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院生の独り言

ある いんせい
カナダインディアンと出会う旅 (上) グラシイナロウズ編    <2004/09/29>
 2004年8月25日、我が大学院の水俣学研究グループは、カナダインディアン居留地へと旅立った。メンバーは、大学教授と医師、院生。今回訪れた居留地は、グラシイナロウズとホワイトドッグで、どちらもオンタリオ州にある。水俣と同じで有機水銀中毒汚染の被害地であり、汚染源はドライデン市のリード製紙株式会社である。

(写真1)元村長のビル・フォビスター
 先に訪れたグラシイナロウズでは小さい小屋を本拠地にし、そこから歩いて2分のヘルスセンターで検診を行った。私の検診での役割は水俣病研究会の検診と同じで、ビー玉検査と鉛筆検査である。受診者に検査のやり方を説明するのだが、何せ私の英語力って・・・。慣れない初日の午前中、特に高齢の方には、なかなか通じなかった。宮北教授や元村長のウィリアム(ビル)・フォビスター氏(写真1)が、それぞれの役割をこなしながらも気を配ってくださり、検査が進まないほど通じない時は通訳をしてくださった。ビルさんは、そっと寄ってきて受診者の耳元で英語やオジブワ語を囁き、検診が軌道にのると私の目を見て頷き、またそっと離れて行くという支援を、何回も何回も行ってくれた。彼の助け無しにはありえない調査であった。もちろん、このことは彼にもちゃんと伝えた。その時も温かい笑顔で頷いてくれ、「またここにおいでね」と言ってくれた。

 検診先や宿泊小屋には、興味津々で目を輝かせた子ども達がたくさんやって来た。大きい子で12歳、小さい子は4歳だった。11、2歳の子は私よりも大きく、9歳の男の子も、自分と背の変わらない27歳の異国人を見て、非常に楽しそうであった。どこから来たのか、酒は飲むのか、何を飲むのか、煙草は吸うのか、ということをしきりに聞かれた。

 検診で知り合った13歳の男の子(写真2)は、年齢で言えば中学生だが、飛び級で9年生(高校生)だという。落ち着いた彼は、学校の学年制度などを静かに説明してくれた。「将来は警察官になりたいんだ。」と語った時には、13歳らしい照れた笑顔を見せた。

 ワイルドライスの配達をしている25歳の青年は、日本のゲームが大好きらしく、任天堂のゲーム機の変遷をイラストで描いた。絵が上手く、狩りで取るウサギや鳥もシャカシャカと描いて説明してくれた。印象的だったのは、彼が見せてくれた空色のメダルだ。大きく“6”と書かれたそのメダルは、6ヶ月間、飲酒をしていないことを証明するもの。彼は、アルコール依存症プログラムを受けているのだ。プログラムを受けて最初のころは禁酒が苦しかったが、今は前よりも人生が明るくなったと言う。「次の“7”のメダルを手に入れてね」と言うと、目をそらさずに頷いた。その顔を見て、なんだか大丈夫そうだな、と感じた私は、楽観主義者だろうか。文通することにしたので、今度聞いてみようと思う。

  (写真2)
  学校のスタッフルームにいた高校生
  (写真3)
  ビー玉検査に興味津々の子どもたち
 いろんな出会い満載のこの旅。いろんな形でたくさんの人に伝えて行きたい。どんな人がそこに生き、なにを考えているのかを。ここで独り言なのに本の紹介!!!あん・まくどなるど&礒貝 浩両氏による『カナダの元祖・森人たち(オジブワ・ファーストネーションズ)』(アサヒビール株式会社発行)を一読あれ。本の中で、カナダインディアンと出会う旅を味わうことが出来る。=続く
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