1998年6月

キューバの再生可能エネルギー

■太陽エネルギー

 どの開発モデルにおいても、エネルギー自給問題が鍵である。キューバ革命のモデルは、これを考慮してこなかった。だが、いまやその鍵は、キューバが成し遂げていることの中で、可能な限り効率的にそれ以外のオルターナティブエネルギー資源と結びつけられようとしている。

 キューバ全体には、一年中日光がある。日光は、地球の唯一のエネルギー源である。われわれが知っているすべてのエネルギーは、日光の子どもである。

 サンティアゴ・デ・クーバにある工場では、ソーラー・パネルを製造しており、それは山岳地帯でうまく活用されている。太陽エネルギーだけに基づき、多くの農村集落の全部もしくは一部がすでに電化されている。1996年末現在では、100ものファミリー・ドクター診療所が、日光のおかげで機能している。

 太陽エネルギーは、ラテンアメリカでも最も進んだ、ラス・ビラス(Las Villas)にある植物バイオテクノロジー研究所のような研究所の役割も決めている。仕事を保留する「統制」はない。日光は、細菌への抵抗性を持つ作物を開発している温室も維持している。

 こうしたすべては大きな進展ではあるものの、キューバ製の太陽光発電用のパネルのセルは、輸入され続けており、それらはとても高額である。皮肉なことだが、現在3~4社の石油多国籍企業が、ソーラー・セルの技術や市場を独占している。これは進展にとって大きな障害となっている。とはいえ、キューバはいつも優れた楽観主義を産み出してきたことから、私は、キューバの技術でソーラー・セルの国産化が可能だと確信している。なぜなら、このことを口にした科学者たちは、現実主義者なのだが「我々は、キューバがラテンアメリカ市場に大きなニュースを提供する直前にある」と言ったからである。

 第三世界での太陽エネルギー利用を促進するために1998年に設立されたドイツのNGO、エコソーラーは、キューバを優先している。なぜだろうか。議員でもあり、エコソーラーの代表ヘルマン・シューア(Herman Scheer)氏はこう説明している。

「キューバは、第三世界の国ですが、自然科学と技術科学では最も高い教育水準にあります。ですから、最高の人的条件を持っているのです。キューバには多くの日光があります。そして、キューバは、世界のどの国よりも他国のエネルギーに依存することが何を意味するのかを理解しています」

 1995年、エコソーラーは、学士コースを提供し、キューバの科学者たちにこうした問題を親しませるため、世界初の再生エネルギー技術大学の設立を進めた。

■風力とバイオガス等

 キューバは、とりわけ海岸地域で、風も吹く。10~18 mphで規則的に吹く。農村地域では、揚水用に、農業近代化の中で廃棄されてきた風車に回帰することが見られている。電気エネルギーを生産するため、キューバの各地に風車を導入するには、多くのことがなされなければならないだろう。

 キューバが国内のほとんどを電化していることは強いもだが、これは、風力エネルギー開発をより金がかかることにしている。とはいえ、このプロジェクトも進行している。オランダの会社とカタロニア、スペインの協同組合が、風車の組立を専門に研究しているが、カタロニアの協同組合は、キューバと技術移転の交流を続けている。

 バイオガスももう一つのオルターナティブだ。最大のバイオガスプラントは、ドイツのプロテスタント系NGO「世界にパンを」の支援を受け、1992年にツルグアノ・シエゴ・デ(Turguano, Ciego de)に建設された。そこは牛糞を用いているが、それ以外にも50の小規模のバイオガスプラントが各地で稼動している。

 中国とともに、インドから派遣された職員がこのエネルギー開発のヘッドとなっており、国家バイオガス計画のアドバイスを行っている。ヘインズ・ピーター・マング(Heinz Peter Mang)氏は、バイオガスで第三世界を支援するドイツのプログラムと協働し、30諸国で導入しているが、こう語る。

