豊徳園おとぎ村オリジナル童話
第4話(最終回) ・・・・・ 願い
なん日かたったある日、権作はいつもと同じように果て無しお洞へやってきて、
いつもと同じように、ほらあなのおくのほうにむかってさけんだ。
じゃが何の反応もなかった。
権作はとうとうがまんができなくなった。
「やい、天狗、きこえるか。
おらの馬、取ってしまったのか。じょうだんじゃあないぞ。
おらの馬だ、かえしてくれ。おらが金を出して買った馬だ。
また町さ行って売りさばいてくれば金になる。」
と、どなると、馬をとりもどそうとして、
権作は、とうとうほらあなの中に入っていってしもうた。
そこは「果て無しお洞」じゃ。
一度入ってまようと、二度ともどってはこれんということは、
権作はよーくわかってはいた。
が、もう頭に血がのぼっていてな、われをわすれてしもうたんじゃ。
権作はどんどんおくのほうへはいっていった。
権作のさけぶ声がほらあなにひびいて、ごお〜ん、ごお〜んと聞こえていたが、
その声もやがて聞こえなくなっていった。
なん日かすぎても、権作はほらあなから出てこなかった。
傳兵衛さんや村の衆は
「天狗さまは馬だけじゃのうて、ひょっとしたら、
権作もええ人間にしてもどしてくれるかもしれん。」
と、権作の無事を願い、権作がもどってくるのをまった。
じゃが、村の衆からはそれっきり権作がもどって来たような話は聞かん。。
おわり