大変身 06




どんな形…というかどんな姿であれ、金が日向の元へ帰ってきたことには
変わりがない。


「……」


と、なれば。


「なにをやっているんだお前さんは!」

日向は金に会う為に、浴室に向かうに決まっている。

「その格好も含めて、今までなにをやっていたのか説明してもらうからな!
だからとっとと出てこい!」

生憎扉には中から鍵をかけられていた為、日向は仕方無しにその扉を叩きながら金に出てくるように促した。

「……」

しかし、金が出てくる気配は一向になかった。

「あのなぁ。こっちはお前から何の音沙汰もなくなって物凄く心配していたのに、そのくせ突然帰って来たお前さんは、説明もなく風呂場に篭城か?
…何か言わないと扉壊して引っ張り出すぞ」
『だ、ダメですッ!』
「じゃあ開けろ」
『…う…』
「金」
『……』
「生憎と今の俺は我慢ができない状態なんだ。とっととしないと…」

本当に扉ぶっ壊しておまえを引っ張り出してすぐに組み敷くぞ。
脅しでもなんでもなく本気でそう言えば。

『着るもの持ってきて下サイ…』

と、か細い声が返ってくるのだった。

「……」

そう言われて金の姿をあらためて思いだし、日向はさらに不機嫌になってゆく。

「…生真面目な金先生が、白昼堂々すっ裸で外を歩くご趣味がおありとは、こりゃあおみそれいったねぇ…」
『…な…なにを…言っていますか…?」

日向が腹を立てるのも仕方がないとは思えるが。
素直に帰ってきて嬉しいと口にすれば良いものの、金のらしからぬ姿を自分以外の誰かに見られたかと思うと、どうしても腹ただしさが先行してしまう。

『何故私にそんな趣味があるいいますか!?私はそんな趣味全くないです!!』
「どうだかな」
『日向サン!!』
「じゃあ説明しろよ。2週間以上も音信不通になっておきながら、いきなり帰ってきて、しかもそんなすっ裸な訳を」
『……』
「納得したら…服を持ってきてやるから」
『……』

そこまで言っておいて、少しだけ日向は「流石に言い過ぎたかな…」と語尾を弱くする。

「…金」
『……』

しばらく何も言わない金に静かに声をかければ、一瞬の間の後かちゃりと浴室の鍵が外された。


鍵が外されたのだから、扉を開けて金を引っ張り出そうとして…


「き、金?」

浴室に置いてあったありったけのタオルを身体に巻き付け、何故か頭にもタオルを付けた状態で仁王立ちしている金の姿に、日向は思いきり腰が引けた。

「おい…」
「……」

もしかしたら(ちょっとだけ)泣かせたかと思っていただけに、こんな格好でにらまれては、つい、金の無言の攻撃に飲まれてしまう。

「…自分だって……に…ッ…」
「あ?」

それがさらに金の逆鱗に触れたらしく、たじろぐ日向の耳を掴むと噛みつく勢いで金は日向に怒鳴りつけた。

「私にとやかく言う前に、日向サンだって《犬》相手に欲情していたクセに何を言いますかぁッ!」
「のわッ!」

脳天を突き抜けるような物凄い声で怒鳴られた上に、ふみこ以外知る由もない事を言われて日向は金から飛び退いた。

「な…な……なんでそれを……」

耳鳴りを何とかしたくて手を当てながら金を見やれば、厳重に巻かれたタオルの間から身覚えのある物がちょこっと顔を覗かせているではないか。




「おま、おま、お前さんまさか!?」
「ふみこさんに言われても信じる出来ませんでしたが…まさか本当に気付かないなんて」






…それは先ほどお使いに出た《犬さん》に預けた小銭入りの財布だった。


                              



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