1992年11月27日

キューバの再生可能エネルギー

 エコロジスト、そして、第三世界の人々のすべての目は、キューバへと向けられなければならない。エネルギー問題に対するキューバの姿勢は、多くの理由から重要だ。米国が不当にキューバに押しつけている経済制裁と旧ソ連の崩壊で、キューバ人たちは、自分たちの天然資源だけを用いて、エネルギーを自給する可能性を研究することを強いられたのだ。

 キューバには、石炭、石油、天然ガスはないが、豊富な日光がある。だから、キューバのエネルギー政策は二点から出発している。第一は、国内需要を満たすため、太陽エネルギーを変換する能力だ。第二は、エネルギー生産の広範囲にわたる社会的マネジメントである。

 実際、キューバには、あらゆる第三世界の国々にとって、そして、あらゆるエコロジストにとって夢となる状況がある。社会的な統制や土地管理と結びついた豊富な再生可能エネルギー資源があり、多国籍企業からのネガティブな影響は受けない。キューバは、エコロジー的に持続可能な発展が現実でありえる実証例となっているのだ。

 さらに、この発展には、エネルギー問題の地域管理での市民たちの直接参加も含んでいる。地域住民は、バイオガス発生器、小規模の風力発電、ソーラー設備といった様々なエネルギー技術の実践的な知識を持っている。おそらく、これが、米国がキューバに対する経済制裁を強化している理由なのだ。そしてまた、エコロジストと第三世界の人々が、ただ立ち止まり傍観する以上のことをするべき理由なのだ。

(ロベルト・ガルティエリ)

 1989年から2年の間にキューバの輸入量は50%も減少した。それは、国に厳しい再調整対策を採択することを強いた。エネルギー面での最重要政策は、国の施設でのエネルギー消費量の削減、工業生産の大がかりな縮小、あるいはケースに応じた半減、生産と社会活動に優先順位をつけるためのエネルギー配分の合理化である。だが、キューバ経済の社会主義的な基礎とは整合性が取れないため、価格政策を用いて、地域でのエネルギー消費を抑制したり制限することは、除外された。この活動に沿って、エネルギーの効率性の開発や地域で利用可能な輸入エネルギー源のオルターナティブの開発に最も注意が払われた。こうしたオルターナティブのうち、再生可能エネルギーはますます重要であると見られている。

■バイオマス

 バイオマス由来のエネルギーは、キューバにとり、最大の潜在的再生可能資源となっている。うち、サトウキビが最重要資源である。グローバル経済において砂糖が経済に占めるシェアが大きいことと、キューバの砂糖産業で伝統的にバガスが燃料として多く使われてきたことが、この固形再生燃料がエネルギー割合で1989に30%、石油換算で400万トン近くを占めてきた理由である。このバガス(液が絞られた後に残るサトウキビや砂糖ビーツの残渣で、燃料や断熱材に用いる)のエネルギーの消費は伝統的に低効率で、発電変換率は国平均で絞ったサトウキビのトン当たり19~20キロワット(Kwh/ton)となっている。この効率性を改善することが、明らかに最優先課題である。

 サトウキビの残渣も潜在的にはかなりのエネルギーを構成している。キューバのサトウキビは、伐採と収穫の機械化で特徴づけられてきた。900以上の地区センターで、年間に700万トンに匹敵する収穫がされてはいたものの、以前はエネルギー利用されることもなく、燃やされていた。バガスやバイオマス由来のほとんどの固形燃料には低密度という共通する特徴がある。そこで、そのエネルギー転換を経済的に行うには、それらが発生する近場で使うか、圧縮しなければならず、その利用は限られた経済条件に限定される。バイオマス由来で重要なもう一つの潜在エネルギーは、バイオガス生産で、その主な資源は、以下のとおりである。

  • 砂糖処理プラント、そして、砂糖産業副産物からの残渣
  • 限られた家畜(牛、ブタと家禽類)からの残渣
  • コーヒー収穫物の残渣
  • 加工産業(製紙や食品加工)、都市の固液廃棄物、その他のバイオマスからの残渣

 前もった計算によれば、上述した残渣の処理で達成できる総生産高は400万トン以上であるとの可能性が示されている。最近、最初の産業的なバイオガス・プラントが、キューバで運営された。これは、キューバのEcumenical委員会を通じ、ドイツのNGO「世界のためのパン」からの寄付金で建てられた。同時に、もっと小規模なプラントも、地域のエネルギー需要を解決するため数多く建設されている。今のところ、仕事は、その適用を多様化する目的から、バイオガスのクリーン化やその結果として生じるメタンの圧縮に集中している。エタノールの生産は、現在は、酒産業用のアルコール生産に限られている。砂糖の絞り液の発酵も、かなりの潜在的なエネルギーではあるものの、これは既存の砂糖生産と競合することになるであろう。

 木材と木炭は伝統的に使われてきた固形燃料である。年間の木材生産量は、約2,5100万立方メートルで、年間の木炭生産は約8万トンである。これは再生率を考慮しても許容できるレベルだ。

 1959年にキューバ革命が始まったときから、森林再生が重要な仕事となったことについてふれておかなければならない。その結果として、キューバは、過去24年で国土の森林面積が14%から20%へと大きく高まるという事例を示す世界でも数少ない国のひとつになっている。だが、石油入手の突然の減少が主に社会や国内での料理エネルギーで木や石炭使用を増やしたことは、事実である。この問題の解決策は、以下である。

