っていく。いらないものはそぎ落とされ、車窓から投げ捨てられていく。

そういう風に、大きくなった執着心もだんだんとしぼんでいく。そしてそれがさほど重要でないことに気付いたり、やっぱり今 も心の底から発せられている欲望であることに気付いたりするのだ。

じゃあ、考えることが必要ないのか?心はとらわれるものだ。考えないやつは馬鹿だ。と言う人もいるかと思う。

考えることは必要だと思う。考えないやつは馬鹿だ。その通り。ここが難しい。 意識は緩やかに身体と、外とつながれている必要がある。と、僕は思う。

アフォーダンスで協調という言葉で説明されることがある。協調というのは、 全体で1つの運動体を構成するような作業。と僕は思うのだが、つまりキャッチボールだったり、一人ならお手玉だったり。 つまり、身体の反応だけではなく、ひとつの、あるいはいくつかの意識が、ひとつの、あるいはいくつかの目的を持って連動す る。それには考えること。考えた末、どうするのか。何を求めるのか。は必要だと思う。 ただそれをなすには、意識は前に出ずに緩やかにあり、身体が感じ取り、行動するのを見ているという状態にする。ということ じゃないかと思う。


目的を達するには常に目の前の情報を最新の状態に更新する必要がある。
執着にとらわれないこと。ただ欲望だけがあるということ。それは本当に欲しいのか?ということ。


そのようにして肉体の持つ知性、つまり五感で感じ取り、物事を協調するための作業をする能力を制御する知性を身につけてい くということではないかと思う。それは社会性とは違う。もっと直接的なことだと思う。

これが試論その1。もっといろいろな要素のなかで考えなくてはいけないと思うから、これはあくまでも1つの試論だ。
今はひとつづつ試していくしかない。
 (hayasi keiji,09/12/31)
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