2001年3月

キューバ紀行

 私たちのプログラムは、自然と人間の財団(Fundación de la Naturalez y el Hombre)の支援で作られました。いまハバナに住んでいるオーストラリアのパーマカルチャリスト、パミラ・モーガン(Pamela Morgan)と財団にいるカナダの学生マリア・エウヘニア・ウルビナ (Maria Eugenia Urbina)によってです。

■植物園

 ハバナでの二日目、私たちは、食用果樹プロジェクトに取り組んでいるカルロス(Carlos)氏の指導もと、植物園に作業にでかけました。植物園は16haで、125もの様々な果樹を世界中から集め栽培しており、カルロス氏は、どの果樹がキューバに適しているのかを調べています。午前中の仕事は、果樹プロジェクト用に実生苗をポットに入れることでした。私たちは、マカダミア、パッション・フルーツ、コニファー(anti-desma)、グアバ、guanabanaやtagetesを植えました。Tagetesは害虫を防止に使われています。果樹の苗は一般人民に廉価で販売されており、カルロス氏は、育苗園を8,000種にまで広げようと目指しています。植物園のこの部分は通常は一般に開放されていません。

 有機ベジタリアン・レストラン「エル・バンブ(El Bambu)」で美味しい昼食を食べた後、私たちは果樹プロジェクトを散策しました。果物やナッツをもぎとって食べる機会があります。カルロス氏は、マルチとするため、取ったものを樹木の下に残していました。その後、私たちはもっと働くため、植物園のもとの場所に戻って、植栽用の黒いプラスチック鉢に土を入れました。私たちは、労働者の食堂で昼食を食べましたが、とても大きな体験で、ジョンが全員分を支払いましたが、それはたった1ドルでした。そして、植物園のガイド付きツアーもセットだったのです。

 長いハンドル付きの刈り込み器、剪定ばさみ、鋸やナイフ。カルロス氏はキューバ有機農業支援グループから受け取った道具類をとても誇りにしています。私たちは、古いプラスチックボトルの面白い使い方に気づきました。それは土壌を掘る即席のスコップにするため縦に切断されていました。金属製の農具ほどには役立ちませんが、キューバの菜園者たちの持続的な創意を示すものです。

■ビルダ・ぺぺ夫妻との一日

 ビルダ・フィゲロア(Vilda Figueroa)さんとペペこと、ホセ・ラマ(Jose Lama)氏が運営されるコミュニティ食料保存プロジェクト(Proyecto Comunitario:Conservacion de Alimentos)は発展し続け、グループ全員に大きなインスピレーションを与えていました。夫妻は、いま毎年2万人以上の人々とコンタクトしています。テレビやラジオ番組を通じては、その数はたぶん150万人に及んでいるでしょう。さらに、夫妻は5冊の本を出版していますが、うち一冊はキューバ有機農業支援グループの援助で英語で出版されています。夫妻は簡単な食料保存法を教え、自ら食料を栽培し、食習慣を改善するよう家族を激励することで、プロジェクトを進めています。ビルダさんは「キューバ人は玄米や粗糖を好きではなかった」と説明しました。

 プロジェクト本部には、乾燥させたバナナ、ニンジン、キャッサバ、サツマイモ等、保存食料がたくさんおかれています。天日乾燥させた薬草(調味料と薬用)、酢で保存した食料、殺菌で保存したトマトソース、シロップで保存したパパイア、低温殺菌で保存した柑橘類のジュースもあります。

 ビルダさんとペペ氏は、近くの保育園にデモンストレーション菜園も設けています。そこは120種もの食用や薬用植物でいっぱいです。夫妻は、毎年9つのトレーの中で生鮮品約255kgを乾燥させています。地域コミュニティのメンバーたちは、必要な薬用植物を得るため家庭生ゴミを堆肥にするようもってくることを奨励されています。夫妻は、キューバの家族で使えるのに役立つ新たな植物を見つけようとしています。最近の成果のひとつは、道の脇に野菜や果樹を植えることです。

