ハロウィン期間限定で拍手にて公開SS。全5話。
和先生、悪戯される?
峰塚さんちの双子の黒猫さんたちから捕獲され、日織さんの所へ連行されていた和先生は。
「似合わないって言ってるのに…」
「そんなこたねえですよ。十分似合ってます」
「なごせんせーばっちり」
「うんうん、ばっちり」
「………」
双子が黒の子猫なら、こちらは成猫といった具合でお揃いの恰好をさせられていました。
「なんで僕までエプロンドレスなのさあ…」
「……おや、なんならミニもありますぜ?ついでにミニには欠かせないニーソも。
和先生は綺麗な脚してますからねえ、やっぱりこっちの方が…」
「このままでいい!」
仮装はともかくなんで女装!?と抗議すれば、日織さんはにこにこと微笑みながらミニスカートを差し出してきたため、和先生はがっくりと肩を落とすしかありません。
「ふふ、双子の黒猫さんたち、如何です?」
「ばっちりー」
「ばっちりー」
「あら本当にばっちりね!」
「へ?!」
半べそをかいている和先生を他所に、日織さんが黒猫さんたちに確認をとっていると、背後から物凄く大きな感嘆の声が上がります。
「みき先生…ッ!」
そこに居たのは、ちょっとだけ胸元がセクシー仕様になっているとんがり帽子の魔女…の恰好をしたみき先生で。
「話を聞かされた時は、なんとなく似合うかな程度にしか思ってなかったけど…ここまで似合うと見事ね。日織さんもいい仕事してくれるわあ」
「いやあ、和先生が元々いい素材なんです。俺はちょいと手を加えただけでさあ」
和先生が逃げ出そうとするよりも先に顔を両手で挟み、日織さんが施したであろうメイクと、彼仕様に誂えられた衣装を吟味してしきりに感心しています。
「ね、和先生っては凄く似合ってるわよ!」
「え?」
そして一頻り吟味をし終えると、背後を振り返って大声を上げるその先には。
「…………」
「そーせんせーだ」
「そーせんせーだ」
「壮先生ッ」
「おやおや」
かぼちゃランプを片手に硬直している、吸血鬼…の恰好をした壮一郎先生でした。
「みきせんせー、とりっく、おあ、とりーと」
「あら、忘れるところだったわ。はいどうぞ」
「そーせんせー、とりっく、おあ、とりーと」
「……」
そこでちいさな黒猫さんたちは、当初の目的を思い出したと言わんばかりに、それぞれみき先生と壮一郎先生にお菓子をねだりますが、すぐに反応を示したのはみき先生だけで。
「そーせんせー?」
壮一郎先生は、和先生を見つめて硬直したまま動きません。
「そ、壮先生硬直してる」
「してますねえ」
「あんなに固まっちゃって、僕やっぱり似合わないんだよ、着替えるっ」
「…………なんでそういう発想になるんでしょうねえ、このお人は」
壮一郎先生は和先生を凝視したまま見事に硬直していますが、その表情は【真っ赤】である時点で、何が原因なのか判りそうなものなのですが。
それはまあ、幼い頃からたった一人を見続けている和先生にとっては全く思いもつかないことなので、壮一郎先生は可哀想というか哀れなのですけどね。
「おかしくれないから、いたずらけっていー」
「うふ、なにしよ」
壮一郎先生は、双子の黒猫さんたちからいたずら宣告されてもまだ固まったままでした。
……そんな壮一郎先生に、合掌。