2006年1月

思想の戦いと社会主義の改善

 キューバは、米国の経済封鎖や旧ソ連時代のやっかいな遺産から生きのびたが、それ以上のこともしてのけている。キューバ革命、人民とそのリーダーシップは、ここ6年ほど「思想の戦い」として知られる戦略に活発に関わり、その社会主義革命を強化しているのだ。

キューバ経済は社会主義の生産規準で拡大し回復しつつある

 社会主義的な経済の回復とあわせ、思想の戦いの努力で、健康、教育、文化発展への大がかりな投資もなされている。腐敗や社会的資産の横流しと戦う努力もなされている。この戦いの前提には、加速化するキューバ経済の成長がある。この成長が、例えば、ソ連崩壊直後に急発展した小規模な企業家に対抗し、労働者のために、社会主義規範の中でこれを分配するという、経済面でのその役割を政府は高めることができている。

社会主義的なやり方の復活

 1991年に破壊する以前には、ソ連はキューバ革命にとって決定的な経済援助を行ってきたため、それ以降、キューバは深刻なモノ不足や経済混乱に直面した。生きのびるための絶望的な努力として、キューバの指導者たちは、資本主義的な経済インセンティブに頼らざるをえなかった。だが、カストロや他の共産党員たちは、こうした改革が経済発展の原動力となることが終わる日を心待ちにしていた。そして、その日がやって来た。2004年にはGNPが5パーセント成長し、観光業は7パーセントも成長したのだ。そして、2006年には、キューバ経済は9パーセントの成長が見込まれている。失業率はたった1.9パーセントまで落ちた。

 この経済益から、いま全機関は、資本主義的手法ではなく、社会主義的な経済政策をどう再び設定するかに関わっている。米ドルを通貨の否定という2005年5月の世界への意外な通告から始まり、一連のボトムアップの政策はキューバ通貨を強化している。キューバの銀行口座は自発的にその保有ドルを57パーセントまで減らし、キューバの兌換ペソの貯蓄高は3倍にもなり、全国でのペソ貯蓄高は35パーセントも高まっている。

 1990年代には、ソ連圏の崩壊で深刻な経済不況に陥る中、キューバ政府は、個人雇用、海外投資、国際観光開発、家族から送金、米ドルの導入、農民市場の認可といった収益を生み出す改革を実施しなければならなかった。だが、キューバ政府や共産党は、この改革が社会主義をそれ自身構築するものではなく、国が社会主義を再構築できる将来まで、社会主義の成果を保全するための経済回復を目指した一時的な譲歩であったことを明確にした。1993年7月26日、こうした経済転換をはじめるにあたり、カストロは、説明演説を行っている。

「われわれは、これまでやってきたのとは異なる手段を通じ、外貨収入の道を模索しなければならない。その目的に向けたひとつの手段は、海外投資への開始だ。外国資本投資と戦ってきたわれわれは、工場、資金、何トンをもたらしてきた社会主義陣営の消失とともに、今、それを緊急的必需品と見なす。今、われわれはもはや存在しない社会主義陣営からもソ連からも何も受け取らない。また、われわれは、それはすべてを米国が絶対的に支配する国際金融機関からも何も受け取らない。今、われわれが定義したように、わが国は一次的なタスクをしている。今、われわれは祖国を守らなければならない。革命と社会主義の成果を。それは、将来的にも構築し続ける権利を守るのと同じことである」 今、経済が回復するように、キューバ共産党とともに、労働者、女性、若者たちの大組織が、社会主義の強化に向け社会を導いている。

腐敗と戦う若者ブリガーダ

 最近カストロは、キューバ人民に対して、特権やブルジョアの影響でキューバ革命が内的に何を破るかの思想問題を提起した。

「われわれは、偉大な国々の英雄的な革命がいかに倒壊し、崩壊するかを正確に眼にしてきた。腐敗、官僚政治、意識の不足、多量で働く方法のまずさとその他の失敗のゆえにだ」

 思想の戦いの立ち上げ6周年記念で12月6日にはカストロはこう述べた。

「キューバの若者たちが、革命の一新で主役を演じている。何万もの新たに卒業した医療従事者、アート・インストラクター、ソーシャル・ワーカーたちが、社会主義意識を強化するため、キューバ社会のすべてに関わっている」

キューバのソーシャル・ワーカーは、腐敗と戦うことを支援している

 例えば、問題解決の際に手助けを必要とする人々を支援するため、専門トレーニングとカレッジ単位を受けたソーシャル・ワーカたちが、青年ブリガーダに組織されている。2000年に初めてスタートして以来、現在、ソーシャル・ワーカー校の卒業生は28,000人おり、さらに別の7,000人がいま学校で学んでいる。こうした若者組織の役割は、人口統計を調査・文書化するため、彼らの地区や家庭で人々と積極的に関わることにある。彼らは、とりわけ、国民のより貧しい階層の中で、各個人や家族が直面する特定課題も学ぶ。その後、彼らは、退職者、失業者、シングルマザーあるいは親から無視された子どもたちにアプローチし、その課題解決を支援する。

 最近のソーシャル・ワーカーたちによる全国での戸別調査により、37,000人の退職者が、一人暮らしで、ケアを必要としていたことがわかった。このことが、高齢者にとって年金額が低すぎると政府に決定させた。高齢者年金は増額され、100もの社会プログラムが実施された。

