◆野村署長とヘッドくん編





---なんかうるさい。
---なんかきたみたい。
---なにがきたの?
---まだわかんない。



安積係長とハンチョウくんの寝姿が、臨海署内(二階)に居る全員に癒しと安らぎと萌えを提供して暫くして。
係長たちから遠く離れた見物人の方…つまりは二階入り口付近からざわざわと何やら騒々しい驚愕の声が聞こえてきました。

「一体なんだ…?」
「なんだろ」

ちょっと折角寝てるうちの大事な係長が起きたらどうすんだ静かにしろよ!という迷惑そうな表情を隠さず背後を振り返った村チョウと須田チョウは、そのまま驚愕に目を見開くこととなりました。

「やあ。安積君が寝てるんだって?」
「し、署長ッ!?」

犇きあっていた人込みの中を掻き分ける…というよりも、まさかの臨海署署長の登場に度肝を抜かれた面々がさっと左右にどいて道を開け、そのまま刑事課の方へとやって来られたようです。

「あ、あの、ええと…」

一体何しに来たのこの人。
危うく喉から出掛かった言葉をなんとか飲み込む須田チョウでしたが、まさかの野村署長の登場に慌てずにはいられません。
警察内のしきたりやお役所仕事に関しては密かに係長からお墨付きを貰っている村チョウでさえ、流石に課長次長をすっ飛ばしていきなり署長に登場されては驚くしかないようです。
二人の部長刑事が言葉に窮して固まっているのを他所に、野村署長は後ろで手を組んだままの姿勢でなんとも優雅に(でも何処となく黒く)にっこりと微笑みました。

「うんうん、中には入らないから安心したまえ」

そのままコツコツと小さく靴を鳴らして係長が寝ているソファへ足を向けると、どうしたらいいのかと困惑気に顔を見合わせている神南くんたちにも微笑みます。
…ところが。

「おや」

え、何処から取り出したのソレ!?と背後で目を見張る署員たちを他所に、野村署長が意気揚々と寝入る係長とハンチョウくんへカメラを構えたその瞬間。
今まで姿が見えなかったヘッドくん(正式名称ハヤミ・ヘッド・神南くん)が颯爽と現れソファに飛び乗ると、カメラから二人の顔を隠すようにその前へと立ちはだかりました。

---みるだけ。
「うん?」
---みるだけ。しゃしんはきょかしない。

なんと言うか、流石ヘッドくんです。伊達に速水小隊長に似ていません。相手が誰だろうと竦むことなく毅然としています。
毅然と言うよりは尊だ…(ごにょごにょ)ですが、元々オリジナル自体が「階級なんぞくそくらえ」の人なのでこれが普通なのでしょう。むしろこれくらいなら可愛い方です。

「ふむ…それは残念だ」

ところが野村署長の方も簡単には引き下がりません。こちらも伊達に公衆の面前で「君が欲しい(語弊あり)」の名台詞を係長相手にぶちかましていません。
残念だといいつつも、手にしたカメラを下げる気はないようです。むしろ構えっぱなしです。隙あらば撮る気満々なのが伺えます。
えええちょっとあんたら係長の前で一体何してんのー!?と冷や汗を流す外野を尻目に、ヘッドくんと野村署長は互いを牽制しあって退く気はまるでないようです。
至福眼福の一時のはずが一転、ヘッドくんVS野村署長という構図に手に汗握る緊張を強いられることとなった外野の皆さんが切に願うのは、この状態を打破できるたった一人の男の登場です。




…早く来て、速水さん!!




かつてないシンクロ率で皆が登場を願った、その瞬間。




「俺のハンチョウやこいつのハンチョウくんは、写真を撮られることが酷く苦手なんでね、遠慮してもらえませんか」




これほど交機隊の制服が似合うやつもいないと常に安積係長から(心の中で)思われている、署長以外の全員が登場を待ちわびた速水小隊長本人が颯爽と登場するのでした。
え、今窓から入ってこなかった此処二階だよね!?とか、タイミング良すぎだろうこれこそご都合主義だ!とか、もう色々とおかしいだろソレ!!、という突っ込みが出るわけもなく。







…だって、お姫様の危機に騎士が現れて助けるのは定番中の定番、世の中のお約束なんですからね。


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