2004年1月20日

キューバの土壌の有機転換

 ディスク・プラウを備えた巨大なトラクターを写した1970年代と1980年代の昔の写真がある。以前は、まるで土の表面が磁器の皿と同じほど滑らかになるまで、時間をかけて何度も土壌を機械でならしていたのだ。旧式のマニュアルにしたがって、農場経営者たちは、この仕事を完全に成し遂げていた。だが、自然法則からするとこれとは別の選択が必要なのだ。

 耕作に適した土層が鋤で不適切に反転されると、有機物はエコロジー的に不健全な速度で生物学的に分解し、土壌は「免疫力」が欠乏してしまう。結果として、作物を栽培するには、化学製品の「輸血」が必要になってしまうのだ。化学肥料を乱用し、土壌を不定切な技術で扱ったことは、キューバ農業に悲惨な結果をもたらした。今、キューバの農地の78%は肥沃度が低く、48%は有機物を欠いている。

 農業機械研究所長のエリベルト・ボウザ(Heriberto Bouza)博士は、一定の深度で常時回転させるディスク・プラウが土を締め固めてしまうと説明する。耕した後で、初めて雨が降ると、農地は水浸しになってしまうのだ。

 土の健康を主張する他の人々と同じく、ボウザ博士も、適切な設備や道具が使われるべきで、機械化は進歩ではないと考えている。

 農業機械研究所によって設計されたマルチ・プロウやその他の道具は、作物を栽培できる力のある土層にダメージを与えないエコロジカルな技術の例だ。というのは、地表を水平に切るからだ。こうした機械で耕したほ場を見ると、雑草には触れていないように見える。ディスク・プラウは、雑草を切断するので、雑草がまた増えてしまうが、このタイプの農具では、雑草を完全に根から引き抜くことができる。

■赤土は活力のある土壌ではない

 ハバナやマタンサス州の赤い大地が肥沃だと思っている人もいるが、赤レンガ色は土壌の活力を示さない。むしろ、有機物含有量が低い証拠なのだ。専門家たちによると、貧弱な農業技術によって、生物的に豊かな土壌が、鉱物化され、地質的土壌に変形されてしまっているのだ。

 科学技術環境省の研究から、土壌の物理的状態、高温や降雨の変化が、キューバの土の有機質含有量の低さと関連していることが判明している。そして、今、人間やったプロセスが、土壌劣化のまた別の要因であることがわかってきている。

 劣化した土壌を回復させるため、今、最小限度での耕作、牛耕の増加、有機質肥料の使用、輪作の改善といった技術が採用されている。そう農業省の土壌研究所長のアビリオ・カルデナス(Abilio Cárdenas)博士は説明する。

 以前のキューバの貿易は、旧東欧社会主義圏の同盟国が支えていたが、キューバは毎年50万トン以上の化学肥料を使っていた。だが、1990年以降は、その量は4万5,000トンまで落ち込んでいる。冬季には約388,600ヘクタールで作物が耕作されているが、主にジャガイモとタバコ用にたった25,000トンの化学肥料が使われているだけだ。

「2004年には、家畜排泄物と野菜残渣から、1400万トンの有機資材を生産しなければなりません」。そうカルダネス博士は説明する。農薬が問題解決につながらず、むしろ問題を悪化させることが理解されているので、有機肥料に転換できるものは、すべて利用しようという運動につながっている。

 有機質資材は、人間の身体にとってのビタミンと似ている。それは地力を高めるが、有機資材が欠乏していると、地力は低下し、農地が耕作できるようにするには、化学肥料を増やさなければならない。

 土壌研究所の専門家たちは、誤った方法で土壌から栄養素やミネラル分を抽出してしまったこと。そして、そのことで引き起こされたミネラル欠乏という赤字を回復するうえで最も適切な解決策は、特定の化学物質と有機肥料の適用な組み合わせであると主張する。このやり方では、エコロジー的なバランスを回復するのに必要な時間が最も短くなるのだ。野菜の残渣や家畜排泄物は、農場で有機肥料に変えることができるし、そのことで、有機資材を輸送するのに使うエネルギー消費も避けることができる。

 ミミズ堆肥は優れた有機肥料だが、2003年にはキューバ全体で100万トン以上が農業用に生産されている。生の厩肥1トンからは、約500㎏の腐植と100㎏のミミズが得られる。農場で生産される時は、肥料を生産しながらもミミズはわきに置いておけるし、残りは、家畜飼料用の粉末食品に使われる。

■エコロジー的な進歩

 牛耕は燃料不足によって引き起こされた後退だと考える人々もいる。だが、先進諸国であって、農地が劣化しないように、牛を再び使っている生産者は多くいる。

 キューバの農業機械研究所は、牛耕用に必要な農具を開発しており、牛耕と同時になされるいくつかの別の作業もできるようなっている。しかも、牛を使うときに、農民たちに求められる仕事がより少なくなるよう、付属品も開発している。エコロジー的な技術は、矛盾しないし、進行と相反するものでもないのだ。

(グランマ・インターナショナルの記事)
  Raisa Pages,Organic transformations for Cuban soil,2004.

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