 今、ソーシャル・ワーカーたちは新たなキャンペーンに携わっている。危機的なエネルギー資源の盗みと戦うことだ。ガソリン・スタンドではガソリンが賄賂で盗まれ、社会的な支出を行うための国庫歳入を損失させていたが、正確にそれがどれだけの量であるかは知られていなかった。10月10日に革新的な運動で、10,444人のソーシャル・ワーカーが、ハバナや州のガソリン・スタンドに急送され、若者たちは、2,000のガソリン・スタンドで何週間もガソリンを入れ、配達用トラックに乗って貴重な燃料を厳重に監視し、精製所をモニターした。若者たちの存在で、従業員はガソリンをテーブルの下で売ることができなかった。2カ月間の警戒で、ガソリン販売の国庫収益は倍増以上した。いま、政府は、ガソリンをより綿密に管理するため、改革を行っている。

 ソーシャル・ワーカーたちはとても良く知られるようになり、主に労働者階級出身であるため、若い労働者たちはニュー・リッチ階層に対し人民の利益を守る防壁と見なされている。カストロは11月17日にハバナ大学で学生たちに尋ねた。

「わが国にはどれほど多く盗みのやり方があるだろうか。子どもがドル・ショップやドラッグストア、あるいはその他のすべての場所にやって来るとき、それは、日々、人民に尋ねている世論調査を読むことになる。誰もがこうした子どもたちを賞賛する。ソーシャル・ワーカーたちは経済的に打撃を受けた環境から立ち現れ、高度に準備・訓練されていることを意味する」

革命は解体させない

 カストロは、ソ連崩壊から学ばなければならないひとつの教訓を、内的不注意が、革命解体に結びつくと説明する。

「私は、その初めての社会主義国、破壊されなければならなかった国家の経験が苦しい経験だったと思っている。ファシズムに対する戦いで2000万人以上の生命を奪った力があったが、この力に匹敵し、全世界で最も強力なパワーのひとつが、それをしてのけたやり方を、その法外な現象を何度も考えたと確信している。革命が解体するのか、人間が革命を解体するのか。人間性か社会のいずれかは、革命が崩壊することを防げるだろうか。私は、直ちにこれにさらに別の問いかけを加えられる。人民諸君は、この革命的社会主義者プロセスが解体すると信じるか。それとも信じないか(信じないとの絶叫)。それならば、諸君らは、ある思想を持てるだろうか。深くそれを反芻できるだろうか。私がいま口にしている格差がわかるだろうか。ある一般化された習慣に気づいているだろうか。グアテマラ山中にいるキューバの医師よりも、たった一月で40あるいは50倍も稼ぐ人々がいることを知っているだろうか。アフリカのその他の遠隔地、あるいは何千メーターのヒマラヤ山脈で、命を救っているものが稼ぐのは、ニューリッチ階層にガソリンを売ったり、トラックポートから資源を調達したり、汚く屈折した稼ぎの5パーセントか10パーセントにすぎないのだ。

 ガソリンの節約に加え、冷蔵庫や電球といったエネルギーを浪費する器具を交換する広範なプログラムも、全住民で進行中だ。小規模個人企業家は、12席のパラダレス、自営レストラン他は、労働者よりも高い電気料金を支払わなければならないだろう。その駆動原理は、いま、労働者や定年退職者が社会主義革命の壁として最優先されなければならないということだ」

 11月17日のハバナ大学でのスピーチでは、カストロは彼の革命人生60周年の記念とキューバ革命の概観をこうコメントした。

「働き、生産する人民はさらに受け取るだろう。そして、彼らはもっと買うことができるだろう。数十年間も働いてきた人民はさらに受け取り、さらに得るだろう。国はさらに多くを持つだろう。だが、それはけっして消費社会にはなりはしない。それは最も傑出した人間的発達、芸術と文化、科学の進展の知識社会になるであろう。もちろん、それは、化学兵器のためではない。誰も解体できない自由とともにある」

 10月28日の別のスピーチでは、カストロはこう語った。

「彼ら何千人ものソーシャル・ワーカーたちは、われわれが手にしているソーシャル・ワーカーのごく小さな活動部分だけだが、キューバ経済を難攻不落にすべく戦っている。そして、彼らが現実を作ろうと努力している原理は、工場の労働者、専門家、教師、医者のように給料や年金を受け取る人民のために働くほとんどの人民に与えられる原理だ。そう、彼らは大半が役立つ人間であるべきなのだ」

社会主義の意識

 社会主義と資本主義との抜本的な違いは、帝国主義者に支配されたこの世界において人民の意識と団結を通じて、社会主義が発展しなければならないことにある。資本主義イデオロギーは、社会主義国内の労働者階級やそれほど階級意識が強くない階級を支配し、影響を及ぼしている。一見すれば米国のような社会は、富と無制限の広告のディスプレイで優れているように見えるかもしれない。だが、教育、健康、住宅、雇用といったベーシックなニーズが何千万もの人々にとってますます満たされなくなってきている。

 旧ソ連や東欧圏諸国のほとんども1980年代に資本主義の誘惑の声に影響を受けていた。キューバも社会主義陣営と同じ道を行くと予想されていた。それが、コストを問わず革命的な意識、共産主義イデオロギー、そして社会主義を防御するキューバ人民やそのリーダーの確信だった。キューバはそれにより反共産主義の嵐を切り抜けることができた。キューバは経済封鎖やモノ不足、米国の攻撃にもかかわらず、社会主義の力の源として出現した。キューバ革命が、社会で最も脆弱な人々の課題を検討し解決できる能力は、その欠点への批判に関わらず、その存続を保証する証なのである。

(米国のSocialism and Liberation Magazineからの記事)
  Gloria La Riva, Cuba, Winning the Battle of Ideas, Socialism and Liberation Magazine, January2006.

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