会議日程を終了し、日本に戻って、日本のマスコミにより事故が予想以上の深刻な影響をもたらしていること。中国側が事故発生の事実を伏せ、10日も公表しなかったこと。事故によってベンゼンなど有害(猛毒)化学物質が松花江に流れ出たこと。それに対して直ちに警報が発せられなかったために漁業従事者が被曝したことが考えられること。松花江はやがてアムール川に合流するためロシア側にも何らかの影響を与えかねず、ひいては(アムール川は日本海に流れるので)日本海の環境汚染にも結びつきかねないこと……等々、次々と深刻な事態が明らかになった。現にロシア側の報道によると、事故発生から40日目の12月22日、有害物質はハバロフスク市に到着したという。付け加えれば、12月7日にも河北省唐山市の炭鉱でも爆発事故が起き、50人以上の犠牲者が出ている。
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6つの報告に対し、フロアーから活発に質問が
出された |
=2005年12月16日、東京・青山の環境EPOで |
上海から戻って2週間あまりたった2005年12月16日、東京で「日中環境問題研究会」なる勉強会が開かれた。今回のテーマは「中国環境協力を考える」であったが、上海ワークショップの概要報告も行われた。上海で実感し、この勉強会で再確認した事がある。誤解を恐れず申し上げる。
「中国はどこまで本気で環境問題に本腰を入れて取り組むのだろうか?」ということだ。
中国側にはそう考えられても仕方がない“実績”がある。2年前の新型肺炎SARSの事例はまだ記憶に生々しい。あれだけ世界から顰蹙を買った苦い経験をしているのに、今回の事故を起った日に確認しているのに10日も伏せていた事実は、依然として情報公開に対する認識が浅薄、もっと言えば甘いと言わざるを得ない。なぜなら、この情報はひとり吉林省だけの問題でなく、有害化学物質は工場→松花江→アムール川→日本海へと流れ込むのだ。にもかかわらず、報道によると、黒龍江省の張左己長官は伏せたのは市民のパニックなどを恐れた「善意の嘘だった」と大いなる思い違いのコメントを発している。
断わっておくが、弊“環ラス”は嫌中派でも反中派でもない。靖国問題にしても中国側の主張は十分に理解しているつもりである。しかし、こと環境問題になると、どうしても中国の中央政府、地方政府、行政ともどこに視点があるのか分りかねる。
そういう中で、上海ワークショップに参加していた王燦発・中国政法大学教授と人民日報の趙永新記者が「緑色中国年度人物」に選ばれたことが伝わってきた。これは、環境保護に寄与した人5人に与えられる賞で、今回がはじめてという。せっかくの第1号受賞にケチをつけるつもりは毛頭ないが、近頃、お二人の声が大きくなってきたので、栄誉を与えることで少し静かにしろというつもりでは? などとあらぬ疑いを持ってしまう………。
▼上海ワークショップ関係から初の「緑色中国年度人物」が2人も選ばれた▼ |
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公害被害者救済に先べんをつけた王燦発さん(中央)。日本から参加した被害者に囲まれて |
心臓バイパス手術のため参加できなかった宇井純さんを来日時に見舞った趙永新さん(左) |
=2005年11月27日、上海・華東政法学院で |
=2005年12月9日、東京西新橋の慈恵医大病院で |
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