2000年5月29日

キューバ農民政治的難局を議論す
   

 2000年5月15日、ハバナで800名以上のキューバの農民の代表たちが、第9回ANAP大会(全国小農協会)に参加するため集まった。食料増産運動という彼らが直面する進歩と挑戦に関して3日間にわたって議論するためにである。

 ラウル・カストロ副大統領は、革命軍大臣でもあるが、同大会に出席し、活発に議論にも加わった。大会ホールの正面には「我々は経済と政治的闘いの最中にいる!」やフィデル・カストロの「これは食料のための戦いだけでなく、偉大なる政治的な戦い、イデオロギーの戦いである」やラウル・カストロの「豆は、銃と同じほど重要か、それ以上である」とのスローガンが掲げられている。

 ANAPは、農地解放を通じて自らの土地所有権を獲得した10万人以上の小規模生産者と様々な農民や牧場主の組織を合併し、1961年に設立された団体である。キューバ革命は、米国から支援されていたフルヘンシオ・バチスタ(Fulgencio Batista)の独裁政権に対し、武装蜂起と大規模な人民の暴動の後、1959年に確立されたが、ANAPは個々の小規模農家や二種類の協同組合で働く農民たちを組織化している。各自が農場を維持しつつも必需品を協同利用したり、生産物を販売するために労力を自発的に共同出資する信用サービス組合(CCS)と、土地と農業機械と協同農場を組み合わせた自発的な農民組織、農業生産協同組合(CPA)である。ANPAは、独立した小規模農民も組織化している。キューバの小規模農家は、耕地の約20%を所有し、農業生産の約3分の1を生産している。代表たちは、キューバの20万人の農民を代表し、うち15万人は農地を個人所有するか、組合として土地を所有し、残りは彼らと共に働く家族である。構成員のうちの約28,000人は女性である。

 会議の冒頭では、代表たちは、サトウキビ、タバコ、コーヒーを含めた主要作物の生産改善への努力について議論した。各作物について代表たちは議論し、翌年の目標値を採択した。その後は、全体的な生産の向上、コスト削減、より廉価で町や都市内の市場で販売できるように肉、牛乳、野菜をさらに多く生産することについての議論がされた。作物収量は、協同組合ごとに大きくばらつく。生産を増やした組合の代表はどのようにしてそれを達成したかを説明し、安定した労働力や正確な経理、そして、とりわけリーダーシップが重要であることについて議論した。

 グアンタナモ州からの女性は、彼女の組合がいかに牛乳生産を増やし、地元の農民市場での価格を低下させたかについて説明した。実際、キューバの酪農は、すべて手で搾乳されている。過去2年間のこの地域での旱魃や飼料不足で牛乳が不足していることをある農民が説明した。

 キューバは1989年以前には東ヨーロッパとソ連から家畜飼料や脱脂粉乳、その他の多くの食料を輸入していた。当時はキューバ人が言うように、制度が「メレンゲ菓子のように」なり始めたのだった。こうした国からの援助や有利な貿易関係が突然に終焉すると、キューバは「スペシャル・ピリオド」として知られる極端な経済混乱とモノ不足を経験する。1989年から1993年にかけ、生産は約35%も落ち込んだ。牛乳生産は、他の農産物と同じくここ数年で回復しつつはあるものの、いまだに必要量にはほど遠い。とはいえ、最悪の時期のときでさえ、妊婦、7才未満の子どもと老人は、政府保証する日量1リットルの牛乳を受け取り続けた。

 サトウキビの目標についての議論がされる中、ANAPのオルランド・ルゴ・フォンテ(Orlando Lugo Fonte)代表は、ヘクタール62トンというサトウキビの生産計画は、全キューバ人の食料増産を意味すると説明した。

「我々は、現在サトウキビ用に使われている土地の一部を他の作物に使うことができる。我々は、協同組合で栽培する作物を多様化しなければならない。労働者たちは、より多くの食料生産を成し遂げ、生活を改善できるとことを知るだろう」

 ラウル・カストロは、キューバ革命闘争史の中で果たした小農の重要性について説明した。「Mambi軍は、キューバ独立のために刀で敵に戦った。彼らは、誰であったか。小農だ。誰が、40年前に反乱軍のバックボーンを作り上げたか。小農だ。今日、キューバ軍を維持するには非常に金がかかる。そして、小農は重要な役割を演じている。労働者と小農の統一は、革命の母体となる力である」

 代表たちは、エリアン・ゴンザレスが父親と一緒にキューバに帰国することを米国政府が認めるようキューバ人たちの要請動員を続ける決意も表明した。

 この会議には、メキシコ、ブラジル、エクアドル、ニカラグア、ホンジュラス、チリ、スペイン、そして米国から約70名の来賓が出席している。ブラジルの土地なし農民運動のリーダーは、国際的代表派遣団のための挨拶を読んだ。キューバのアトランタ・ネットワークの後援を受けた米国からの代表派遣団は、7人の農民と2人の労働者が含まれる。旅行者として参加している者の中には、ジョージア州の2人の農民、イリノイ州から有機野菜栽培農民がいる。そして、4人の酪農家も参加している。うち3人は、ウィスコンシン州出身で、家族農場防衛(Family Farm Defenders)と国際組織ビア・カンペシーナ(Via Campesina)のメンバーである。もう一人は、ヴァーモント州出身でルーラル・バーモント(Rural Vermont)に所属している。全員が米国の小農運動の活動家で、資本主義による商品価格の値下がりや資金低下、そして、生産コスト増で自分たちの土地を失うことに対して戦っている。米国農務省の人種差別的な政策により、過去10年で何万もの黒人農民が土地を失っているが、黒人農民は、これに対し金銭的な補償と債務救済を勝ち取るための運動を行っている。ジョージア州の野菜農家ウィリー・ヘッド( Willie Head)氏が、米国派遣団を代表し会議の挨拶を行うと、ANAPの代表たちは、立ち上がり、満場の拍手喝采でこれに応じたのだった。

(米国の社会主義系団体militantのHPからの記事)
 Myrna Towner,Farmers in Cuba discuss production, political challenges 2000.

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