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*オリキャラがでてきます。

その人は名を月村沙耶といった。『Carol』という名の小さな喫茶店をやっている人だ。
その店は仙台に近い小さな町にあった。
その町は一言で言うなら、何もない町だ。
仙台ともう一つ近くの大きな町との間の通過点のような場所にその町はあった。
本当に何もない町だった。
ちいさな住宅街と、スーパーが2,3軒。老婦人のやっている美容室と音楽教室。
後は町の図書館があるだけ。
車やバイクがなければやっていられないような町だった。
ただ、近くにその町には不釣合いなぐらいの大きな公園があった。
私はその公園が好きだった。
私がその町ついたのは,ちょうど二月で、まだまだ冬まっさ盛り、よく雪が降ったいた。
私は雪が降った日は、よほど雪がひどくないかぎりは、朝その公園へといった。
公園にはまだ誰も歩いていない白い、白い道が続いていて、
私はその穢れのない道をゆっくり、ゆっくりと一歩づつ、確実に足跡をつけて歩く、
そんなたわいのない行為がどうしようもなく好きだった。

私は結局その町で出会った月村沙耶のもとで二ヶ月も過ごすことになった。
本当に初めはただ、なんとなく入っただけの店だった。




私は雪の降る中をバイクで走っていた。
私は今、北へ、北へと走っている。
すこしでも祐巳ちゃんのいるあの町から離れるために。
まるで祐巳ちゃんのいない寂しさから逃げるように私は北へと走る。
まだ祐巳ちゃんのもとをはなれてから二ヶ月しかたってないのに
もう私の心は張り裂けそうでしかたがない。
改めて思い知る。
祐巳ちゃんという存在が私の中でこれほどに大きな存在だったのか、と。
そう思うと同時にひどく安心している私がいる。
これでよかったのだと、あの時祐巳ちゃんのもとを離れる決心をしてよかったのだと、
そう思う私がいる。
あの時出て行かなければ、祐巳ちゃんの存在が私の心の中で大きくなりすぎて
私は祐巳ちゃんに依存してしまって、
私はそこから抜け出せずに駄目になってしまっていただろう。
そして・・・・・・
祐巳ちゃんもを駄目にしてしまっていただろう。
そんなことに比べたら、今の私の心の痛みなんかたいしたことじゃない。
そう、たいしたことじゃない。

それにあの子はまっていてくれている。
私との約束を信じて待っていてくれている。
自分でも本当に勝手だと思う。
一方的にお別れをいって、帰ってくるからと約束をして、そして今私はここにいる。
本当に勝手だ。
けれど、帰る場所がある。そう思えるだけで私の心は励まされる。
まだまだ旅を続けることができる。

雪が吹雪いてきた。
そろそろ何処かで休まなければいけない。
もう、かれこれ5時間ほどバイクで走っている。
さすがに体力的にもそろそろ限界だ。

何処か休める場所がないかと辺りに目をこらしながら走っていると
一軒の家が目に入った。
そこには小さく『Carol』と書かれた看板が立てかけられていた。
よく目をこらして見ていなければ民家と思ってそのまま通り過ぎてしいまっていただろう。
その店のちいさな窓から暖かい光が漏れていて、
それに良く見るとなかなか年代のたっている洒落た洋風の家をそのまま店として使っているのだと
わかった。
わたしはバイクを止めてその店に入ることにした。
その店の持つ感じが気に入ったのと、
それにこのまま走っても適当な店はなかなか見つからないだろう、そう思って店に入った。
ドアを開けると、そこからは木の持つ暖かな空気と香りのいいコーヒーの匂いが私を迎えた。
その店はカウンターがあるだけの小さな店だった。
古風なアンティークがほどよい感じに配置されていて店のマスターのセンスの良さがうかがえる。
それにカウンターには埃ひとつなくて清潔感で溢れていた。
けれど肝心のマスターはそこにはいなくて、私はもしかしたらもう終わりなのかな、とおもった。
腕時計を見ると針は7時を指していて、
確かにこのての店なら閉まっていていい時間だ。
けれど店の外にはCLOSEの看板はかかっていなっかたし、まあ、そもそもOPENの看板もかかってはいなかったのだけれど・・・・・・。
しかし、ドアが開いているからにはやっているのだろうと思い、
「すみませ〜ん、だれかいらっしゃりませんか?」
と店の奥に声をかけると、
しばらくして上のほうから、
「ごめんなさ〜い、少し待っていてくださ〜い。」
と返事が返ってきた。
私はその声を聴いてすこし以外に思った。
てっきり年齢のいった人がマスターなのだろうと思っていたのだけれど、
聴こえてきた声はとても若い女性の声で、私の思っていたのとはだいぶちがっていた。
いったいどんな人がマスターなのだろうと思いながらイスに腰掛てまっていると、
上からおりてくる足音がして、
「ごめんなさいね。またせて。」
そう言って現れたマスターは私とそう変わらない年齢の人に見えて、
けれど、年齢には不釣合いなほどの穏やかな微笑を浮かべていて、
私はなぜだかわからないけれどその微笑に見入ってしまっていた。



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〜一息〜
ついにオリキャラ登場!名前を考えてくださった隠上荒人さまあらためてありがとうございます。
え〜話自体はあんまりすすんでませんね。短いんでそんなにすすめようもないんですが。
しばらくは聖様と月村沙耶さんとの話で進みます。
まあ、続きを書く以前に修行の必要があるなと切に思うわけで、こんな駄文続きばかりでは・・・まあ、がんばります。