大変身・続 04
「もしかしなくとも…光太郎さん、金さんをからかっているのですかッ?」
金のその様子に、ようやく光太郎の悪ノリに気付いた小夜が二人をにらみつけた。
「わりィわりィ、謝るって!…しかし金さん相変わらずだなー」
すると光太郎は、悪びれもなく俯く金の背中をばんばんと叩きながら謝る。
「そこが大正殿の良い所…なんだろう?魔女殿が話してたヨ」
「ですが、からかって良い訳ではありません」
ヨシヨシと宥めるように頭を撫でるロジャーにも、小夜はきっちりにらみつけた。
「……」
しかしここに一人、居合わせたのに名前が出なかっただけでなく、今の会話にすら全く加われなかった人物が。
「……」
表面上はあくまで冷静に、かつ目の前で繰り広げられる騒ぎに関しても、冷静に眺めている日向だったが。
「……」
室内なのに着用しているサングラスのせいで伺う事はできないが、今日向はこれ以上ない位に憤怒の表情を作っていた。
しかもなお悪い事に、そんな日向に気付いたのが、周りの空気を読めない光太郎だったからさぁ大変。
「金さん、所長忘れてる」
「……あー…と…」
「忘れててかまわないでゴザル」
さらに悪いことに、そんな日向をロジャーがせせら笑う。
「……アノ」
「またあなた方は!金さんを困らせないで下さい!」
なおも悪いことに、小夜が意図せず金《だけ》のフォローに入る。
「別に困らせてないだろ。ふみこたんと違って所長は男だし、照れるコトないじゃんか」
「そうそう、俺たちと同等でゴザルよ?」
「…そ…そうなのですか?」
根本的に「おっさん同士頗仲が良い」程度にしか思っていない光太郎と、それだけではないことを重々知りつつ合槌をうつロジャーに諭され、判断のつきかねた小夜は真意を確かめるべく金に矛先を向けた。
「金さん?」
「……」
ところが金は、ふみこの時以上に茹上がる程に赤面し、しかも端から見ても物凄い量の冷や汗をかいている。
「だ、大丈夫ですかっ?」
「…俺はあの魔女以下か…?」
「イ、イエッ!そそそそんなコトアリマセンからっ!!」
日向の呪い殺されそうな程の怒りを感じた金は、蛇ににらまれた蛙の如く硬直していた。
ここでさらりと「もちろん日向も好き」だと一言発すれば問題はないのだろうが、金にとっての日向はその「好き」ではないのだ。
それにこの状態で下手に光太郎達と同等扱いをすると、後々我が身にとんでもない事が降り掛かりそうで。
「わ、私は…」
「……」
「私は…」
「………」
「日向サンを……」
「……………」
「き、………嫌いではナイですっ!!」
「……………………………………」
ぶっちん。
金がそう叫んだ瞬間、どこかで何かが派手な音と共にぶちキレた。
…気がした。