  • エネルギー生産用の適切な樹種の植付け
  • 木炭(木材の立法メートルにつき1.4~2.5の袋に産出を改善)生産における効率を改善するコラム-タイプ炉の標準化
  • 小型の調理ヒーター用のスタンダードとして『ブラジル』のヒーターを導入(伝統的に、この活動は、国全体の木炭の使用の50%となっている)
  • 低密度の固形燃料を使用し、伝統的なストーブの効率性を5~10倍までに増やすため、効率的なストーブの利用を進展させ広めること

■水力エネルギー

 キューバには大河川はないが、研究からはキューバの水力エネルギーの潜在力が325,000toeに匹敵することが示されており、57MWがすでに導入され、多くのプラントも建設中または計画段階にある。これに加え、キューバには、キューバ製の小規模水力発電所の開発プログラムがある。200地区ではすでに稼働中であり、さらに200が計画中である。

■風力

 揚水での風車の利用は主に牧場部門でなされてきたが、無視されていた時期もあった。だがその後は拡大している。キューバには約8000基の風車があり、現在の制限下でさえ、3枚羽タイプと、コロンビアのテクノロジー(『gaviota』として知られる)に基づく新型の製造が国家のレベルで再びなされている。風車を使って揚水することで、年間風車あたりに1.5toeが節約できると見積もられている。発電の見通しからは、キューバの風力の潜在力について十分に研究はされてはいないが、好ましい可能性をもたらす地域はいくらかあり、両方とも大西洋風の影響を受ける北東部と北中央部である。バッテリーの充電と狭い地域の電化用に設計された小型風車と結びつけた小規模発電の利用は、有望であるように思われ、そのその開発作業が進行中である。もう一つのオプションは、風-光電池のシステムの組合せである。

■ソーラー・エネルギー

 キューバには、国産のソーラー熱暖房システムが400あり、主に健康や教育・社会センターに設置されている。1991年には、太陽熱の適用分野で新たな技術解決策が開発された。サトウキビの種子に太陽熱処置を行うプラントである。これは、砂糖産業で普及しており、種子の遺伝的能力と作物の健全さを格段に高める優れた成果をあげている。この技術のそれ以外の作物への適用は、現在研究中だ。

 比較的湿潤なキューバの気候が、強い太陽のひざしとあいまって、農業や産業でのいくつかの加工品や産物で太陽熱乾燥を用いることにより良い条件を与えている。太陽熱乾燥は木材用にも開発されており、いくらかの改善を行うことで、その他にも適用できている。例えば、太陽光電気エネルギーは、以下のように用いられている。

  • 孤立した場所、とりわけ山岳地での通信と医療技術
  • 牛用の電柵や管理された場所での森林保全

 輸入された太陽電池セルは、地元で製造されるソーラーパネルとシステム用に用いられている。

牽引動力

 炭化水素の輸入制限が、主に農作業において伝統的な牽引動力への回帰をもたらしている。現在この作業のためにおよそ20万頭の牛が使われている。しかし、これは従来の鋤に戻ることは意味していない。そうではなく、高い生産性と農業的な技術の最適化を図る上で、より効率的に牛の牽引力を用いるための新技術が開発されている。

開発の原動力

 キューバでは、オルターナティブなエネルギー源、とりわけ再生エネルギー開発を加速化する技術的な挑戦の意味は、かなり認識されている。大学、研究所や試験場、数多くの専門家、科学的な公務員、技術者と労働者が、様々なやり方でエネルギー分野と連携して、社会的、技術的な問題のオルターナティブや従来とは異なる解決策を研究している。上述したテクノロジーの生産のための能力は創造されており、国際的なレベルでのテクノロジー上でのイノベーションが続いている。この努力は、セーフガードへの国家意志の小さな構成要素以上のものであり、キューバの社会開発のプロジェクトを改善している。

■環境的な側面

 キューバのエネルギー・プログラムの環境益には相当なものがあり、それは明白でもある。石油輸入の制約が、キューバを合理的で、環境的に健全なエネルギーという道へ向かわせているが、この方向は永続的でなければならない。最も重要で目に見える利益は、以下のとおりだ。

  • CO2排出の減少
  • 汚染物のエネルギーや有用な原料物資への転換、クリーンなエネルギー資源(ソーラー、風力、水力)の導入

■挑戦

 キューバの技術基盤は、輸入石油と発電(1959年の56%と比較し電気を利用できる国民の割合は94.2%)に基づいている。従来とは異なるエネルギー源を導入するには、新技術の開発や新たな意識開発が必要である。注目に値する後者の例としては、過去数ヶ月にわたり、キューバに100万台以上の自転車が組み込まれたことがある。これは、輸入と国内生産力の創造の両者の結果だった。自転車が増えることは、大量の交通機関の中で考慮されなければならない要因である。だが、それは我々が狙いとする、社会的なふるまいの中にエネルギー現実の新たな概念を取り入れ、最終的には本物の文化的な達成を示すという社会的な出来事なのである。

(WISE News Communique の記事)
  Jorge Santamarina,Cuba's renewable energy development,1992.

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