■アラマルの都市農場

 ビルダとぺぺ夫妻は、私たちをハバナ東部の郊外にある都市農場に連れていってくれました。この農場は2haの規模で、12人のメンバー、うち5人は女性で、協同組合方式で運営されています。さらに、他の12人の労働者もいて、うち4人は女性です。農場全体に様々な野菜、果物、薬草、花、観葉植物があり、とても生産的でしたし、ウサギ、鶏、アヒルも飼育していました。ミミズ堆肥や堆肥づくりの優れた事例も目にしました。彼らは輪作やコンパニオンプランツに取り組み、事実上自給していて、外部からの投入資材は使っていません。さらに、日よけ用にいくつかの場所を黒い網で遮光していました。協同組合は税金を納めていますが、市民に直販をすることで利益をあげられています。私たちは、農産物を買うため、たえることなく直売所にやって来る地元住民の姿を目にしました。私たちは、この農場でとてもおいしい昼食をご馳走になりました。私たちはドルで料金を支払いましたが、それはどうみても歓迎されたのでした。

■自然と人間の財団

 私たちは、自然と人間財団本部を午前中に訪問しましたが、それは魅惑的でした。財団は、環境改善のために働くNGОで、文化、科学、芸術分野で幅広く活動しており、歴史や地理的な研究を国内外で支援しています。私たちは、コロンブスの「アメリカの発見」の記念日と一致させるため、1992年にエキサイティングな中米の水路のカヌーの旅がされたことを知りました。私たちを迎えてくれたアンヘル・グラナ・ゴンサレス(Angel Grana Gonzalez)氏もこの旅の参加者の一人でした。財団は、いま、小規模農業を支援する一連のプロジェクトをハバナ全域で支援しています。グループは、ハバナのスケール・モデル(Maqueta)を見に行くために出発しましたが、クレアとタムシンは、財団本部の後ろにある菜園で働きたいと後に残ることを志願しました。これは2000年1月のガーデニング・ブリゲードで始められた菜園です。

■セロのパティオ・プロジェクト

 これは、家族グループが共有する小さな中庭菜園です。菜園は、社会活動に参加するためにも使われています。フスト・トレス(Justo Torres)氏は、この3年コミュニティ・パティオ・プロジェクトに取り組んでいます。プロジェクトは、土地がなくても、どれほど食料が提供できるかを人民に示しています。地元の医師や学校、老人たちも参加していて、保健省、病院や大学とも連携しています。セロ(Cerro)はハバナでも最も貧しい地区のひとつです。23,000人の住民の主な問題は、住宅が貧弱で、アルコール中毒やドラッグ使用を示す証拠があり、緑のオープン・スペースがとても少ないことです。プロジェクトの主要な目的は次のとおりです。

  • 新鮮な野菜やハーブの提供
  • 緑のスペースへのアクセスをもたらすこと
  • 環境改善
  • 社会的なつながりの改善

 いま、プロジェクトには、12のパティオがあり、地元の学校の菜園クラブや地元の公園に植林するための果樹育苗がされています。パーマカルチャーが促進され、「持続可能性」がプロジェクトのキーワードとなっています。私たちガーデニング・ブリゲードは、午前中ここで働いきました。狭い場所で、私たち16人に加え、キューバ人も一緒に働くのは大変でしたが、私たちはグループ内で素早く段取りを決め、熱心に仕事に取りかかりました。私たちがフスト氏のためにやった仕事は次のとおりです。

  • 地元の緑地から手押し車で新たに表土を持ち込むこと
  • 堆肥を土に混ぜること
  • コンテナーから古い土壌を空け、再び満たすこと
  • キャッサバ用にタイヤに土を入れ積み重ねること
  • 屋根がわらを使ってオルガノポニコを拡げて、土を入れること

