2004.2.23より



NO.18:大槻ケンヂ 『ONLY YOU
        
 1.ONLY YOU           7.とん平のヘイ・ユウ・ブルース
2.タンゴ                  8.私はみまちゃん
 3.もうがまんできない               9.メシ喰うな     
4.未成年                 10.屋根の上の猫
5.ロマンチスト              11.BYE−BYE
    6.カレーライス              12.ONYL YOU(アンプラグド)
このCDを聞いてると、会社の内定式に東京に行って、遊んでたら飛行機に乗り遅れて飲み屋でしんみりしてたことを思い出します、ってそんなことは全く無くて。このCはその時に東京のタワーレコードで買って、飲み屋の中でライナーノーツを読んで暇潰ししてたんですよ。今思えば、本屋で何か買ってくればよかったんじゃないかな、と思いますけどね。いや、もっと考えれば飲み屋の隣の24時間営業漫画喫茶で寝てりゃあ良かったんだよ。
 まあそれは置いといて、予告どおり昨年ベスト5に入った“筋肉少女帯”ボーカル、オーケンの初ソロ作品を。ソロ、と言ってもオリジナルは皆無で、オーケンのルーツと言える70〜80年代パンク、ファンク、フォーク、ニューミュージックをカバーしたもので構成されております。まあ、詳しいことは前述のライナーノーツに書いてあるんですが。だからとりあえず基本的なことだけ書いておきましょう
 1.と4.は田口トモロヲがやっていたパンクバンド“ばちかぶり”の曲で、パンク界の名曲と呼ばれております。「ONLY YOU」は元がアンダーグラウンドでトモロヲの裏返った声が印象的なラブソング(?)ですが、このアルバムではストレートなロックナンバーとしてアレンジされております。いや、ビートパンクと言うべきか。「未成年」は『子どもたちのCity』で紹介した通り、「ボーイズ・ビー・シド・ビシャス!」の絶叫が全ての名曲。1度聞いたら目が覚めるくらいの衝撃を受けますねぇ。アレンジはやはりストレートなビートで、変拍子とかに拘ることはしてません。2.と3.が故・江戸アケミ率いる伝説のファンクバンド“じゃがたら”の曲。アンダーグラウンド・シーンで過激なパフォーマンスを行ったり、10人以上の大々的で本格的なファンク・ステージを行ったりといことを日本で始めて行ったのってこのバンドなんじゃないでしょうか。ボーカルの江戸アケミは何かに憑かれたように80年代初期に名盤を次々発表、しかし活動の最中に精神不調を起こし、その後自宅の風呂場で事故死、という数奇な運命を辿ることになります。“ルースターズ”のボーカルもそうですけど、伝説に残るバンドはなにかしら笑って済ませられないもの、そんな空気を纏ってるような気がします。5.「ロマンチスト」はこれまた80年代初頭パンクシーンの先駆者にして頂点だった“ザ・スターリン”の超名曲。「吐き気がするほど ロマンチックだぜ!」の絶唱に心動かされた人も多かったでしょう。かく言うボクもその1人でして。6.「カレーライス」はロック界の“不滅の男”、遠藤賢司の曲。エンケンが発表した70年代時ってのはメッセージ・フォーク全盛の時代で、この曲のような、ごく普通の「日常」を歌うシンガーはあまり居なかった、いや、正確にはシーンの真ん中にいなかったんですな。こういったポップな曲はその後、フォークの分野でも次に来るバンドの時代でも受け入れられることになるんですが。7.「とん平のヘイ・ユウ・ブルーズ」は見てわかる通り、左とん平の持ち物。20代でコレ聞いたことのある人はあんまりいないでしょう。「人生はすりこぎなんだ!」。まさしくブルースです。8.「私はみまちゃん」はオーケンが昔作っていた“空手バカボン”というテクノ・ポップ・バンドの持ち歌、それをバンド・バージョンにアレンジし直したもので、コミックソング丸出しの歌詞が心地いい。オーケンに言わせれば「肥大化した自意識過剰と、その裏返しとしての自己否定」ということになるんですが。それと同じ意味なのが9.の「メシ喰うな」。現在は作家活動の他にバンド活動も再開したとの町田町蔵が10代のときに作った、まさしく自己否定、他者否定ソング。「俺の存在を頭から打ち消してくれ、俺の存在を頭から否定してくれ!」。高校とかのクラスで1人でブツブツこの曲歌ってたら危険ですが。誰も解らないってね。10.「屋根の上の猫」は“頭脳警察”でパンク登場前の60年代音楽シーンを直撃したパンタの作品。「コミック雑誌なんていらない」と歌っていた彼はバンド解散後、パンクや否定的メッセージに囚われないミュージックを次々生み出していきました。とは言え、ボクはこの曲がどのアルバムからかは知らなかったりしてねぇ。11.「BYE−BYE」は“有頂天”のレパートリー。”有頂天”と“筋肉少女帯”は同じナゴムレコード出身ですし、同じ日にライブデビューしたもの同士。まあ、音楽的キャリアは全く違いますが。曲自体は“有頂天”のメジャーデビュー・シングルで、後ろ向きでない、肯定的な「別れ」を歌ったものです。暗い歌詞をあっけらかんを歌うボーカルのケラは凄かったですが。このアルバムでもオーケンが力を抜いて歌っております。アレンジはよりバンド演奏的で、テクノ風味は薄くなっております。12.は読んで字の如く、「ONLY YOU」をアコースティックに演奏したもの。ギターとハープ演奏で“真心ブラザーズ”の2人が参加したりています。それ以外にも、このアルバムには原曲の製作者が殆どゲスト参加してたりして、なんだかオーケンの交友の深さとかが見えたりする1枚なんですね。
 まあ、長々書きましたが、つまりオーケンがこのアルバムで表現したがっていたもの、見事にストレスで鬱状態になっていたオーケンが自分のルーツを辿っていく作業が自分にもこれ以上ないくらいピッタリハマったんですよ。つまりこの楽曲全てが、今現在ボクが吸収している音楽世界の中核にいるモノ達なんですよ。買った理由はもうそれですね。収録曲のタイトルだけで、心が沸き立ちましたし、楽曲をムリに変える事無く歌うオーケンも素晴らしかった。アレですね、ボクはカバー曲ってのは本当に原曲に近づけて歌うか、それとも全く持ってグシャグシャに解体して歌うかのどちらかで無いと中途半端な結果になると思うんですよ。今現在のカバー曲なんか聞いててもね。「ちょっとオリジナリティを」なんて、必要無いでしょう、元々のアレンジが最高なんだから。オリジナリティの塊だと思ったのは、“スピッツ”のトリビュート盤に参加した“ポリシックス”の「チェリー」でしょうかね? あそこまでやられたら文句はござませんよ。
 まあ、7割曲紹介に費やして、評論というのは書きにくい。いや、単なる感想か? でもカバーとかオムニバスとかはこういうことやっておかないと、良くわかんなくなりますからねぇ。そこらへんはご理解を。個人的にはオーケンのソロはベストとか自己カバーとかも含めて結構出てるのですが、これを超えるものは無いんじゃないかと思っとります。でも、よく見かけるCDショップと、全然見ないCDショップがあるのはどうしてだろう? 中古屋のほうが安く売ってるでしょう。10年近く昔ですが。う〜ん、10年か、95年って。時代の長さにガックリです。


   back to box………