2006年2月8日

ベネズエラ、21世紀の社会主義

 都市、工場、仕事場を貧しいコミュニティ、スラムと貧民街が取り囲むベネズエラ。いま、この国は、人民革命と民主革命の最中にある。ベネズエラは、世界第五位の石油産油国だが、国民の80%は貧困状態に置かれていることで知られていた。だが、この6年で、そうした国から、文盲を根絶し、無料の教育やヘルスケアをほとんどの貧しい人々へと広め、金持ちから貧乏人へと富や権力を再分配し始めた国へと移行しつつある。それは、全体として民主的なプロセスである。

 ウゴ・チャベス大統領が率いるこの改革は、政治的にも支持され、大統領は7年間で10回の国政選挙を勝利した。世論調査によれば、70%以上が繰り返しチャベスを支持している。そして、最も重要なのは、革命が「参加型デモクラシー」を構築するため、草の根から人民権力を確立することに焦点をおいていることだ。

 19世紀にスペインから南米の解放を導いたシモン・ボリヴァール(Simon Bolivar)にちなんで、そのプロセスはボリバリアン革命として知られている。その思想では、ベネズエラ、そして、ラテンアメリカ全体が、米国と企業の支配から解放される新たな闘争を行う必要であると想定されている。莫大な石油備蓄を持ちながらも、何10年もベネズエラの石油の富は、国の腐敗した資本家エリートによりコントロールされ、国民の大半が壊滅的な貧困のままに打ち捨てられていた。

 門や塀で囲まれた金持ちたちの住宅地の外では、コカコーラやネスレの掲示板が都心部にある不思議な国の外では、貧困と低開発で大多数の人々の暮らしは苦しめられていた。広範に及ぶこの状況の改革を背景に、チャベスは1998年に親人民のプラットホームで56%の票を獲得し、大きな改革への期待をもって大統領職についた。

 あらゆる主要機関が古いエリートたちによって支配され、彼らが改革をさける決定をしていたベネズエラで、チャベスは、一連の選挙、国民投票、大規模な相談によって人民へとその向きをかえた。これが、先住民族の権利や教育権、ヘルスケアを保証、拡大し、基幹産業の民営化を禁止し、直接的参加型デモクラシーという新たな思想を導入する新憲法をもたらす結果となった。

 チャベス政権が、資本家階級の利益に直接影響を及ぼす政策を導入し始めると、エリートたちは政府を打倒するキャンペーンを始めた。チャベスがアフガニスタンやイラクへの侵攻に反対し、社会主義キューバと密接なパートナーシップを構築し、ラテンアメリカの米国支配に対し挑戦する統合経済を呼びかけていることから、米国政府もチャベスに反対している。キューバとのそれは、廉価な石油と引き換えに、ベネズエラの貧しい地区で無料で2万人以上のキューバ人の医師たちが働くことを含む連帯に基づくパートナーシップである。

 2002年4月、米国の支持を受けた軍事クーデターが、チャベスを権力から引きずり下ろし、ベネズエラの商業会議所長を大統領にすえた。貧しい人々を支援する憲法、議会、法律は溶かされてしまったが、新体制は貧しい人々の大規模な暴動によって48時間以内に打倒された。チャベスを辞職させようと試み、不正な経営者側が石油産業を閉鎖したときも、数カ月後に再び数百万人もの貧しい人々が動員され、石油労働者たちが産業をコントロールしてしまった。チャベスをおとしめるためのありとあらゆる試みは、人民たち自身によってうち破られ、彼らは高まる政治的な権限を勝ち得たのだ。革命を転覆させるための資本家階級によるあらゆる試みが、労働者階級の組織化や自信を高めることにつながった。

 資本家階級が貧しい人民のためになる改革を決して受け入れようとはせず、貧困に打ち勝つためには、革命が資本主義システムを打ち破らなければならないとの結論に達したとき、チャベスを含めて、ベネズエラ人はますますラジカルになった。チャベスは、資本主義を「地獄への道」と記し、ベネズエラと世界は、ヒューマニズムと民主主義の原理に基づく新たな「21世紀の社会主義」を発展させる必要があると繰り返し主張してきた。

 1月にカラカスで開催された世界社会フォーラムでは、チャベスは、「世界は社会主義か死を選ばなければならない」と宣言した。チャベスは聴衆たちに語る。「もし、我々がいまの世界を変えられないならば、人類にとって22世紀はない。資本主義が、地球のエコロジー的な平衡を破壊している。いまは、そうだ。だが、断じてそうではない!」

 私的利益よりも社会的なニーズの原則に基づく新たな社会を創設する計画のバックボーンとして石油からの富を活用し、改革は、着手時よりも2005年の末には貧困を国民の10%以下まで貧困を減少させる一助となった。ミッションとして知られる何十ものソーシャル・プログラムが、社会問題を解決する一助としてコミュニティのコントロールの下、設立された。ミッションは、健康、教育、スーパー・マーケットでの助成金を支給された食料販売、協同組合のためのトレーニング、農地改革、先住民族の権利、その他多くの分野に及び、国民の大半が参加している。

 ミッションが結成されて以来、150万人もの人民が読み書きを教えられている。何十万人もの貧しい小作農民たちが、以前に遊休化していた土地の再分配で恩恵を得ている。労働者たちは、経済を民主的に運営させる一助として、彼らの仕事場のコントロールを要求し始めた。

 国際的には、米国により推進されている米州自由貿易地域構想に代わる手段として、ベネズエラは、キューバと同盟し、アメリカのためのボリバリアン・オルターナティブ(ALBA= Bolivarian Alternative for the Americas)として知られるアメリカ大陸の新たな貿易圏を要求している。ベネズエラは、地域の貧しい人々を援助しようとし、米国自体の中でも何千人もの貧しい人々にディスカウント価格で灯油を提供することで真剣にワシントンを怒らせた。大多数のためになるよう社会を再編成するのと同じほど大規模なタスクは多くの問題に直面している。改革は不規則で、不正という古い問題と官僚制度が革命を苦しめている。この理由から、「革命の中の革命」が、改革の過程を深める戦いの一部として始められた。今日のベネズエラの物語は、ジョージ・ブッシュやジョン・ハワードにより支持された資本主義的な悪夢に対する民主的な社会主義のための戦いのひとつである。当然のことながら、ベネズエラは、ブッシュ政権のターゲットとされ、脅威にさらされている。

 米国帝国主義にとっての問題は、ベネズエラの革命が、ラテンアメリカで高まる反乱という文脈で存在していることにある。それが、多くの親米政権を打倒している。ベネズエラで勝ち取られつつある達成の事例が、反乱をあおる一助となっている。ボリビアでは、暴動で2人の親米的な大統領が落選し、ラディカルで親人民のプラットホームを持つ農民リーダーのエボ・モラレス(Evo Morales)が12月にで大統領に選出された。モラレスは、ラテンアメリカ初の在来民族の大統領であり、ベネズエラとキューバの反帝国主義者同盟に参加すると誓約した。米国からの脅威のために、ベネズエラは連帯を必要としている。

(Green Left Weeklyの記事)
  Leigh Hughes & Ana Hanson,Venezuela: 21st century socialism,2006.

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