2003年3月2日

はばたくキューバの有機農業

 「政府の国家都市菜園プログラムがあることもあって、現在、キューバの自由農民市場では、有機栽培されたトマト、ショウガ、ブロッコリー、オレガノ、その他の農産物や香辛料が簡単に手に入る。キューバでは、小規模な農民たちが有機野菜やハーブを生産しているが、その量は1994年の4,200トンが2002年には300万トンにもなっている。有機砂糖やコーヒーはヨーロッパ市場向けのものだが、それとは異なり、現在キューバの有機菜園で無農薬・無化学肥料で栽培されている野菜は、国内市場向けなのである。

 有機農産物を輸出するには、国際的な認証が必要だし、その値段は小規模な農民たちにとっては、ばかにならない。いまキューバでは主な外為の獲得先は観光業だが、ハバナ市内やハバナ郊外で標準よりも高収量をあげた農家グループは、2003年から、生産物の一部を観光業向けに売り始めている。ハバナで農業を営むオルガ・オオエ・ゴメス(Olga Oye Gomez)さん(42歳)は言う。「私たちはホテルに直売をするつもりなんです。これから、私たちが稼ぐ外貨が、菜園の維持や技術改善に使われることになるでしょう」。

 オオエ・ゴメス(Oye Gomez)さんは、チェリー・トマト、フダンソウ、セロリ、クレソン、ニラ、ホウレンソウ、バジル、パセリ、ミント、オレガノ、ショウガと3品種のレタスを栽培している。カリフラワー、ブロッコリー、キャベツも栽培しているが、それは小規模都市菜園での栽培を政府が推奨している有機農産物品目である。

 ソ連解体と東ヨーロッパの社会主義圏の崩壊が引き金となった経済危機と食料不足の中で、1990年代、キューバでは、都市や町中の空き地やその他の未利用地で農作物を生産したり、小家畜を飼育はじめた。キューバの人口は1200万人なのだが、小規模な家族農業での有機農業は、いま32万6000人もの雇用を生み出している。

 都市農業には美徳(virtues)がある。専門家たちは化学肥料の代わりに有機堆肥とマルチを、化学合成農薬の代わりにバイオ的な病害虫管理とその他の環境に優しい技術を使うよう指摘している。さらに、巨大な温室により周年野菜栽培もできるようになっている。

 「おかげで、最も暑い夏の7月、8月にもトマトを提供できるんです」と、オルガさんは口にするが、それは1985年にオルガさんが食用作物を栽培するのに使うとの条件で彼女に貸した0.5ヘクタールの土地なのだ。オルガさんの平方メートル当たりの有機野菜の平均収量は18~20kgだったが、2002年には25kgを達したし、2003年にはそれを27kgにまであげることを望んでいる。オルガさんは160人ほどの小規模な農家からなるクレジット・サービス協同組合のメンバーである。彼らはハバナ郊外で耕作し、1994年に政府により認可された農民市場で生産物を販売している。それは、需要と供給の原則によって運営されている。協同組合はその会員に、有機農法の技術的アドバイスを提供する。

 「海岸に近かったので、土地は石ころだらけでした。ですが、土にたくさんの有機堆肥を入れることで、いまの姿まで一歩、一歩もってきたんです。地力が付いた土地は、穀物を栽培するのに良い条件をもたらします」。と、オルガさんは言う。菜園では、オルガさんは、有機物が豊富な土の中に苗を移植し、1日に二回、水をやる技術を使って、夏の盛りにもレタスを栽培している。各作物の間を狭め、バイオ製剤を使うことで、病害虫を管理し、オルガさんは「良い味で形の高品質のレタスを得られていると説明する。化学肥料の代わりに、オルガさんは、ミミズ堆肥、サトウキビの搾りかす (処理後の残渣の一部)、牛糞と鶏糞を肥料に使っているし、農薬も天然のものだ。

 有機農産物の国際市場での価格は、競争力があり、健康にリスクを引き起こさず、土壌を保全する環境に優しい農業のための動機づけとなる。キューバのエコノミスト、アルマンド・ノバ(Armando Nova)によれば、EUでは有機栽培の果樹や野菜は、農薬を使って栽培されたものより60~70パーセントも値段が高い。だが、キューバでは、有機農産物も非有機農産物もコストは同じほどかかる。

「ですが、品質に違いがあります。私たちの農差物は菜園から市場に直接に行くので、いつも新鮮なんです」。そう、オオエ・ゴメスさんは言う。

(ラテンアメリカの環境や開発問題を扱うTierraméricaからの記事)
 Patricia Grogg, Organic Farming Takes Off in Cuba, 2003.

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