「キューバはバイオガス理論では、最も進んだラテンアメリカの国です。ですが、その実践的な適用ではそうではありません」

 キューバ内にある有機物の残さは、30万トンの石油と同等のポテンシャルを持っていると評価されている。だが、現在はまだそのたった1%が開発されているだけなのだ。

 サトウキビから抽出されたアルコールもある。そして、無尽蔵の未来エネルギーとして世界中で研究がされている水素。キューバはすでに、光合成で水素を産み出すバクテリアを発見している。そして、それは、微生物技術で砂糖精製に必要な原油消費量を45%も削減する酵素を産み出すのだ。

■適正技術、適正な教育とともに

 水力エネルギーはもう一つの選択肢だ。小規模な水力発電ダムは、地域の課題解決策となっている。キューバは第三世界の中でも最も大規模な小規模水力発電ダムのネットワークのひとつを持っている。200以上のミニ・マイクロ水力発電センターが、とりわけ山岳集落において2万5000人もの人々にサービスを提供しており、現在さらに250が建設中であるか、中国と協働研究中である。

 カマグウェイにあるCITA(適正技術総合センター)は、水力エネルギーを産み出すため、新たな適正な技術を促進するため活動している。その目標は、飲料水や潅漑用に豊富な水を作りだし、手に入るようにすることである。

 CITAは、風車、ロープのポンプ、家畜耕起、キューバの斬新な水力耕起を推進している。彼らは、水力タービンを完成させたが、それは水以外にはエネルギーを用いず、かつ、とても効率的に動くのだ。キューバ人たちは、いま、このイノベーションを特許申請中だ。

 CITAは、適正技術を推進しているだけでなく、適正技術の教育も行っている。教育と参加型のプロセス、交流の促進、「農民から農民」への経験の伝達という横の関係を強調しているが、そうしたスタイルは中米ではよく知られたものである。

 これはカマグゥエイにある適正技術センターの特徴のひとつだが、それは大きな価値がある。なぜなら、組織よりもむしろ自己管理に基づく、横の教育はキューバでは希であることから、そこには学ぶべき多くの利益があるわけである。

■トア川、大いなるエコロジカルな決断

 キューバは、適切な河川がなく、大規模な水力エネルギーを得られないという問題がある。水力発電所を建設するうえで、唯一適しているのは、東部のトワ川(Toa-Duaba)であり、350~400MWの発電ができると見込まれ、1994年年頭には、北朝鮮からの専門家と資本により、直ちに巨大な仕事がはじめられるだろうとの発表がなされた。だが、その1月後には、ほとんど宣伝されることもなく、それはキャンセルされた。その決断は先駆的なエコロジカルな選択だった。

 そこは、キューバでも降雨量が最大の場所で、キューバ内に4ケ所あるバイオスフィアー・リザーブのひとつなのだ。水力発電ダムは、アマゾンの熱帯林のミニチュアであるこの脆弱な生態系のバランスに影響を及ぼしてしいまうであろう。国会は戦略的に考えたうえで、その建設を中止した。これは自然への責務という点で、いかに多くキューバの指導者が育っているかを示す重要な指標である。

 これは国会でのそうした種類の唯一の決断ではない。早くは、サンタ・クルーズ・デル・ノルテ(Santa Cruz del Norte)の火力発電所の建設がすでに進行していたが、その熱排水が珊瑚礁に影響することが明らかになったため、移転させるには多額のコストがかかったにもかかわらず、別の場所に移設されている。

 そう、キューバでは多くの物事が変化している。都市は数多くの自転車で満たされ、農地も何千頭もの牛で満たされている。石油は調査がなされ、使われ続けてはいるものの、自然と環境的な羅針盤をもとに、多くの方向がいま探し求められている。

 無限のエネルギーを持ち、誰も私有化できない太陽が、いまキューバの人々のエネルギー産出の仲間となっている。この同盟の結果は、いつの日にか目にされることであろう。

(記事の一部より引用)
  Maria Lopez Vigil,Twenty Issues for a Green Agenda,1998.

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