徒然絵巻

2004年05月29日

古川 紀州テンカラ竹株流トバシ 見学
竹株先生から電話があり、古川に行った。

ビデオ等では、見たことがあるが、はじめて紀州テンカラ竹株流トバシをみた。

紀州テンカラ竹株流トバシとは・・・

終戦後の紀州山間部の筏師の間では、山仕事の合間をみつけて、テグス糸に毛ばりを結んだ粗末な道具で、ひとよりも遠くへ飛ばすことを競いあう筏師の男意気を賭けた素朴な遊びがあった。
 「俺はあいつより、遠くへとばせる。」というのが筏師の自慢話であったらしい。
アマゴを捕まえるというより、テグス糸で飛距離を競い合うことがトバシといわれる紀州テンカラのルーツである。特に、筏師山岡氏はテグスロングラインを自由に操り、飛距離だけでなく神業ともいえる華麗な技によりアマゴをかけ、紀州山間部の筏師の間で トバシの達人として有名であった。

当時中学1年生の少年であった竹株希朗氏は、山岡氏のトバシを見て目からうろこが落ちる思いをしたという。そして、修練の末 山岡氏のトバシの技術を体得し、当時のトバシに独自の理論を加えた、紀州テンカラ竹株流トバシというロングラインレベルラインテンカラに進化させた。
レベルラインテンカラの元祖として広く知られる竹株渓遊という名前は、竹株希朗氏の雅号である。

竹株流テンカラは、一般の人には、仕掛けをふることすらできない。

なぜならば竹株流トバシは、ナイロンという軽いラインを8メートル以上つかい、さらに大型毛ばりの空気抵抗が加わるからである。

≪紀州テンカラ竹株流トバシ基本仕掛け≫

 道糸 : ハイループ4号 6.8メートル
 ハリス: ハイループ2号 1.2メトール
        ライン全長 8 メートル
 毛ばり: 管付き山女9号に黄色の毛糸で胴をつくり、スズメ・白チャボの蓑毛を巻いた大型毛ばり 



(注釈-テグス)

テグス(天蚕糸)とはテグスサンの幼虫の体内から絹糸腺(けんしせん)を取り出し、酸で処理して得た白色透明の釣り糸のこと。戦前戦後はもっとも一般的な釣り糸として用いられていたが、ナイロン糸の出現によりつかわれなくなった。

イメージとしては、廉価品の白濁したごわごわしたナイロン糸のようなもので、強度はよわい。


ビデオの解説とは全くことなり、非常にソフトな振込みだった。



紀州テンカラ竹株流トバシは、軽いナイロン糸ゆえに、力を入れて、振り込んでいるものと想像していたが、竹株流を実際に拝見したところ、8メートルの軽いナイロン糸が飛ぶカラクリは、ラインが後方にのびきるわずかな感触をとらえ、力ではなく タイミングの妙技で、仕掛けをとばす振込みにあるように感じた。

弧を描いたナイロン糸が音も立てずに するするとほどけるように伸びていき、8メートル先に結んだ毛ばりが、ふわっと非常にソフトに着水する。軽いナイロン糸ゆえに、毛ばりから着水し、ラインが水面をたたくことはない。

着水後、ルアーのミノーのように、独特の小刻みなリズムで、移動・静止のアクションを加えた誘いをかける。したがって、ノンドラグナチュラルドリフト釣法とことなり、アマゴの出方は極端に早い。

ロングラインナイロンを打ち込む技術もさることながら、私には、竹株流の独特の誘いの方が難しそうに感じた。


投入一発目で、アマゴが空中を舞う。竹株流ではアマゴの取り込みは 基本的に“抜き”というテクニックを使う。アマゴを瞬間に抜きあげることにより、アマゴの群れに異変を感じ取らせないためである。

事実、この後 連続してアマゴが空中を舞った。
私も数釣りには自信があるが、次々に空中を舞うアマゴを目撃し、竹株先生にはかなわないと思った。

軽い身のこなし  初老の御仁とは信じがたい。 竿を握ると、獲物を追う厳しい目つきにかわる。


 「ふってみなさい」

竹株先生の竿を渡されたが、おもうように振り込むことはできなかった。


≪あとがき≫

テンカラは、十人十色の流派があるといわれるほど、仕掛け・技法がこと
なります。このことが、テンカラは入り口が難しいといわれる由縁です。20
年近く前、私も入り口で迷いました。おかげで名人といわれる方達のテン
カラをいろいろ試した時期があります。今は、捨て針釣法・ノンドラグ釣法
の利点をとりいれた独特なテンカラをしています。
20年近く前、試してみたものの飛ばすことすらできず3日で諦めた釣法
が、竹株渓遊氏のハイループによるロングラインテンカラでした。


紀州テンカラ竹株流トバシ

    「後世に伝えたい 匠の技」 と感じました。
お世話になった竹株希朗氏


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