2000年10月6日

キューバ有機農業へのブルーリボン賞

 近代的社会において有機農業で食料を供給しようと試みている唯一の国として、キューバは誉め讃えられている。キューバ有機農業協会は、1999年にスウェーデン議会で「オルターナティブ・ノーベル賞」を受賞した。だが、スウェーデンからの絶賛は、一月に7つの卵しか配給されていないキューバの家庭には「偽物の指輪」であるにちがいない。

 先進諸国の環境保護活動家たちは、化学農薬のかわりに天敵を用いて害虫防除を行うキューバの努力を誉め讃えている。フード・ファーストのピーター・ロゼット氏は、最近、キューバについて「持続可能な自給農業で世界最大にして最も成功をおさめた実験」と称している。だが、これはキューバの家族には、偽物の指輪にちがいない。キューバの人々が、毎月配給で受けているのは約2.25㎏のパン、2.7kgの米、0.45㎏の豆と卵7つなのだ。キューバの有機農場の収量が低いため、常時、飢え栄養失調に近い状態におかれているのだ。

 世界のほとんどの農業の収量は向上傾向にある。だが、キューバ経済の大半を支えてきたサトウキビの収量は、カストロが40年前に権力を掌握したときのたった3分の2にすぎない。だが、この失敗傾向は、キューバ国営農場の批判にはつながらない。実際、キューバはその農地の約4分の1を「労働者と大地との結びつけ」と呼ばれる新たなパターンに転換している。4名の労働者からなるチームが約13ヘクタールの限定された土地の責務を担っている。もし高収量をあげられれば、特別の利益さえも得られるのだ。これは家族農場と呼べるだろうか?。とはいえ、この新たな生産チームでさえ、キューバ人たちの栄養を満たすのには十分ではないのだ。

 アルフレド・ホルダン(Alfredo Jordan)農業大臣は、最近ラジオ・ハバナでこう語っている。

「国民消費のため、最大の努力は稲作部門でなされています。根菜類や野菜は、その生産を増やしてはいますが、それだけでは需要に十分マッチしないのです。動物蛋白質の需要をカバーする努力もされてはいますが、この部門は最も困難が見受けられるところで、回復もゆっくりなのです。農業生産が伸びていることは事実ですが、まだ国民需要をカバーするにはほど遠いのです」。

 ホルダン農業大臣は、訪問者にきさくに「もっと高収益のあがる化学肥料や農薬が欲しいのだが、キューバはそれを買うには壊れすぎている」と告げたのだった。

 ソ連崩壊が東側圏からのキューバに対する資金援助に終焉をもたらした。もはやキューバは、砂糖からは多くの金銭を稼げない。ヨーロッパのダンピング輸出で拡大した砂糖輸入障壁が価格を下げているためだ。だが、有機農業に重点を置いているとはいえ、キューバ農業はいまだに、年間約1億ドル価値相当の石油や8千万ドル価値相当の化学肥料、3千万ドル価値相当の農薬やその他の高投入資材を用いている。だが、それも十分ではない。もちろん、この農業上の失敗はキューバ政府を辱めるものではないが。

 ごく最近、キューバは、UNDPの持続可能な農業のネットワーキングやその拡大プロジェクト(SANE=Sustainable Agriculture Networking and Extension )を取り入れ、「有機農業国際会議」も開催している。

「そのことは、とりわけ、海外からの来訪者に、キューバが大きく前進している。東欧社会主義圏の崩壊で引き起こされた食料危機を克服しているという反応を呼び起こすものになっているのです。昨年キューバは、その主要食料作物の大半で、史上最大の生産をあげました」。

 そうピーター・ロゼット氏は語っている。

 もちろん、過去には、キューバはその食料の約半分を輸入できたし、作物を国内で生産する一助として必要な化学肥料や農薬もすべて輸入できた。だが、今では、緊縮経済によって、観光やタバコを除いて、ほとんど稼ぐ力を持ってはいない。

 ハバナ市長はロゼット氏にこう語っている。

「最近の世帯調査でわかったのは、ある一つの都市地区では、ちょうどその地区が食している食料の40%が、その地区で生産されているということです。政府の配給は十分ではなく、農場の労働者たちは、低収量の自分たちの有機農場で食べています。ハバナ市民は、死にものぐるいの深刻な菜園者なのです。もちろん、それは、リラックスする時間やスポーツ、ホビーする時間がほとんどないことを意味します。彼らは、工場がオフの時間に、草をむしり、虫をつぶし、モザイクウィルスを心配なければなりません」。

 もし、キューバが世界の最も偉大なオルターナティブ農業で成功した国であるとしたならば、二番目はどこであろうか。エチオピア、ルワンダだろうか。

デニス・アベリー(Dennis T. Avery)氏は、米国インディアナポリスのハドソン研究所のグローバル・フード・センター(global food issues for the Hudson Institut)の所長である。

(ハドソン研究所のHPの2000年の論文から)
  Dennis T. Avery, Cuba's Blue Ribbon For Organic Farming,2000.

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