大変身・続 05



「ほー…。こいつらは『好き』なのに、俺だと『嫌いじゃない』ねぇ…」
「……っ」

呟く声は静かで冷静なのに、日向はしっかりと獣人化し始めて。
自分の発言が日向の怒りを宥めるどころか、逆に駄目押ししてしまった事に
気付いた金はひゅっ…と息を飲む。

「ヤ…アノ…」
「そうかそうか。お前さんの気持ちはよーく判った」
「ひゅ、日向サ…」

不気味な程に爽やかな声でそう言われて、金の血の気が引いた。

「まさか…ッ!」
「だったら意地でも言わせるまでッ」
「アイゴーッ!」

身の危険を感じて逃げようとするより先に、日向は完全に変化すると同時に金に襲いかかった。




が。



「ヤターッ!」
「ザサエさん、GO!」
「ワガメちゃん!」



テーブルを乗り越えて金に襲いかかるより先に、居合わせた3人の(見事なまでの)同時攻撃に、日向はあえなく撃沈する羽目に…。






『甘いなガキどもっ!』






ならなかった。





『今日と言う今日は許さんッ!』
「それはこちらのセリフ!」

3人の攻撃を寸ででかわし、銀灰色の巨大な狼は雷球を従えてロジャー(だけ)を威嚇した。

「だ、駄目デス、ここは室内デスよ…ッ!」

自分が襲われかけたことよりも、二人が戦闘態勢に入ってしまった事に慌てる金。

「大丈夫ですか金さんッ!」
「いや、私のコトよりあの二人を…」
「悪はふっ飛ばーすッ!!」
「ッて、コータローさんッ?!」

小夜に駆け寄られ、二人を止めるように口を開きかけた金は、何故か参戦(…)を決めた光太郎の姿に驚愕するやら唖然とするやら。

「やはりふみこさんの予想は的中したようですね」
「…は?」

そして少しだけ悔しそうに呟く小夜の言葉に、おそるおそる意味を尋ねると…。

「日向さんに馮りついたあしきゆめは、私が祓ったはずなのですが…まだ油断はならないとおっしゃられて」
「……」

難しい表情で前方を見つめる小夜と、そんな小夜を絶句したまま見つめる金の前で、今派手な音と共に茶器が割れた(というか砕け散った)

「本日ろいさんと光太郎さんにご一緒していただいたのは、日向さんに馮りついたあしきゆめを完全に祓う為でもありました。
ふみこさんに言われないと気付けないとは…私、まだまだ未熟なようです」
「………」

ふみこの言葉を何も疑わず純粋に信じている小夜も凄いが、毎度の事ながら事前に予測を立てて、かつしっかりと手を打つふみこの手腕に、金は今更ながら(それでもちょっとだけ)空恐ろしいモノを感じた。

「天誅ッ!」
『甘いッ』
「やるじゃねぇか!」
「あッ」(×2)

そんな中、少し斜めに移動した前方で乱戦していた3人の式神攻撃余波で、
金と小夜が観察日記(…)を付け始めていた朝顔の植木鉢が砕けた。

「ひ、ひどい!」

何のためにこの乱戦騒ぎになったのかを忘れ、真っ青になって玉串を握りしめる小夜と。

「ふみこサンから戴いた茶器のみならず、小夜サンの朝顔まで…」

そしてニ重の怒りで(のっぺりとした)顔に怒気を含ませ、3人に向けてギターケースを構える金は。



「悪鬼退散ッ!!」
「消えなッサイ!!」



周囲を顧みず凄まじい乱戦に没頭する3人目がけて、渾身の呪を込めた特殊攻撃をお見舞いさせるのだった。




                               

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