みえるひとびと 03




「おい和…あ」
「和さん、大丈夫ですかい和さんッ」
「御陵さん」
「引きこもりのおっちゃん出てきたー」
「え、ええと。一柳さんはどうかなさったの…?」
「誰が引きこもりだ、誰がっ」



突如部屋へ入ってきた二人を見て心持ち緊張してみせるが、日織だけは相変わらず和を抱き締めたまま、覚醒を促そうと必死に呼び掛けている。

「着流し、ちょっとでいいから坊主からどけ」
「どけって…なんでアンタにそんなこと命令されなきゃならねぇんですっ!?」
「いいからどけっつってんだろうが!」
「…ッ」

暗石はそんな日織を一瞥すると、埒が明かないと言わんばかりに一喝し、珍しく取り乱していた気持を落ち着けさせた。

「…すみません」
「フン。別に気にしちゃいねぇよ」

日織が和の体を抱いたままでも一応冷静さを取り戻すと、暗石は何事もなかったように二人の傍らにしゃがみこみ。

「持ってろ」
「あ、あぁ」
「坊主、起きろ」

そして気を失ったままの和の眼鏡を外し椿に手渡し、閉じたままのまぶたを隠すように片方の掌を被せてから、血の気の失せた頬を少しだけ強めに叩いて覚醒を促した。

「…ん、ん…」
「目ぇ覚めたか」
「え…と…暗石、さん?」
「おぅ」
「一体何…?」

幾度か繰り返したところでぼんやりと意識を取り戻した和は、思いもよらぬ人物に声をかけられたため慌てて日織の腕から起き上がろうとしたが、暗石が自分の瞼を押さえているためにそれが叶わない。

「何って…見えねぇようにしてやってんだろうが」
「え…?」
「見えちゃいけねぇモンが見えてんだろ、お前」
「!?」

和を含めその場にいる全員が驚愕に息を飲むが、当の暗石は全く動じることなく、呆然としている日織の腕の中から和を自分の方へ引き寄せた。

「く、暗石さんも見えるんですか?」
「まぁな。と言うか…俺からすれば、お前等よくもまぁこんな化け物屋敷で平然としてられるモンだと思うが」
「………」

和だけでなく、よりによって一番この手の話を否定しそうな暗石にしみじみと呟かれ、全員今更ながらに言葉を失った。

「み、見えるんですね?僕だけおかしいんじゃないですよね?暗石さんも見えるんですね?!」

だが暗石の手によって視界を遮られている和だけは、ようやく自分を分かってくれる人物を得て喜びを隠せない。

「よ、よかったぁぁ…」
「泣くこたぁねぇだろう」
「だって…誰も信じてくれないし……ひ、日織まで僕のこと痛い目で見るし…なのに斑井さんは帰ってくるし…ひっく、僕、もうおかしくなる…」
「……着流し」
「なんです?」
「夕べの話、俺に判るように説明しろ」

押さえ付けた瞼から涙が溢れてくる感触に流石に戸惑いを隠せないのか、暗石は安堵から支離滅裂なことを話出した和にではなく、状況が飲み込めず呆然としたままの日織に説明を求める。




「あ、それうちらも聞きたい。どないなってんの?」
「和たんしっくすせんすで解決したとか」
「あながち外れちゃいねぇです、それ」
「まぁな」




すると双子がそれに便乗して、自分達にも判るようにと改めて身を乗り出せば、日織も椿も歯切れ悪く御陵を見つめるしかなくて。









「そうなのか?」
「ええと…そう、なりますのかしら…?」









自分が犯人だ、と名乗ったのは聞き間違いではなかったのかと暗石にまで視線を注がれ、御陵本人も何やら自信なさげに、暗石の腕の中にいる和に問掛ける始末だった。




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