 私たちはそこでとても長時間働くことができました。フスト・トレス氏は大した人物です。誠実で、勤勉で、熱心で、卓越したユーモアの感覚があります。彼はすぐに私たちグループ全員の人気者になりました。彼の将来計画のひとつは、パティオのいくつかに「コーヒー店」を設けることです。これによって、地元住民は、社会活動に参加しつつ、パーマカルチャーを学ぶことができるでしょう。キューバ有機農業グループは、今後、ここで何か役割を果たすことができるでしょう。

■ラ・ティンバ(la Timba)の学校菜園

 私たちの最初のガーデニング・ブリゲードの「挑戦」については、よく聞かされたり、リポートを読まされていましたから、ここ1年で状況がどう発展したのかを確かめることをとても楽しみにしていました。ですが、なんということでしょう。菜園ではここ数か月ほとんど仕事がされていないことがわかりました。現場に着くと、大量のバイオマスは燃やされており、ゴミや廃棄物がいたるところにあり、堆肥の山にはゴミが混ぜられ、オルガノポニコも何も栽培されていませんでした。ですが、グループは熱心に仕事に取り組みました。堆肥やゴミを片付け、オルガノポニコの雑草をむしり、レタス、パクチョイ、果樹実生の苗等を植えました。私たちが来る以前よりも、すべてがよくなったように見えました。

 このことは、草の根レベルで人々がプロジェクトに理解や興味を持つ場合にのみ、こうしたコミュニティ菜園は成功するということを強く考えさせます。菜園の手入れをするため一人の若者が学校の管理人として雇われていましたが、彼には園芸の専門知識がなく、関心もありませんでした。ですから、実行しなかったことは実際には彼の欠点ではなかったのです。ですが、パミラは、彼にパーマカルチャーのワークショップに参加するようアレンジしました。それは、彼をインスパイアーすることでしょう。

■フェルナンディーニ(Fernandini)菜園

 フェルナンディーニ菜園は、メキシコ通り(Avenida de Mexico)からちょっと離れたところにあり、Brachia de Habanaからはそれほど遠くありません。フェルナンディーニ氏は、パーマカルチャー技術を使って開発した農園だけでなく、フィデルやチェの革命軍の一人としても有名です。菜園の土地は痩せ、土地も不規則で多くの問題を抱えています。氏は、仕事に熱中していて、バナナ、マンゴー、アボカド、キャッサバ、サトイモ、ホウレソウ、レタス、トマト、トウモロコシ、豆等育てている果物や野菜を示してくれました。氏は、フェンスに沿ってカボチャを育て、水に浮かぶポリスチレン・トレーでレタスを栽培しています。氏は、これはインドでも使われている技術だと言いました。彼は池の中で魚、スッポン、カメも飼っています。私たちのグループのうち半分が古いフェンスを取り払ったり、草むしりをする等、フェルナンディーニと一緒に働きました。トムやクレアは、古い金属フェンスを取り払うために熱心に働きましたが、ちゃんとした道具がないので、仕事は大変でした。次のブリゲードでは、ボルト・カッターが必要です。

■ゲロ菜園

 ゲロ(Gelo)菜園(Huerto de Permacultura "San Isidro Labrador)は、まだ開発の初期段階です。果物、野菜、薬草、教室、ミツバチ、鶏、堆肥、ミミズ堆肥からなるコミュニティ菜園づくりに取り組んでいます。自分のパティオ(菜園上の約30フィート)で、ゲロ氏は、豚、クイ(天竺ネズミ)と鶏を飼育しています。菜園があるのは、オールド・ハバナでも貧しい場所です。私たちのグループの仕事は、菜園を飛躍させるスタートをもたらすことでした。古い潅木や樹木を取り除き、ハーブのベッドを作る準備ができている場所を片付け、堆肥の山を分類し、別の堆肥の山を始め、瓦礫やゴミを片付けました。日差しはとても強く、それはきつい仕事でしたが、日が暮れるまでには、グループはかなりの仕事を成し遂げたと感じました。ゲロ氏も私たちがやったことに喜んだように思えました。

