ルイス・サンチェス・アルマンザ(Luis Sanchez Almanza)氏は、オーストラリア、メルボルンのパーマカルチャー・グローバル支援ネットワークの「グリーン・チーム」により、オーストラリアを訪れている。「グリーン・チーム」とはキューバで初めてパーマカルチャー・プロジェクトを組織した団体である。キューバは、都市コミュニティ内の食料自給度を高める目的で、大胆にもオルターナティブでエコロジカルな持続可能な食料生産手法に取組み始めているのだ。ルイス・サンチェス氏は、農学者、パーマカルチャーの活動家、コミュニティの園芸指導員であり、オーストラリアを旅しており、マルガリータ・ウィンディッシュ(Margarita
Windisch)さんから「グリーン・レフト・ウィークリ」のインタビューを受けた。
マルガリータ あなたのお仕事、そしてハバナ郊外のサンタ・フェ(Santa Fe)での農業プロジェクトについて具体的にお話しいただけますか。
ルイス 私は、キューバ政府の職員ですが、農業コミュニティ・アドバイザーとして、サンタ・フェ町と協力しています。その目的は有機農業を教えて、地域コミュニティを元気づけ、人民を食料生産に積極的に参加させることにあります。
サンタ・フェ・プロジェクトは、とりわけ、ハバナのような大都市の中で安定した食料供給ができなくなったことに対処するため、キューバ政府により始められた数多くのプロジェクトのひとつなんです。国家問題を解決する一助とするため、人民が積極的な食料生産者、重要な主体となるよう、力づけ、誘導することもその目的なんです。
サンタ・フェ・プロジェクトは、都会の空き地を食料生産や直接消費に利用することを目的に1991年に始められました。プロジェクトは有機農業の原則を用いることをベースにしています。それは、コスト的に安く、環境にも優しいのです。私たちは、コミュニティ内で利用できる資源も使っています。そして、菜園者たちやその家族の農業の知識を増やして、食生活の習慣を改善するために教育したいとも思っています。
マルガリータ サンタフェ・プロジェクトはうまくいっているんですか。
ルイス ひとつの事例をあげましょう。1991年に平方メーターあたりの食料生産は0.9㎏でしたが、1994年には3㎏を達成しました。有機農法だけでです。家族は、マメ、トマト、トウモロコシ、蜂蜜等を自給するようになってきています。そして、余剰農産物は自由市場で売られています。それが新たな政府の政策なのです。そして、必要とされる食料の約30%がコミュニティそのものから供給できています。そして、生産が多くできるようになっただけでなく、新たな社会関係が創出されたこともメリットになっています。強い意味での団結や連帯があり、食料を交換する上で「バーター・システム」がごく普通に使われています。コミュニティは全体としてより健康となり、ガーデニングは楽しめるレクリエーション活動となったのです。
マルガリータ 必要な教育プログラムはどのように準備しているんですか。特別なグループをターゲットとしているのですか。
ルイス キューバ有機農業グループ(Cuban Association of Organic Agriculture)、大学、農業省と一緒に私たちはプロジェクトや教育プログラムを開発しています。それは、科学的なだけでなく非常に実践的なものでもあるのです。
子どもたちや若者を教育し、地球を大切にし、責任ある態度を取れるようにすることが、とりわけ重要です。キューバの全小中学校には菜園があります。子供たちは園芸家から、とても実践的なやり方で食料生産や土づくり、灌漑のことを教えられているのです。
伝統的にキューバでは女性たちは家の中で働いてきました。ですが、これもいまでは変わってきています。女性はプロジェクトで決定的な役割を果たし、とりわけ、収穫した後の無駄を減らし、食料を保存することでよく働いています。彼女たちは、菜園に薬草を取り入れていますが、キューバでは医薬品が不足しているので、どのプロジェクト菜園でも人や作物の病気に使うため薬草用地が設けられているのです。おわかりいただけるように、私たちのアプローチは、草の根で実践的でホーリスティックなのです。
マルガリータ 食料供給が安定せず、医薬品が不足しているのは、米国による不法な封鎖の直接的な結果なのでしょうか。
ルイス もちろんです。米国政府は、我々を服従させるため、キューバ人を餓死させることを望んでいるのです。他の国々と同じようにキューバは自国内でまかなえない食料生産を補完するため貿易に頼っています。キューバ政府は8歳以下のどの子どもにも、日量1リットルのミルクを無料で保障していますが、このミルクのいくらかは、カナダやもっと遠くのニュージーランドから輸入されているのです。ですから、輸入コストはとても高くついてしまうのです。
キューバは外国からの投資を歓迎していますが、海外企業の10のうち9つが、米国政府のこうした国々に対する直接的な圧力を受けて、その土俵から降りてしまっているのです。また、封鎖は農業に技術進歩を取り入れることをとても難しくしています。オルターナティブな農法や手段を進展させるため、キューバを支援し、勇敢にも経済封鎖を侵している米国の農業団体もありますが、我々の知性面での貧しさは、封鎖のゆえなのです。
マルガリータ キューバが直面している農業上の課題にはどんなことがありますか。
ルイス 化学合成農薬や化学肥料を使わない目的で、キューバ政府は持続可能な農法を開発中です。土壌保全やバイオロジカルな害虫防除、バイオ農薬を導入することが政府の政策となっているのです。化学資材を用いずに、私たちは高エネルギー作物の高収量をうまく実証しました。そして、乳製品が不足していることが、大豆やもやしのような代替蛋白源の研究や作付へと拍車をかけています。キューバ人の食習慣を変えるよう奨励するには、まだ多くの説得がされなければなりませんが、教育や活動的な参画がこの課題を解決する鍵なんです。
マルガリータ 私たちがキューバにもたらすことができる、最も大切な連帯や援助はなんでしょうか。
ルイス 最も決定的な支援は政治的な連帯です。キューバにとって、その人民や大いなるエコロジカルな進展が生きのびるには、こうした種類の支援がなにものにも代えがたいのです。国際的にキューバの主権が尊重されるだけで、私たちは、世界の恩恵のためにアイデアを自由にわかちあうことができるんです。
|