2005年12月23日 |
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■世界人類を奇跡のマメが救う
■中米で生まれた画期的なトウモロコシ増収技術 バンチ博士はビロード豆や有機農業の凄みを発見した20年前の時をこう想起する。
とはいえ、有機堆肥には問題がある。コンラドのやり方は経済的ではなく、堆肥利用のコストは、栽培収益をを上回ってしまうのだ。だが、ビロード豆を使えばこの問題がクリアーできる。間作や被覆作物として緑肥(green manure/cover crops)を使うことで、わずかの手間でヘクタールあたり50〜140トンの有機物が産み出せるから、堆肥用の原材料を切り刻んで運んだり、山に積んだり切り返さなくてもすむ。雑草も管理できるし、労働コストも減り、地力は毎年、確実に向上していく(3)。 例えば、ホンジュラスの首都テグシガルパ(Tegucigalpa)から、車で二時間走ったところに、ギノペ(Guinope)という小さな町がある。20年前、ギノペはコミュニティとして崩壊しかけていた。小規模な農民たちの多くが家族を養えず、都市へと流出していたからである。だが、今では、何人かが再び町に戻って農地改善に汗を流している。エリアス・ゼラヤ(Elias Zelaya)氏も、ロランド・ブンチ博士の指導を受けて、ビロード豆を用いて持続可能な農業に取り組む先進農家の一人である(1)。
「驚くべきことですが、こうしたやり方で、不毛な熱帯のほぼどこであれ、農民たちは何十年も毎年トウモロコシを栽培できましたし、生産性もヘクタール4トンまで高まったところもあるのです。言い換えれば、農民たちは焼畑農業への回答を見出したわけです」(3)。 いま、グアテマラやホンジュラス全域で、農民たちはビロード豆を緑肥として使うことで土壌を改善している。この持続可能な農法に取り組む農民の数は約4万7000人にも及ぶという(2)。
ビロード豆はアフリカでも奇跡を引き起こし、感謝されている。例えば、ベナンでは、1987年にたった15人の農民に紹介されたのだが、2000年では全域に普及し1万人以上の農民が使っている。土壌を改良するだけでなく、制御するのが難しい雑草を防ぐ方法としても活用されている。豆が使われているところでは、トウモロコシの収量は倍以上となっている。だが、アフリカの農業改良普及員たちは、あるひとつの欠点がなければ、ビロード豆のインパクトはもっと印象的だと考えている。残念なことに、豆は人が食べられないのだ。だが、豆の消化性を高める品種改良の努力がいま進められている(2)。 ■ブラジルの不耕起栽培と無農薬宣言 持続可能な農業の最先端はブラジルにもある。いま、ブラジルでは1400万ヘクタールもの農地が不耕起栽培となっている。リオ・グランデ・デ・スル(Rio Grande du Sul)州では、過去10年で95パーセントの農地が不耕起栽培となり、持続可能な農業が情熱的に推進されている(1)。サンタ・カタリーナ(Santa Catarina)州でも州の農業改良普及センター(EPAGRI)が、流域レベル(microbacias)で土壌や水保全に取り組み(2)、州政府の農業政策はますすラジカルなものとなってきている。 「政府はサンタ・カタリーナ州を農薬を使用しない最初の州にするとの挑戦宣言を発しています」。地元政府のアドバイザー、ホセ・チェーザレ・ペレイラ(Jose Cesare Pereira)は言う(1)。 そして、ここでも鍵を握っているのがビロード豆の緑肥利用なのだ。 「農民たちは、化学肥料と除草剤をいくらか使ってはいますが、緑肥と被覆作物ではとりわけ成功が見られています。ビロード豆、ナタ豆(jackbean=Canavalia ensiformis)、大角豆(cowpeas=Vigna spp.)などの豆科植物、そして燕麦やかぶ等の非マメ科植物を含め、約60種が農民たちと一緒に試験されています。農民たちにとって、これらは種子の購買代金以外、まったく現金を伴わないのです」。プレティ教授は言う(2)。しかも、中には病害虫被害を防ぐ効果もあるという(3)。 1993年にサンタ・カタリーナ州の農業改良普及センターの取り組みを目にしたバンチ博士もこう語る。「それは、当時はまだ広く報じられてはいませんでしたが、私は、160以上の農業開発プログラムを訪ねたことがあるので、ラテンアメリカで最大規模の取り組みであることがわかりました。文字通り、何万人もの農民たちが、間作や緑肥被覆作物と不耕起栽培で、米国でのそれに匹敵する収量を産み出していたのです」(3)。
■熱帯雨林に学ぶラテンの不耕起農法 バンチ博士はこの例をケースに次のように語る。「私は、福岡正信氏の『わら一本革命』を読みましたが、彼の不耕起栽培農法はとうてい納得がいくものではありませんでした。ラテンアメリカでは、ほとんどの伝統的農業は不耕起栽培なのですが、生産的ではないのです。ですが、ブラジル人たちの発見は、なぜ、ホンジュラスや福岡正信氏の不耕起栽培がうまく機能し、多くの伝統的な不耕起栽培が機能しないかを説明します」。 マメ栽培による有機物生産とそのマルチが機能するわけは、コスタリカで働くコーネル大学の博士候補、マルタ・ロゼメィヤー(Martha Rosemeyer)の研究がそのヒントとなる。マルタや農民たちは、何年も伝統的な豆(Phaseolus vulgaris)をマルチに使ってリン酸欠乏の問題を解決しようと試みてきた。強酸性(pH = 4.0〜4.5)土壌では施肥されたリンのほとんどは土壌に吸着されてしまい平均収量はヘクタール500キロにすぎない。だが、マルチの上層にリンを撒いてみると、何度も追試で確認されたのだが、その結果は驚くほどでマメの収量がヘクタール1.5〜2.5トンに向上したのである。まだ、この現象はマメ以外の作物では有効ではないものの、トウモロコシ、タピオカ、そして熱帯樹木が、厚いマルチの下で大量の細根を発達させる事実と一致する(3)。バンチ博士はこう語る。 「私はマルチの養分やマルチを通じて作物に施肥する情報について米国の農業データをコンピューターで捜してみましたが、何も見つけられませんでした。私たちは温帯の全く異なる農法を何年も熱帯に移転しようとしてきたわけです。ですが、熱帯での農業が生産的で、かつ持続可能であるように、数百万年も生産的であった熱帯林を模倣しなければなりません。マルチを通じて養分を作物に与えることは型破りに思えますが、熱帯の酸性土壌でも土が植物を育てられるとすれば、有望なオルターナティブな手段に見えます。そして、それには相乗効果もあるのです。例えば、マルチで作物に施肥しようとすれば、農地は耕作できず、不耕起栽培になるのです。ですが、こうした原則の重要関係を見出すには時間がかかったのです。ホンジュラスの研究は、間作や被覆作物としての緑肥を使うことが、高入力型の農業よりも30パーセントも有益であることを示しています。私たちは熱帯での低投入型農業の最大限のポテンシャルを探り始めているわけなのです」(3)。 |
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参考文献 |
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