■ミゲルとアナの農場

 パミラに連れられ、この農場を訪ねたのは、ハバナ東部のビーチを訪れた帰り道でしたが、もし、再び働くために行くことができたとしたら、訪ねたグループは農場に魅了されることでしょう。それは11haの個人農場ですが、完全に有機農業で、一連の生物防除を活用しています。事実上自給もしていて、農園が大きいため好結果を得ています。様々な果物や野菜のほかに、魚、蜂、雌牛、ブタ、鶏も飼育しています。とりわけ、ミゲル氏が誇りにしているのは、野菜の大きさです。氏は常に三種類の作物を間植し、ときにはバイオダイナミック技術を使っています。つまり、月の動きによって植えているのです。氏は栽培した作物の記録をすべて取っており、現在、持続可能な農業コースも開催しています。私たちは草を取り、新たな作物用に土を準備し、野菜畑で働きました。

■牧草・飼料研究所(Instituto de Investigaciones de Pastos y Forrajes)

 グループの何人かが、この旅には退屈な側面が少しあると思っていたことは認めなければなりません。ですが、私たちがフェルナンド・フネス(Fernando Funes)副所長に案内されると、彼の情熱が伝わってきました。訪問者全員が「なんと、それは驚くべきことだ」「おお、それは知らなかった」と絶叫しました。キューバの全州には、農法を研究する農業省の多くの研究所があり、それらは、現在、持続可能な解決策に専念しています。牧場と飼料の分野では、次のような仕事をしています。

  • 堆肥とミミズ堆肥
  • ラボラトリーでの薬用植物の処理。私たちは、アルファルファのパウダーが生産され、販売用にパッケージにされているのを目にしました。
  • バイオ肥料、害虫コントロールと土壌接種物の生産。ミルタ・ロペス(Mirtha Lopez)博士が、大豆生産用に開発した「Bio-riz」を示してくれました。彼女は、その利用で大豆生産がとても増加すると主張しました。

 マルタ・モンゾテ(Marta Monzote)博士が、作物と家畜統合生産システムの実験について説明しました。これは1haの土地で行われていましたが、生産乳量、作物生産量、人や家畜の労働力、燃料出費などの詳細な記録が取られていました。地力は、堆肥、緑肥とマルチで維持されています。

 私たちは、フアン・ホセ・スアレス(Juan Jose Suarez)がとくに気に入りましたが、彼の実験地には牛ではなく四頭のヤギがいました。彼はヤギを愛していて、ヤギも彼を愛していました。ファン氏は、健全な食べ物、衛生、水との相互作用の必要性を強調し、こうした要因が、高乳量産出につながったと言いました。導入された唯一の投入資材は、糖蜜とミネラル塩で、ヤギは囲いの中で飼育され、土地は飼料栽培に使われています。フアン氏は、この三年というものヤギは病気にかからず、寄生中もごく少ないと言いましたが、確かにヤギはとても健康に見えました。

 訪問の終わりに、フネス氏は「英国ともっと多くのつながりを持ちたい」と言いましたが、研究所のスタッフが訓練を受ける機会をもてるよう英国への訪問を組織化できるかもしれません。

■ほかにやったこと

 ガーデニングやスタディ・ツアーだけでなく、私たちは海岸にでかけ、ハバナ旧市街も訪ねました。ライブ音楽を聞きダンスをするためにです。週末には全員で、ハバナ西方の美しい農村にある小さな村、ソロア(Soroa)にでかけました。何人かはそこに一泊することにし、日曜日にはバスはグループの3人だけを乗せビニャーレス(Vinales)渓谷に出発しました。道すがらキューバのヒッチハイカーも乗せましたし、私たちは熱心に働きましたが、この滞在も楽しかったのです。

 ですが、最も印象に残ったのは、出あった人々がとても熱心で誠実だったことです。彼らは、極めて困難な状況下におかれながらも、驚くべき成果をあげています。とてもインスパイアーされ、質素な経験でした。

(イギリスのキューバ有機農業サポート・グループのHPからの記事)
 Wynne Kelly,COSG Gardening Brigade 2001 .

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