三笠編(奈落の城事件中) 03
招待客全員と、メイド、それから主従コンビ。全員に今晩からお前の部屋に一緒に泊まると言っておいた。
…何を赤くなっているんだ?
ああ?千絵子さんに変なことを言われたのは三笠さんのせいだ?
よく判らんが、俺のせいでからかわれたということか?何かに付け弄られるのはお前の天性だろう、気にするな。
何を凹んでいるんだ…まさかお前日織とそういう仲だったのか?それでヤツに操立てしてるというのなら方法を変える必要があるんだが…。
なんだ喚くな馬鹿者、違うなら違うと言えば良いだけだ落ち着け、そう必死に否定すると余計怪しく見えるという約束事を知らんのか!
全く……本当にお前は弄り甲斐があるな。
そのくせ卑屈になったりしないで、それが自分だと受け入れてしまっているところは大物なのか救い様のない馬鹿なのか…まあ俺はどちらでも構わんが。
それよりも、だ。
お前は本当に、日織が自分から消えて、そして無事だと信じているんだな?
多分は却下だ、是か非かどちらかで答えろ。そしてお前は俺を全面的に信じられるか?
…よし。
ここで躊躇いもせず言い切る辺り、お前は大したやつだな。
正直なところ俺が今から確かめようとしていることは、お前の協力なしでは出来ないんでな。躊躇われたり否定されたら諦めざるを得なかったんだ。
協力という言い方も本来はおかしいのかも知れん。
だが、どいつもこいつもすっとぼけるか口を噤むかでしらばっくれているから、俺としても一泡吹かせるどころかぎゃふんと言わせたい。
今時ぎゃふんはないが、日織は言いそうだ?……自分で言っておいてなんだが、本当にあいつなら言いそうだな。
……って、だからどうしてこうも話が逸れるんだ。
それから。お前の言う、この部屋で感じる視線の事なんだが。
お前が持ってる俺の調べた、そしてお前が見つけて書き足した地図でわかるように、この城には隠し扉に隠し通路、隠し部屋がある。
そんな通路が、この部屋の壁の向こうだ。
ということは。部屋によっては、通路からの覗き穴があってもおかしくはない。俺の言っている意味が判るか?
…そうだ。
やっと気付いたか。
お前が感じていた不気味な視線、それは恐らく、いや十中八九日織だ。ヤツに決まっている。
信じられんのか?しかしよく考えてみろ、推定とはいえあいつは自分の意思で消えた。
だが、話を聞く限りでお前には相当入れ込んでいるのが(鬱陶しいくらい)判るし、そんなあいつがお前を危険な場所に一人放り出すとは考えにくい。
となると、だ。
日織はお前の無事が確かめられるからこそ、何らかの理由で姿をくらます役を買って出たんじゃないかと、俺はそう考えた。
しかしその理由が判らん。
全く判らんし、それにあの馬鹿ははぐらかす一方で全く口を割ろうとしない。招いておきながら、俺たちを全く信用していないというのと同じだろう?
ならばこちらにも考えがある。
自分から姿をくらましたのが日織の意思なら、逆に出て来させるのもありだろうと。
あいつが自分から出てくるか、アルノルト達の口を割らせるかのどちらかで考えれば、圧倒的に日織を誘き出す方が手っ取り早い。
勝手に隠れて勝手に見られているのなら。
あいつが飛び出すような状況を、こっちが見せてやればいいと思わんか?