「この金大正ッ、謹んでふみこサンをエスコートさせていただきマスッ」
金は端から見ていっそ滑稽なほどに慌てふためき、視線だけで『俺を置いていくのか!』と訴える伸されたままの日向を睨みつける。
「たまにはきちんと反省して下サイッ!反省して元に戻るしないうちは、私、あなたと二人きりで会うことをしまセンからッ!!」
そして《実家に帰らせていただきます!》的な事を宣言すると、せっかくしまった仁王剣の1本を取りだし、
「良いデスねッ! ?」
『!!』
と、有無を言わせぬ勢いでダンッ!と日向の鼻のすぐ近くにそれを突き立てた。
「…と、言うことだから。ちゃんと反省して自力で元に戻って見せなさいな、ヘタレなオオカミさん」
〇〇(自主規制)という言葉に過剰とも思える程に反応・否定する金の姿に大満足したふみこは、日向に対して実に機嫌よく更なる徴発をかける。
「行きましょう、ふみこサンっ」
「じゃあねぇ〜」
右手右足が同時に出るくらい動揺している姿に笑いを堪えつつ、ふみこは金に促されるまま、日向に向かってひらひらと手を振って事務所を後にした。
『………』
そうして伸されたまま一人(一匹?)残された日向は、吠えてウサを晴らそうにも結局己に返ってきてしまうので、ただただしかめっ面で恨みがましくドアをにらみつけることしか出来なかった。
「ふみこサンっ!そんなに寄り添うならないでも、私ちゃんとエスコートしますからっ」
「駄目よ。光太郎ほどじゃないけど、あなたもまだまだ典雅さが足りないわ。
素直に私のいう通りになさい」
「むむむ胸寄せないで下さいッ」
「相変わらず可愛いわね、大きな坊や」
「ふみこサン、からかうしないで下さい〜ッ!」
『き〜む〜ッ!』
仲良く(?)段々小さくなってゆく二人の声に、(自業自得な)哀れな日向はすぴすぴ鼻を鳴らすことしかできない。
さてはてふみこのセクハラ(…)に金が音を上げてここに戻って来るのが先か、はたまた珍しく反省し、金への想いの賜物で日向が元に戻り連れ戻しに向かうのが先か。
…とりあえず、どちらにせよもう一波乱ありそうな気配である。
《大問題・完》